番外編2 腐女子にとって嬉しい話。1
「こいつがこんな感じでやらかしたからこれに繋がるんだ。ここら辺、流れで覚えた方が良いよ」
「はい、ありがとうございます」
瀧田さんって優しいんだろうな。あと教え方も上手いんだと思う。根気強いし。
こういう人が瑞穂の近くにいてくれたら……なんてね。
私の親友、瑞穂は勉強が好きじゃ無さすぎる。
以前、テスト前の放課後、『勉強教えてー!』と瑞穂が私にせがんできたことがある。けれど、三十分後には飽きて話し出していた。私は勉強したいのに、でも瑞穂と話すのは楽しいから、結局その日は話し込んで帰った。
その経験があるから、テスト前は絶対断ってたのに。今回はしつこくて断りきれなかった。
で、結果はこれ。もっと集中できない。
成り行きだったから仕方なくはあるけど、人が増えるなんて……。
「わ、私、トイレ行ってこようかな」
なんでそんな挙動不審なの?
んー、瑞穂が行くなら私も行こうかな。
だってあんまり仲良くない男子……しかも有名な二人なのに、瑞穂なしで一緒にいるなんて考えられない。
「え、じゃあ私も」
「ダメ!」
「え」
……そんなに嫌だった?
「あ、えっと」
瑞穂も動揺してる。自分でもこんな強くなるとは思ってなかったんだろうな。
「荷物見てて欲しいんだ」
に、荷物……?
「……あー! うん、良いよ」
瑞穂、『今日は薄い本をリュックに積んでるんだ!』とさっき話していた。なるほど、それを二人に見られたくないから見張っといてくれってことね。
「ごめん、俺も行ってくるわ」
え、瀧田さんも行っちゃうの? 二人きりの方が気まずいよ……。
瑞穂たちがトイレに行って、十分が経過していた。いくらなんでも遅すぎる。
「あの、江角さん」
「何ですか?」
古池さんに話しかけられ、シャーペンを走らせる手を止めた。……古池さん、なんか緊張してません? 顔ひきつってないですか?
「今日はありがとう。二人で勉強してたのにごめんね」
あ、申し訳なくて顔がそんな感じになってたのか。でも顔カッコいいから、どんな表情になっても大丈夫そう。
「いえいえ、こちらこそ」
……。
静寂が戻った。またまた気まずい。
「み、瑞穂たち遅いよね。私ちょっと様子見に行ってきます」
とりあえず空気をどうにかしたくて、古池さんの返答は聞かず席を立った。
「あ、待って江角さん」
歩きだしたところで、古池さんに手首を掴まれ動きを止められた。
「え?」
「あ、えっと。……ちょっと座って」
「え、どうして?」
「えーと、……」
なんかすごい考えてる……。
彼はしばらく考えて、急に口を動かした。
「い、伊織、ってさ、好きな人がいるんです」
随分お顔が苦しそうだけど、大丈夫ですか……?
「そ、そうでしたか」
伊織って瀧田さんのことだよね。大人気の瀧田さんを射止めるなんて、その人はとっても素敵な人なんだろうな。
「はい、それで、その好きな人が……」
立って聞くのはまずい気がして、私は席に座った。
「藤咲なんです」
その瞬間、私は固まった。
「え、え? え、あの、えっと……」
あの大人気の瀧田さんの寵愛を受けているのが、瑞穂……?
「ほ、本当のこと?」
「……ほ、ほんとです」
マジか。……マジか! さっき願ってたことが事実になった!
「これは他言無用でお願いします」
さっきの苦しそうな顔は、言おうかどうか迷ってたってことなのかな。
それにしても、瑞穂が瀧田さんを射止めるなんて……!
そうだよ、瑞穂とってもかわいいし、素直だし、面白いし! なんでこれまで彼氏がいなかったのか疑問だもん。
「それで、協力してほしいんです」
「何をですか!」
私は満面の笑みを古池さんに向けた。
「っ! ……あ、あの、伊織と藤咲が付き合えるように、です」
「なるほど! それは良いですね!」
こういうのは基本的には協力しない主義だけど、これは親友のため。
瑞穂、瀧田さん、私に任せて!
お読みいただきありがとうございます!




