21 腐女子と体育祭の話。2
午前の競技が終わり、昼休みとなった。
昼休みは教室に入ることが許されるので、しばし直射日光とはおさらばだ。
まあ休みと言いつつ、昼食を食べ、ダンスの衣装に着替え、ビジュを整え……と、これを四十五分で終わらせねばならない。ハードスケジュール。非常に忙しい。
……そうだな。とりあえず、古池にLIMEをしよう。
『何故?』というツッコミが聞こえてきた気がしないでもないが、今に分かるぞ。
右手に箸、左手にスマホを持ち、行儀の悪さ全開である。いやでも、高校生って、こんなもんだよ。
『奏音の競技見た?』
あやつは今、おにぎり片手にスマホを見ている。すぐに私のLIMEに気付く状況である。
お、きた。
『見ました』
奏音が何出るか知ってたんだ。良かった。
皆の衆、分かったかね。これを確認するためだったんだぞ。
『どうだった?』
……お? 急にどうした? 返信来なくなったんだが。
あれ、古池スマホとにらめっこしてんじゃん。なんで?
そうして、二分後。ピロン、と着信音が鳴った。
『可愛かったです』
…………ぎゃあああ!!
こほん、失礼。これは悶えているのであって、決して引いているのではない。
「瑞穂、何してんの……」
何って、両手で顔を覆って、机に勢い良く突っ伏しただけですが。
もしかして、透香引いてる?
「別に……気にせんといて……」
「あっそ」
透香に冷たくあしらわれたが何にも気にならん!
こ、古池がのろけた!
いやはや、これは少女漫画より胸キュンを摂取できるのでは?
てかなんで敬語? もしかして照れてんのか?
「ねえ、アイライン死んでない?」
「死んでない!」
「リップは色ついてる?」
「ちゃんといるから安心せい!」
私が気にしているわけではないのです。聞いてくるのは奏音さんです。
私、化粧っ気皆無なんで。流石に今日はちょっとだけしてるけど。
ダンス衣装に身を包んだ女子が、ぞろぞろと校庭に出ていく。私と奏音もその一人。
透香はアート部隊のため、先に応援席にいるはずだ。
青組の衣装は、青いミニワンピースに太めの黒いベルトを巻いたもの、それと黒い手袋を着ける。スカート部分は黒のオーガンジーが付いててかわいい。
めちゃくちゃ良さげデザイン。でも足がちょっとだけ出過ぎてて私は辛い。
黄組は、黒地のミニワンピースの裾が黄色のチェック柄になってる。リボンがたくさん付いててこれまたかわいい。
青が清楚系なのに対して、黄色はアイドルっぽい感じかな。
透香が衣装着て踊ってるところ見たいなあ……。
「ねえ、瑞穂。瀧田さんと写真撮るとか約束してないの?」
透香が衣装を着ているところを想像していると、隣から声がかかった。
全組ダンス終了後、着替えまで十五分だけ猶予が与えられる。皆その時間で写真を撮りまくるのだ。
だから、約束をしておかないと、『あの人と撮れなかった! うわーん!』という悲惨な状況に陥ってしまう。
「え? してないよ?」
私は何も知らないフリで良いんだよね? まだ好きバレされてない設定でいきたいっす。
「え、あ、そうなんだ」
何か言いたげな表情だな。やめてくれ。
「奏音は? 誰かと約束してる?」
期待を込めて聞いてみた。
「うん! してる! あとでついてきて欲しい!」
テンションの上げ方謎過ぎん?
あと、その約束は古池と、っていう解釈で良いですか?
……あ、これあれだ。瀧田くんと私に写真取らせよう、っていう作戦のもと、古池も奏音と写真取る気でしょ。
「あ、あそこ柿ピーいる。透香としゃべってるよ」
うっそマジ? 奏音目が良いね。どこだ……?
「……えー! ほんとだ!」
日陰で二人とも楽しそうに話してる。何話してんのかな。
わお、遠くからでも美男美女なのが分かるわ。なんかあそこキラキラしとる。
「二人ともアートだったしそれでかな?」
実は柿ピーも青組のアート担当。ただでさえ人口の少ないアート部隊で、しかも同じクラスなら、製作期間は必然的に話す機会が増えるだろう。
や、絶対そうだよ。描いてる時に仲良くなったとしか思えん。
だって、教室で話してるとこ見たことないもん。
「あ、あと十分で始まるよ。早く行かなきゃ」
「あれまほんとや」
青、黄色、緑、赤の順番でダンスを披露する。よって私たちは一番最初。なんで赤からじゃないのかは未だに謎である。
「さっきから思ってたんだけどさ、なんかすっごいニヤニヤしてない?」
「えー? そんなことないって」
嘘です。そんなことあります。今の私は皆の思う百倍はウキウキしてる。何故か?
……藍沢くんの衣装姿とダンスを見れるからです!!
流石に今日は解禁するよ!
お読みいただきありがとうございます!




