51 腐女子と文化祭準備の話。1
夏休みも終わり、二週間が経った。
今日は、文化祭準備二日目である。
「ペンキ塗りに行くんだけど、手ー空いてる人ー?」
内装のデザイン考えてくれたのが、我らが透香さんと萌々子さんなのだ!
というわけで、いつもの六人が中心となり、クラスみんなで準備を頑張っているのです。
私は細々したものは向いてないから、大がかりな作業を主導しております。
「もうちょっとで空く!」
このクラス、良すぎる。みんな協力的過ぎて泣けてくるもん。
ほら、ペンキなんて汚れたりとかで面倒なのに、すぐに立候補してくれる方がいるんですよ。
「ほんと!? ありが……」
う、うわあああ!
振り向いたら、目がやられたんやがああ!
私は耐えられず床とご挨拶をした。
「三分待ってて!」
今やっている作業がもうすぐ終わるから、と手を上げてくれたみたいです。神なのか?
「あ。あと何人くらい必要?」
「ご、五人くらい、かな……!」
ま、まぶしい! 今日も今日とて推しが尊い! でもなんでそんな満面の笑みなの?! なにか良いことでもあったんですか?! 教えて! オタクにお慈悲を……!
「五人かー! じゃあ他に空いてる人ー!」
バッ!
「……」
お、おうふ。
「藤咲……、どうする……?」
推しが声をかけると、クラスの半分が手を上げたのだ。藍沢くんが困っとるからやめてくれ。
おい。まだ全然作業残っとるやつらもおるではないか。嘘をつくでない。
「じゃあ、じゃんけんで……」
平和……うん、平和! じゃんけんだから平和だよね! なじゃんけんでペンキ隊を結成。私を含め、計七人です。男子四人と女子三人、仲良くいきましょう。
「透香、ダンボールこれとこれで良い?」
ある中で一番と二番目に大きいのを選んできた。
昨日、藍沢くんたち四人と女子四人が、ダンボールを色んなお店から集めてきてくれたんだ。あ、それだけじゃなくて、必要なものをたくさん買ってきてくれた!
自転車漕ぐの絶対大変だったよね……。マジでありがたい……!
本当は、大変な仕事を任せっきりなのすごい罪悪感あるし、何がどれくらい必要なのかは私たち六人が一番分かってるんだけど……。作業の指示出しとかあるからあんまり抜けちゃうと……! みたいなね……。
「あ、あとあれもよろしく。横黒板の下にも貼りたいから」
「おっけい!」
よし。ではペンキ塗りに行きますか!
ペンキは決まった場所でしか使っちゃダメなんでね。移動です。透香たちが体育祭のでっかい絵を描いてたあそこね!
「藤咲! 俺持つよ」
「え! いや大丈夫大丈夫! こんくらい平気だよ!」
と断ると、藍沢くんは少し笑いながら首を横に振った。
「ダメだよ藤咲。こういうのは任せなきゃ」
「えっ……あっ!」
取られた。動きが速すぎて、というかやっぱり力の差だわ。鍛えようかな。
「ごめんね、ありがとう」
取り返せそうもないので、潔く諦める。
「うん! まあ感謝されるほどでもないんだけどね」
はあ……。推しが優しすぎる……!
ペンキ、ハケ類は他の男子が持ってくれてる……ん? あれ、どこ行った? あ、教室の後ろのドアら辺で待っててくれてるわ。……ヤバい、待たせてたんか!
「ごめんお待たせ!」
「ううん、大丈夫だよ」
気にすんな、とみんな各々反応してくれる。優しい世界だ。
「では、出陣!」
「「……」」
……?
なんで誰も教室出ようとしないんだ……?
あ!
『真美ちゃんが出ないと誰も通れないかもしれん!』……と、顔で言ってみるも、残念ながら伝わらない。
……! 場所が分からないからか! ごめん、説明不足!
「場所はね! ピロティだよ!」
「……」
あ、あれ? やっぱり先導した方が良いかな?
「じゃあごめん失礼して……」
合間を縫って廊下へ出る。
「……」
……も、誰も来ない。
「えっと、」
……あれ、みんなモジモジしてどうしたの? チラチラなんか見てる、し……。
!!
分かったぞ! みんな藍沢くんと歩きたくてそうなってるんだな!?
分かる! 分かるぞ! 神《藍沢くん》の横顔を拝みたいその気持ち!
でも良いじゃないか! 一緒に歩かずとも! それに、共に歩く、なんぞ畏れ多くないか?! 藍沢くんが後ろを歩いている、その事実だけでありがたくないか?! いや、本当は推しの後ろを歩きたいけどね?! 後ろ姿拝みたいけども!
「えっ、と。俺出るね? ……あっ」
藍沢くんが出ようとすると、全員動き出す始末である。こうなると藍沢くんはもう身動きが取れない。
「そ、そろそろ行かない?!」
頼む! もうなんでも良いから、みんな教室から出てくれ!(泣)
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