07 腐女子は作戦を立てた話。
「ちょ、行かないでいただけます?」
「え、何?」
お、突然私が現れてびっくりしてるな。
古池、昼はいつも藍沢くん達とお弁当食べてるんです。が、今日は一人。
ダンス練習はどうしたか? 今日はあいにくの雨なので、練習はなくなりましたとさ。
でも、私と古池の組以外は集金で不在だから今がチャンス!
「ねえ、古池。私、考えました」
「え、あ、ああ」
おい! 頬を赤らめるな!
奏音のこと思い出してるんだろうけど。なんだかこっちが恥ずかしくなってくるから。
昼休み、私は透香とお弁当を食べるところを断り、古池の元へ馳せ参じた。
「ここ、誰の席?」
古池の前の席を指差して聞いた。知ってるけど聞きました。嘘ついてごめんなさい。
「そこは健人。向こうで伊織とか俊臣と食べるだろうから、使って良いんじゃない?」
集金から帰って来たらってことだよね。
でも、私は教室の人口が少ないうちに終わらせたいです。
あ、あと、なんで柿ピーの名前が出てきたのか不思議に思った人いますー? はーい、私でーす。
まあ今となっては日常だけど、マジで初見は驚きがエグかった。
柿ピーってさ、なんと、クラスではオネエだってこと隠してるんだよね。なんでかは知らないっす。
クールだけど、背は高いし、優しいし、あと、オネエ特有のワードセンスがあるから面白い。
だから、男女問わず、俊ー、俊臣ー、柿本くーん、ってみんなに慕われてるの。うん、陽キャだね。
だから、今年同じクラスになってからびっくりの連続だった。それはもうめちゃくちゃに。
柿ピーって部活では、声高めで『あら、瑞穂ちゃん、今日は髪の毛おろしてるのね。すごく似合ってるわよ』とか、『いーい? 私は知ってるんだから! 男なんてね、ピーーーで、ピーーーーだし、ピーーーーーなんだから! 分かった?!』なんだけど。
クラスだと、イケボで『宿題やってくんの忘れた? 俺の見る?』とか、『なに、藤咲腹痛いの? じゃあ俺の上着着る?』などなど。
ね? ギャップが凄まじいんよ。
人ってここまで本性を隠せるんだね。
柿ピーの根幹は変わってないけど、最初は別人かと思ったもん。
あとね、クラスでは私から話しかけないと全然喋ってくれん! 悲しい!
そしてそして、柿ピーは私に、オネエ攻めなるものを開拓させた張本人なのだ。
柿ピー×藍沢。有りよりの有り。普通にすんごく萌える。
ここで突然だが、改めて説明しよう!
うちのクラスには、四人のキラキラ陽キャ男子がいる!
塩顔イケメン藍沢くん!(我の推し)
お砂糖顔イケメン瀧田くん!
クール系隠れオネエ柿ピー!
認めたくないけど古池!
一年生の時から、四人はイケメンだとみんなから認知されてた。で、二年生になってみたら四人全員同じクラスになってて、みんなびっくり。
うちのクラスの女子は歓喜してたけど、他のクラスの女子は羨ましすぎて泣いてる人もいたらしい。男子ですら、お近づきになりたかったのにー! と嘆いてる人もいた。
そのくらい、この四人はいつも生徒から憧れの眼差しで見られてる。うちの学校でこの四人を知らない人はいないんじゃないかな。
だが、私は一味違うぞ。腐った眼差しで見ているのだからな! はっはっは!
っと話が逸れましたな。
今は古池の恋についてだった。
私はこいつの一つ前の席に腰かけた。
なんか、悪いことしてる感覚ある。なんにも悪いことなんてないけど。
「一週間後にはさ、テスト一週間前になるじゃん」
なんか分かりづらかったけど、要するに、あと二週間で地獄の定期テストが訪れる、というわけだ。
「うん」
私と古池はお弁当を広げながら会話を進めた。
「でしょ? だから、この一週間で、奏音と知り合いになってきて」
「……は?」
古池の手が止まった。
え、私、変なこと言った?
「無理? ダンス踊る位置遠いの? 話しかけられない距離?」
「いや、近いけど」
「じゃあ話しかけろ。持ち前のコミュ力で」
「俺にコミュ力ないの知ってんだろ」
いや、開き直るなよ。頑張れよ。てかコミュ力あるだろ。
「まあそれは古池が頑張るとして、一旦置いとこ」
「いやなんで置いと」
「で、一週間前になったら部活動停止になるじゃん? その週のどっかで勉強会するのはどう? あんた日本史得意でしょ? 奏音も文系だし、教えて良いとこ見せよ!」
古池がごちゃごちゃうるさそうなので、遮ってまくし立てちまったぜ。
「……それやりたい」
だろ? 我ながら良い考えだと思ったよ。
古池、めちゃくちゃ目を輝かせております。これは私ナイスだわ。
「じゃあ頑張って」
あんたが頑張らないと何も始まんないからね。
にしても、クラス別の人を好きになるってこんな大変なんだね。難儀よの。
「はい」
良し、決まり。
あとは奏音を捕まえるだけだね。あの人すぐ帰りたがるから大変だけど、ここは腕の見せ所。
……あ、忘れてた。もう一人協力者が必要なんだった。
「ねえ、古池」
「ん?」
デカめの一口で、白米を頬張ろうとしていたところに声をかけてしまった。おう、古池くんよ、とても面白い顔だな。奏音に見せたい、と私の中の悪魔が言う。
「柿ピ……じゃなくて、柿本くんにこの話しても良い?」
癖で! 柿ピーって言いそうになる! 危険すぎる!
「何で?」
え、そんな嫌そうな顔しなくても……。 勝手に嫌がられるなんて、柿ピーが不憫だよ。
「や、だって、知り合いになったとしてもだよ? 私と奏音に古池追加、って意味分からん状況すぎない?」
「……確かに。あ、それで俊臣? 吹奏楽部でかつ俺と知り合いの男だから」
理解が早くて助かるぜ。
「そうそう! 柿本くんいれば、古池も良い感じに混ざれそうじゃん?」
「分かった。俊臣にもよろしく言っといて」
「おけい」
……あのね、古池よ。私、まだあなたによろしくもなにも言われてないよ。悲しーよ。
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