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57 腐女子と文化祭の話。3

 教室に辿り着くと、そこには古池こいけ藍沢あいざわくんだけだった。え、他のみんなは?


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 奏音かのんは古池に無事回収されてった。


 回収際に「え、似合……。かわいい……」って言ってたんだけど、これも古池には言わない方が良いやつだよね?


 だんだんとこちらに近付いてくる藍沢くんに、みんなの所在を聞いてみる。ちなみに、ほぼ目を閉じた状態です。


「ねえ、藍沢くん。他のみん」

「お帰りなさいませ、お嬢様」


「……へ?」


 びっくりして一瞬見開いちまった目をすぐに閉じた。今ので目の寿命縮んだわ。


「こちらへどうぞ。…………ほら、はやく」


 呆然と突っ立っていると、手を差し出され催促された。……え? な、何事?


「……じゃあ、失礼して」


「!?!?」


 て、手ええええ!! つ、つ、つなが……!!


 接客マニュアルにはなかったよね?! なにこれ!?

 また鼻血を出そうって魂胆なのか?!


「こちらにお座り下さい」


 引かれた席に素直に座る。


 だって、もう用意されてたんだもん。紙コップに入った紅茶と、紙皿に乗ったカステラ。


 藍沢くんは私の手を放すと、向かいの席に座った。


 ……なぜなんだー? メイドなら…………いや、違うぞ瑞穂みずほ。藍沢くんに私の接客をやらせていること、これこそがおかしいのだ。だから、メイドがメイドらしくなくても、それは誤差でしかない。いや、もはや誤差でもないのだ。全ては彼が正しい。


「どうぞ」


「あ、ありがとう」


 ……うん! 食べづらい! すんごい食べにくい!


「食べないんですか? あーんでもしま」

「いや! 食べます! 食べますから待ってください!」


 今とんでもないことが尊きお口から発されようとしていましたね?!


「い、いただきます……」


 ……お、美味しい。普通に美味しいです。市販のだからそりゃそうなんだけども……。なんか、うん……。


「美味しいです……」


「良かった!」


 なんなんだこのオタクを殺す空間は!


 はい! 奏音たちが進展するためですよね分かってますけど! もっと他にやり方なかったかな?! 私がいる必要性ないよ! 二人きりにした方が……!


 ううん! これも多分計算の内なんだろう! 二人きりだと古池が緊張しすぎちゃうとかでそれ防止なのかな!? そうだよね!


 ……でもさ、なんで教室に誰もいない状況作れたんだろ。うちのクラスの子なら入り放題なんだよ? みんな絶対戻ってくるはずだよね?



 一方その頃、柿ピーは――


「柿本くん! 私も良いかな!?」

「私も私も!」


 私は今、執事の服を着て、階段の踊り場にいる。


 目の前には行列。明日の宣伝のためにと買って出た。

 ……でも、本当は違うの。


 そうよ! もちろん健人と颯のために決まってるでしょう!


「……う、うん…………」


 私、頑張って耐えなさい。二人の恋路を応援するために……!


 ――写真スポットと化していた。

お読みいただきありがとうございます!

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