46 腐女子の夏祭りの話。4
「なあ、碧。お前何歳?」
「五歳!」
「おお。幼稚園行ってんの? 楽しい?」
「うん! 楽しいよ!」
碧くんは黒木さんに肩車されながら、私たちは本部を目指して歩いている。
人々の視線が突き刺さって痛いが、その人たちにどんな想像をされているのかは絶対考えないようにしてる。
「瑞穂ちゃん、なんか食いたいもんとかないの?」
おお、急に私ですか。
「ありますけど今ですか?」
「じゃあ買ってこいよ。碧もなんか食いてーよな?」
「唐揚げ食べたい!」
唐揚げならそこにあるけども。食べさせて良いか分かんないし。どうすんですかアレルギーとかあったら。
「いーじゃんいーじゃん。碧、唐揚げ食ったことある?」
黒木さんは私の顔を見て察したのか、説得にかかってきた。
「いっぱいあるよ! さっきも食べた!」
「お! じゃあ食うか! ……良いよな?」
「……分かりました」
あとでご両親に怒られませんように……!
「瑞穂おねえちゃんありがとう!」
座れるところを見つけ、碧くんを黒木さんが見ている間に私が買ってきた。お金は黒木さんが出してくれた。
「いーえ!」
「俺の奢りだからさ、俺に言って?」
美味しそうに食べてくれてる。かわいいマジで。
「あれ、瑞穂ちゃんのは買わなかったの?」
「はい。早く碧くんに持ってきたかったので。これ、おつりです」
「どーも。碧、食い終わったら行こうな」
「うん! あ、瑞穂おねえちゃんと優弥に一個ずつあげる!」
優弥呼びめちゃくちゃ面白い。
さっき自己紹介したら、それまでお兄ちゃんって呼ばれてたのに、急に優弥呼びになった。どういう基準なんだろうか。
「えー! ありがとう! でも碧くんの食べる分減っちゃうから大丈夫だよ」
「俺も良いから、碧が食いたいだけ食いな」
「……。瑞穂おねえちゃんと優弥、やさしいね!」
やーん、もうホントにかわいいんだから!
「碧くん、笑顔も瀧田くんっぽいよね……」
(※本人は口に出ていたとは気付いていません)
「…………」
ん? 黒木さんむすっとしてどうしました?
「あ、そうだ。黒木さん、コンクール見に来てくれたんですよね。ありがとうございます」
驚くことに、この一か月、黒木さんは一度も家に来なかった。涼平兄さんと外で遊んでたらしいんだけど、何して遊んでたんだろうか。
いやまあそれはどうでも良いとして……。だから、感謝を伝えるのが遅くなってしまった。
「……恭平さんから聞いたの?」
「はい。ご飯食べていけば良かったのにーって言ってましたよ」
「家族水入らずも大事にしないとだろ?」
え、黒木さん、そういうの大事にするような人だったんですね。そういうところは尊敬してあげます。
「お、食べ終わったか。じゃあ行こうか」
「うん!」
あらいつの間に。
碧くんからゴミを受け取り、捨ててから出発した。
「「本当にありがとうございます」」
本部に行くと、碧くんのご両親が放送を頼んでいる最中だった。こちらに気付き次第、ご両親は感謝をたくさん述べてくださった。
いや、こちらこそ碧くんから癒しをいただきましてありがとうございますなのですが?
「いえいえ! 碧くん、パパとママに会えて良かったね」
「良かったな、碧」
「うん! 瑞穂おねえちゃん、優弥、ありがとう!」
「いーえ! お祭り楽しんでねー!」
バイバーイ! と、わりとあっさりな別れを終え、黒木さんと共に歩き出す。
早く黒木さんとも別れて、みんなと合流しなければ。
それにしてもお腹空いたなあ。あ、まだチョコバナナ食べれてない。
「瑞穂ちゃん、さっきなに食いたかったの?」
「チョコバナナです」
……しまった。反射的に言ってしまった。
質問のタイミング良すぎるからあ!
「じゃあ俺買ってくるよ。ここで待ってて」
「え? 良いですから! ……って、行っちゃった……」
行動が早すぎる。
…………バックレるか……? いやそれはさすがに私の良心が許さんな。大人しく待つか。
近くに座れそうなところ…………があったから腰かけて、……よし。LIME確認しないと!
「うわあ……」
スマホをかばんから取り出してLIMEを開くと、着信の嵐が通りすぎた後だった。メッセージもいっぱい来てる。
わー、ごめん。今日に限って非通知設定だったよ。
……ま、黒木さんと会った後だったから着信音鳴っても出てないけど。
お。奏音と古池からは来てないので、四人は賢明な判断を下したのだと分かりますね。
うっし、透香に電話かけよ。
トーク画面を開き、電話マークを押そうとして。
「良かった。見つかって」
と、すごいタイミングで声が降ってきた。
お読みいただきありがとうございます!




