番外編20 腐女子は心配な話。
♪(通知音)~~
「松井さん、ちょっとごめんね」
柿本くんが立ち止まり、私も足を止める。
お願い、瑞穂を見つけたって連絡であって。
「あ! 伊織から私たちはどこにいるのかって連絡来たわ!」
「てことは、見つかった……?」
「多分そういうことね! 二人でこっちに向かってるのよ!」
良かった。本当に良かった。
無意識にスマホを握りしめていた手が緩まる。
「はあ……。もう、瑞穂ったら人騒がせなんだから」
「ふふ、ほんとにね。いっつも心配かけさせられてる」
「……でも、憎めない。松井さんもでしょ?」
「うん、そういうこと」
柿本くんも同じだったみたい。でも、憎めなかったとしても、私は瑞穂が戻ってきたら問い詰めるけどね。
「……あ、そうだ。藍沢くんには連絡いってるかな?」
「大丈夫。伊織は忘れないはずよ。しっかりしてるから」
「座って待ちましょうか」と柿本くんが気遣いをしてくれた。結構歩き回ったから足が痛かったんだ。すっごくありがたい。
近くのベンチがちょうど空いていたから、二人で腰かけた。
「……今頃、奏音たちはどうなってると思う?」
瑞穂への心配が無くなり、今度はあの二人のことが気になり始めたの。少しだけでも進展したかな?
「うーん、……颯の押し加減による、かしら」
「確かに。奏音はぐいぐい押されないとなびかないよね」
「そうなのよ。でも、『え? 古池くんって私のこと好きなの?』っていう疑問を抱かせないことが一番大事。その疑問持たせる前に、いかに好きバレせずに、ドキドキさせたりなんなりして、『私、古池くんに片思いしてるんだ……』って思わせる。これよこれ。難しいけど」
「奏音は追うのしか出来なさそうだもん。追われても、めんどくさい、で絶対振り向かないの」
「分かるー! 絶対そう! …………それに比べて瑞穂はね……」
「ふふ、あの子は何にも気付かないからね。好きバレ上等! の精神でいかないと」
「大変ねー、あの子を好きになる人は」
「だね。あ、でも瑞穂も大変だよ。学校のアイドルみんなと仲良いし」
「そうよね……。周りが、ね。うう、怖い怖い」
「ふふ、柿本くんが言う? 柿本くんだってアイドルなんだからね。みんな恋愛事情とか気にしてるんじゃない?」
「私ー? 私は、他三人と仲良くしてるからってだけよ。現に、みーんな私のこれを知らないのに、勝手に想像してるだけでしょ?」
「そうかなー? ……『ギャップ萌え!』ってなったりしないかな」
「みんながみんな、松井さんみたいに受け入れてくれるわけじゃないのよ」
柿本くんは前を向いた。横顔でも分かった。悲しい顔。柿本くんのこんな表情、見たことなかった。
「……ありがとう、松井さん」
今度は笑顔で、私を見て言った。
「私、嬉しかったの。『そっちの方が話しやすくて良い』って言葉。そのままで良いんだよって、全肯定されてるような気がして」
そんなことを、瑞穂に言ったような気がする。ただ本心を言っただけなのに、そんなに有り難がられるなんて思わなかった。少しでも救いになったのなら良かった。
「……瑞穂から?」
「そうよ。教えてくれて助かったわ」
「……助かった?」
「ええ。……私、ビクビクしてたの」
……そうよね。そんなによく知らない人にバレて、広められたらどうしようって思うよね。
「松井さんと、これまで通りに話せなくなったらどうしようって」
え、そんな心配を……?
私がみんなに言いふらすかどうかじゃなくて、そんな……。
「ふふ、どんな心配してるのよ」
「えー? だって、せっかく仲良くなれそうだったのに、自分のミスでチャンスを逃しちゃった、なんて悲しいじゃない!」
「チャンスって」
「だって、瑞穂がずーっと『透香マジ可愛い良い子すぎ絶対仲良くなってほしい』って。一年生の時から言われ続けてるんだもの。気にならない方がおかしいって話よ」
「え、そんなこと言ってたの? 恥ずかしいなあ」
「恥ずかしがることないのに! 瑞穂から聞いた通りの良い女だったわよ?!」
「え!? ちょ、ちょっとやめてよ!」
ここから瀧田くんが現れるまで、私たちは瑞穂と奏音の話を延々としてた。知らなかった面白エピソードがたくさんあって、聞いててすごく楽しかった。
また柿本くんといっぱい話せたらな。
お読みいただきありがとうございます!




