23 腐女子と体育祭の話。4
「奏音かわいい!」
「あ、今あいつ振り間違えたな」
結局、私、瑞穂は瀧田くんとともにダンスを鑑賞しております。
席とかいう概念はなく、トラックギリギリに人が密集している。
周りに人いっぱいいるし、多分一緒に見てるとは分からないと思う。思いたい。
「なああ! 地味に遠い……」
奏音と古池の踊ってる位置、めっちゃ微妙なんだけど。あ、いや、ここから見える見えないの微妙ではなくて。
古池の右隣の列の三つ前で奏音が踊ってるんよ。距離が微妙なの。ペアで踊ってたらなあ。もっと面白かったのになあ。
ダンスは基本、列を成して踊る。綺麗なフォーメーションを保てているか、も採点の基準だったりする。
途中でペアダンスなるものもあり、ペアとなった人とは否が応でも何度か接触します。神イベントにも真逆にもなりえるのだ。
私のペアは全然知らん人だったから、なんの感情も湧かなかった。
てかさあ、あの微妙な位置でさあ。古池くん勉強会前、奏音とどうやって知り合いになったんだろ。
やっぱコミュ力だよな。陽キャのコミュ力恐るべし。
……ん? なんかさ、ペアの人……。
「なんか颯のペアの人、怪しくない?」
「え、それ私も思ったとこ……」
今ペアダンスの曲目なんだけど、古池のペアの子、ちょっと触れるだけで良いところをガッツリいってるわ。
「颯狙われてんな……」
「そうだね……」
あ、しかもあの子、これまたかわいいで有名な莉奈ちゃんじゃない? わあ……なんか、ね……。
まあ心配する必要はないけどね。古池は奏音一筋なんで!
とか言ってる間にダンス終わりそう。
「黄組の素晴らしい発表でした」
うん、ほんとに奏音かわいすぎた。
古池も平静を装ってるけど、内心悶えてんだろうな。
「続いて、緑組の発表です。一分後に行います」
次、推し!
「瀧田くん、どこで見れば良いんすか」
「んー、ここで大丈夫だよ。あ、最前列空いたじゃん」
最前!? 行きたい! 行かせてください!
え、瀧田くんどこ行っ……。瀧田くんに最前列取られたんやが。
「早くおいでよ」
手招きしとる。誰を? 私か……? いやうん、私しかいないよな。
そんな、一緒に移動しちゃったら絶対ヤバイって!
でもただでさえ狭いのに、早くしないと埋まっちまう……。どうしよう。瀧田くんをどけるか? いやいや何言ってんだ。そんなんただ性格悪いやつすぎる。
……これは推しのためだ。変な噂になるのは嫌だけど、推しを近くで見れるチャンスを逃す方が嫌だ……!
「……はい、行きます」
瀧田くんの隣に行ったは良いものの、……うん、狭い。とてつもなく狭い。密着具合がすごい。
「緑組の発表です」
アナウンスの後、すぐに音楽が流れてきた。
途端に密着を気にする余裕はなくなった。
「藍沢くんどこにいる?」
「あそこ。左から二列目の真ん中らへん」
「あ! いた!」
「見つけんの早」
うおおお! かわいい! 推しが輝きすぎてしんどい!
やっぱ最前来て良かった!!
緑組の男子は、なんかちょっとホストっぽい衣装なんだよね。それを着こなす推し、すごすぎるっす!
しかもダンス上手すぎん? 運動神経良いとやっぱなんでもできるんやね。
瀧田くんも運動神経良いから絶対上手だろうな。
「ねえ、藤咲。次の曲目、ペアダンスだけど平気なの?」
「え、全然平気だけど……」
だから! 私ガチ恋じゃないので!
でもね、最近はね。推しが誰かといちゃついてなくても良くなってきた……。いや、いちゃついてたらめちゃくちゃ嬉しいよ。でも、あの、つまりだな……、推し単体で見ても癒されるようになっちまったのさ。非常にまずいねえ。
「へ、へえ……」
何その反応……。心底信じられないって思ってます?
「あ、颯と江角さん一緒に見てるっぽいよ」
瀧田殿、ちょっと静かに! 私は推しに集中したいのです。
でもそれは何よりだな。二人が仲良くなってきてるのは私も嬉しい。
「まあでも俺たちを観察してるだけみたい」
「あーね」
瀧田くんの言った通りになったね。
そういう目で見られるのは居心地悪いけど、仕方ない。
だって協力するためとはいえ、そういうことにしたのは私たちだし。奏音以外の人にそう見られるのは絶対嫌だけど……。
あ、ペアダンス始まった。
……うん、なんも思わんな。ただ、推しがかわいいだけや。
あー……。藍沢くんのペアがあの子じゃなくて、瀧田くんだったらなー、とは思った。
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