58 腐女子と文化祭の話。4
「かー! 楽しむぞー!」
忙しい準備期間も乗り越え、昨日の吹奏楽部の演奏も成功させ、やっとこさ文化祭である。
ご存知の通り、昨日も文化祭本番ではあったんです。けどね、体育館への楽器の搬入と演奏と片付けで二時間しか…………というか! その! 色々あって文化祭を感じる余裕がなかったと言いますか!
まあ、あのですね、つまり、二日間あるうち一日潰れるの、結構痛手なんですよ! いや、潰れたというか、普通に堪能したような気がしないでもないけど!
「ちょ、うるさい」
「ごめん、テンション上がってもうて」
今は隣のクラスに向かっている最中である。つまり、ここは廊下なのだ。いつもなら響く、が今日は人がいっぱい! 大声だしても大丈夫!
いや、だからってむやみやたらにはダメだよ!? 分かってるからね!?
「奏音! おはよ!」
「おはよう!」
「おはよー」
奏音のクラスはドーナツ売ってる喫茶店。イソスタ映えしそうな装飾されてて、大人気店になってる。
「透香は今日の午後シフト?」
「うん」
奏音、いつになくソワソワしてる。それはもちろん、あれである。
「古池くん教室にいるよ」
「ほんと?」
何を隠そう! 今日は古池と奏音が二人で回る日なのだ! 祝杯じゃああ!!
「奏音から誘ったんだってね」
「……うん…………!」
そうやで透香さん。ちょうどあなたが柿ピーに気を取られていたときでっせ。
教室を移動し、四組の前に来ました。といっても五組と四組なんで隣です。そんな移動してないね。
「あ、古池いた」
「あ、気付いた」
途端に笑顔になる古池と奏音。
そして古池はこっちに歩いてくる。
はやく付き合えよ。今日もう告白しちゃお、古池。
「颯くん。おはよう」
「おはよ、奏音。行こっか」
「うん!」
はあ、かわよ。うちの奏音かわよ。
「行ってくるね」
「「行ってらっしゃい」」
ヤバいなんか心配になってきた。親ってこんな気持ちなんでしょうかね。
「……大丈夫だよね? 女子から攻撃されたりとか……」
「平気よ。もし万が一があっても、古池くんが守るはず」
「だ、だね……」
古池、お前のファンの中にも過激派がいるかもしれないからな! 奏音のこと頼んだぞ!
「じゃあ、今度はあんたの番ね」
「え? どういうこと?」
「仲直り、しなくて良いの?」
……そういうことか。
「…………したいけど、瀧田くんどこいるか分かんないし……」
そうです。夏休み明けて文化祭にもなったのに、私たちまだ仲直りできてないんです……。
お気付きだとは思うのですが、マジで一回も話しておりません。私がチキンゆえです。
瀧田くん、昨日演奏聞きに来てくれてたみたいなんだけど、その後一度も会えなかったんだよね。会えてたらな…………というのは言い訳だぞ瑞穂!
てかさ、普通に避けられてるんでね? 演奏聞きに来たのだって、柿ピーとか奏音とかを見に、であって、私はその中に含まれていない説……。あー、やばい泣きそう。
「瀧田くん今日の午後シフト。話しかけなさい」
「いや、悪いよ……」
「何が」
「仕事中じゃん」
これも、言い訳。だって、怖いんだもん……。
「はあ……」
盛大にため息つかれた。透香にはお見通しなんだろうな……。
「最近、空元気だったでしょ。去年の文化祭よりテンション高いし。まあ推しができたってのもあるだろうけど」
ギクッ。確かに、その事実から目を逸らすために声張ってた部分もあるかも……。
「そんなんじゃいつまで経っても」
「あ、藤咲いた!」
!! この声は……!
「あ、藍沢くん」
良かったクラスTシャツだ!
だがしかし! 昨日のメイド服がフラッシュバックするんやがあああ! まぶしい! キラキラしてやがる!
「さっきまでどこ行ってたの?」
「五、組だけど……。どうしたの?」
「あー。灯台もと暗しってやつかあ」
おーん、なるほど……?
「藤咲、一緒にまわろうよ」
えっ! みんなでまわれるんすか?! 楽しそう!
……でも待てよ。ここ学校……!
いや、でもいっか! 今日は文化祭だし!
しかもさ、みんなでってことは、瀧田くんも来るってことなのでは……? よし。ちゃんと謝らないと。さあ勇気を出せ! 瑞穂!
「良いよ。透香は大丈夫?」
「……え、私も行くやつだった?」
え?
なんか意味分かんないこと藍沢くんに質問してるんだけど。
「あ、いや、二人でってこと……」
「だよね」
え? なんで二人して納得してるの?
「じゃあ行こう!」
「え? え?」
ワケわかんない、とうろたえている間に、藍沢くんに手首掴まれました。これは嫌な予感。
「松井も楽しんでー!」
「はーい」
「と、透香ーー!」
二人きりはあかん。絶対あかん。
でも、藍沢くんの手は振りほどけなかった。
私、非力すぎました。
お読みいただきありがとうございます!




