37 腐女子は妄想する話。
七月になって、ようやくエアコンをつけてくれた。六月も暑かったのに、よく耐えたな我々よ。
「今日は、LHRの時間を使って、文化祭の出し物を決めたいと思います」
クラスの文化祭係の女子二人が、前に出て取り仕切っている。うち一人は、藍沢くんの隣の席の子。そう、作文発表を休んだあの子である。
「じゃあ、とりあえず周りの人と話し合ってもらっても良いですか?」
「「はーい」」
またかい。また君は席を空けるんだね。
「何が良いかな」
藍沢くんは斜め後ろを向き、古池と話す体勢になった。いや、これは多分私も含まれてる。首を動かすことで、私とも目を合わせることができる角度だからな。
「俺は飲食系が良い」
うちの高校には、一年生は飲食やっちゃダメ、という非常に謎なルールがある。今年から解禁だから、私も飲食が良いと思ってたところです。
「藤咲は?」
「私も飲食系が良いです」
「おお! 三人とも希望一緒だ!」
反応がかわいい。
クラスの雰囲気的にも、飲食をやることはできそうだ。
「コンセプトも話しちゃおうよ」
「そうだな」
コンセプトかあ。
……藍沢くんに何かしら衣装は着てほしいなあ。執事とか着物とか……メイドとか……。
わあ、膨らむー。妄想が止まらねえ。メイド服着た藍沢くんが瀧田くんに言葉○めされて、そのまま……。はっ! いかんいかん、ここは学校だぞ! ……いやー、でもやっぱメイドは良いよね。
「藤咲、なんか思い付いた? なんだか楽しそうだけど」
推し本人の声で現実世界に引き戻された。実は推し、声も良いんです。……って。
「えっ?」
「お前、ニヤニヤしてた」
やばい、推しの前で醜態をさらすとは情けない。腐女子の風上にも置けんやつだな瑞穂よ!
「え、別にニヤニヤなんてしてないけども。そーいえば、あんたは奏音とすれ違った後いっつも悶えてるでしょ」
「それ今関係ねーだろ! しかもしてないし!」
「いーや、してた。しっかり見たんだから」
「いやいや、お前目悪いだろ」
「コンタクト着けてんだってば。数キロ先まで見えるわ」
「いや、それはキモいって」
古池がツッコミを入れるのと同時に、くすくす、と笑いが聞こえてきた。
「なんだよ、健人」
「ごめんごめん。伊織の言った通りだな、と思ってさ」
「伊織? 何言われたんだよ」
「颯じゃないよ」
ん? え、てことは私? ちょ、ちょっと瀧田くん、絶対風評被害だよねそれ!
「なら良いけど」
古池はね?! 私的には良くないよ!
その後、意見を出し合って投票に移った。結果、ある男子がふざけて言った、男女逆転メイド喫茶となったのだった。男子がメイド服を着て、女子が執事の服を着る、という定番のあれ。マジでナイス。
文化祭が楽しみである。
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