番外編9 陽キャ男子の視線の先の話。
よし、一位。
良かった、と一気に力が抜けていく。
いや、それより颯だ。あんなに距離あいてたのに、ゴールして振り返ったらすぐそこにいてびっくりしたよ。
「お疲れ」
みんなに声をかけると、息を整えながらも反応してくれた。
「お疲れ様」
「順位変動なしだな」
「……お、つかれ」
颯スゲー疲れてるじゃん。
お互いに称えあって、抱き合う。
みんなで同じ組だったら楽々一位なんだけどな。
「颯、大丈夫か」
「……」
無視。颯どっか見てて気付いてない。
……どこかはすぐに分かった。夢中すぎて聞こえてないらしい。
視線の先を見ると、やっぱりいた。あの二人。というか、三人?
江角さんって松井さんとも仲が良いのか。藤咲繋がりだよな。やっぱコミュ力すげえ。
藤咲は、初対面の俺とも気軽に話してくれたし、いつも女子と話すときみたいな変な気遣いとかもしなくて良かった。
話しもめちゃくちゃ面白くて、知り合ってからは俺からよく話しかけるようになった。面白いやつとは仲良くなりたいじゃん?
なぜか藤咲は怖がってるみたいだけど、そういうのは無視。仲良くなれば怖さはなくなるだろ。
「二人とも、どこ見てんの?」
俊臣も来た。汗が良い感じに色気になってんの羨ましいわ。
「ああ、そういうこと」
俊臣も知ってるからな。状況把握が早い。
「どうなった?」
俺にだけ聞こえる声で聞いてきた。
なんだ、現状は知らないのかよ。
「藤咲から聞いてないの?」
「テスト期間で全然話してなかったから」
確かに、クラスで会話してるイメージないな。
「順調なんじゃないか? まだそんな感じじゃないけど、最低限友達にはなれそうかな」
「そっか」
「みんなでどこ見てるの?」
うお、びっくりした。
健人が、俺と俊臣の肩に手を乗せてきた。
「んー、あそこ」
俊臣が視線だけで説明した。分かるわけないだろ。
もしかして、教えようとしてないだけか?
颯の恋愛のこと、健人だけ知らないしな。言った方が良い気はするけど。
「……え、藤咲?」
……お、これは……。
「よく分かったな」
「だって、さっき……」
よし。藤咲のこと視界に入るようになってるな。作戦通り。
「え、なんで瑞穂?」
俊臣の頭の上、はてなだらけになってる。
「いや、そこら辺見てるってことだろ」
「?」
理解はしたけど納得はしてない、って顔してるな。
「ねえ、伊織。藤咲とは、どういう……?」
文章になってないけど、健人が言いたいことは分かった。
「え? 友達だけど。藤咲良いやつだから」
俊臣が頷いてる。藤咲が良いやつってところにめちゃくちゃ同意してくる。
やっぱ藤咲ってほんとに良いやつなんだな。
「友達……。伊織に女友達って珍しいね」
「……そうだな」
女子と話すのは、何て言うんだろう。その、……少し居心地が悪いんだよな。
でも藤咲はそれがない。めちゃくちゃ話しやすい。
「おい、お前ら三人で何してんの?」
颯が江角さんを見るのをやめて、俺たちの方を見た。
何言ってんだよ。
「「お前を待ってたんだよ」」
俊臣とハモった。
「……は?」
あ、ちょっと照れてる。俺たちに気付かれてたの悟ったらしい。
「え? そうなの?」
健人もはてなだらけ。
颯、今日打ち上げ行ったときにでも教えてやれよ?
なんかもう、四人全員が全部把握した方が楽そう。
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