19 腐女子がせめられる話。
「ねえ瑞穂ちゃん、なんで朝二人で走って来たの? 遅刻したって訳じゃないよね?」
うちの高校は、チャイムが鳴り始めるまでに一度教室に入っていれば遅刻にならない。そのシステムを利用するため、私は朝来た直後、リュックを机の上に置いていた。
それが良くなかった。いや良くはあった。置いていなければ遅刻だったからな。
それでも良くなかったと思ってしまう原因はなぜなのかというと……。
『みんなの瀧田くんに手を出した』と、この疑いをかけられてしまったからです。上手くかわなさいと絶対刺される……。
「え、えっと……たまたま……だけど……?」
瀧田くんも、私と同じように荷物を机に置いていた。そして、朝チャイムが鳴り終わってから二人で走って登場したのだ。当然ざわつく。
そして、『ホームルーム前に、二人で密会をしていたのでは?』などという噂が立ったのだった。午前のうちにずいぶん事実から遠ざかったものだ。
いや遠ざかってはないな。事実と違うのは、二人+古池だったということだけだもんな。
「ほんと?」「マジ?」「たまたま?」「怪しい」
(※女子が多すぎるので、抜粋して四人の反応をお届けします)
昼休み、陽キャ女子から質問攻めにあってるんです。あんまり話したことない女子から囲まれるのって、辛いよね……?
言ってなかったけど、テスト一週間前なので朝昼どちらもダンス練習は休み。こんなに練習を切望することは今後ないだろう。
「そう! ほんとに! トイレ行ってたらチャイムなっちゃって走ってたの。そしたらいつの間にか瀧田くんもいて」
透香は他の友達と食べてるし。
いつもクラスでは私含め六人で一緒にいるんだけど、腐の話は二人じゃないとできない。だから結構な頻度でちょっとだけ離脱してるんだ。
今はその子達と食べてるみたい。
透香さん、みんな、私を見捨てないでくれよ……。
「そっか!」「なるほど」「良かったー!」「へー」
「そうそう。まさか朝から走ることになるとはね」
「大変だったねー」「私は気を付けてるよー」「瑞穂ちゃんそういうところあるんだねー」「お疲れ」
……耳が痛いですわ。内容も痛いけど、真意は物理的にってことです。
女子の皆さん声が良く通るんでね、一気に話されるとちょっとしんどい……!
まあでも視線は痛くなくなったしいっか。
満足したのか、女子らは各々昼食を食べるためにグループでまとまって散っていった。
「大変だったね」
「お疲れー!」
「げっそりしてんじゃん」
「大丈夫?」
私も五人の元へ向かうと、透香以外は労いの言葉をかけてくれた。
話した順に、水泳部マネ、瑠奈。サッカー部マネ、萌々子。ダンス部、琴実と紅羽。
全員、腐とは程遠い、むしろキラキラ輝く宝石のような女の子たち。
私は、一般人擬態に成功した腐女子であるといえよう。
なんたって、このリア充を具現化した女の子たちと仲良くさせてもらっているのだから! なんたる奇跡……! 目の保養が素晴らしい。
(※透香は顔が良いので、瑞穂にとっては彼女も目の保養です。)
「もう最悪だよー……」
「まあ、自業自得よね」
と、透香さん、毒がすごいっす。
この五人は端から疑ってないみたいで、とても居心地が良い。みんな、ありがとう。
昼食も食べ終わり、透香と廊下で談笑中。
「さっき、すんごい勢いだったね」
BLの話してたんだけど、急に話変わったな。
「え、うん、すんごい怖かった」
さっきの話を掘り返したのか。透香なりに心配してくれているらしい。ツンデレだな。
あの作戦のこと、透香に話さなくて良いのかな? と不安になってきた。
もちろん、古池に許可取ってからじゃないといけないのは分かってる。
でもさ、三人でアニ○イト行く仲だしさ、もし自分だけ知らないってなったら悲しいよね……。
「瑞穂、古池くんと仲良いでしょ? 気を付けないとヤバいかもね」
「だよね。てかなんで古池がモテるんや? 永遠の謎だわ」
「まあ顔は良いしね。それに身長も高くて運動もできるじゃない」
「確かに。 でもそれだけで?」
「あんただって藍沢くんの笑顔に惚れたんでしょ? 一緒じゃん」
「ちょ、違うて! やめて!」
好きじゃないって……。推しなんだって……。
ま、透香は瀧田くんと違って、分かってて言ってるんだけどね。
あとな! 笑顔もそうだけど、それだけじゃないぞ。
藍沢くんの行動が受けとして素晴らしいのだ!
「でもさあ、藍沢くんじゃなくて、他三人だったら瑞穂にもチャンスあったんじゃない?」
「……はい?」
何言ってるんすか透香さん。
「だって、古池くんとは普通に仲良いじゃん?」
それは去年も同じクラスで、席が近くになることが多かったから。古池めちゃくちゃいじりやすいキャラしてたし。しかも今は古池の恋を応援する立場だよ。
「それに、柿本くんは瑞穂と同じサックスで、部活中はずっと一緒にいるんでしょ?」
一緒にいすぎて、もはやサックスパートは家族なんよ。あと柿ピーおネエだし。
「で、今、瀧田くんとの噂があったわけじゃん? あり得ない内容だけどさ。でも向こうも耳に入って意識してるかもよ」
その噂、ほぼ事実なんだよなあ。それに瀧田くんも当事者です。
「うん、とりあえず絶対ないわ」
「えーなんでよ。そこら辺の女子より遥かに可能性あると思ったんだけど」
見当違いにもほどがありますぜ。
「瑞穂、藍沢くんとはほぼ話したことないでしょ?」
「うん、まあね?」
「……狙ってる人の方が仲良くなれないって、あるあるよね」
「いや狙ってないから。遠くから見てるだけで良いんだって……!」
薔薇の妄想させてくれるだけでありがたいの!!
お読みいただきありがとうございます!
古池颯のイラストをTwitterに載せました! ぜひご覧ください! Twitterメディア欄をのぞいていただきますと、すぐに見つかります。
月見 エルのTwitter→ https://twitter.com/otukimi_ll




