18 腐女子は事後報告された話。2
謎が解けたわ。昨日、奏音がLIMEであんな風に言ってたのは、こういう事情があったわけね。
「ほんとにゴメン。とっさに出ちゃって。いや、まだ話足りなかったというか、二人きりになりたくて言っちゃったというか、あの…………ほんとごめん」
……今後の接点が欲しかったんだろう。分かる。分かるけども!
そんな噂が広まったりしたらどうするんだ。奏音は言いふらすような子じゃないから、ないとは思うけどね?
でももしそうなったとしたら、私は死ぬし、瀧田くんにとっても死活問題じゃないか?
彼ならば、好きな子とか彼女の一人や二人いるでしょうに……。
「ん? 藤咲、なんか今失礼なこと考えてない?」
し、失礼じゃないし……! ありそうなことだし!
え? あれ? なんで気付いた……?
「べ、別に考えてないよ?」
「ふーん?」
「え、何そのふーんて」
ちょ、瀧田くん、そんなくすくす笑わないでくれ。
私はこれっぽっちも面白くないよ。
「まあ、良いんじゃない? そういうことにしちゃえば協力もしやすいし。……あ、藤咲が良ければだけど」
え? あれ? 良いの?
まさかの判定が出たぞ。聞き間違いかな?
「え、良いって言った? 伊織、ほんとに良いのか?」
「うん、俺は全然良いけど」
おい古池。お前は良い友達を持ったな!
だが私は怖い! いつかおなごに刺されそうで怖い!
でも古池からの期待の眼差しが眩しすぎる。……ここは譲歩するしかない、のか。
「……分かった、分かったけど」
「「けど?」」
二人とも首を傾げてオウム返し。ちょっと面白い。
「四人の中だけで完結するようにして欲しいっていうか、えっと……」
語彙力なくてごめんね。
……瀧田くん、ここが君の力の使いどころだよ!
「ああ、協力するためのものだから。緊急時以外は他の人には言わないことにしよう」
おお! さすがです!
古池も頷いてるし、まあそれなら良いよね。
「じゃあ、それで」
「ガチでありがとう。本当にありがとう」
ええ? 古池なんか泣きそうじゃない? そんな不安だったんか?
「おい、泣くなよ颯」
「だって……」
「俺たちが見放すわけないだろ?」
そうだよ、私がいくら刺されたくないからって、奏音に『古池が言ってたこと嘘だから!』とか言うわけないよ。
嘘つかれてたって分かったら奏音幻滅しそうだし。
でも、マジで刺されそうになったら多分言う。すまんな。
話変わるけど、男の友情って神ですな。
今、瀧田くんが古池の背中さすってなだめてるんですよ。……えー、……可愛い。
……ん? 私、古池でもBL考えられるんか? いや、相手が瀧田くんだからだな。うん、絶対そう。
古池で考えるなんて、いつもならできないのです。なのに、瀧田くんのタチっぽさが私のポリシーを覆してしまいましたね。
あ、藍沢くんと古池でもいけるってことか? でもどっちも受けっぽいしなあ。
「藤咲、今度こそ変なこと考えてるだろ」
「え?」
いつの間にか二人は立ち上がり、私を見ていた。
なんだ? あ、もうホームルーム始まるから教室戻るのか。
てか普通気付きます?
そんなところまで察しの良さ発揮しなくて良いから!
……すっごい見てくるじゃん。……こういうの、瀧田くんの前で考えない方が良いのかもしれない。
「いや、藤咲微動だにしないからさ。まばたきも一切しないし」
おっと。観察眼やばいっすね。
でもね、こういうの見るときは、まばたき厳禁って決まってますから。腐女子としては正常なのだよ。
「君たちの友情を目に焼き付けていたのです」
メガネをくいっとあげる仕草をしながら、良い感じに誤魔化した。誤魔化せてるよね?
ん? 私、今コンタクトだよ、な。
…………うわああ! 恥ずかしい! 空虚を掴んでしまったではないか!
学校にはメガネじゃなくてコンタクトで来てるので、これは結構恥ずかしい行いでした……。
いやもう癖なのよ! 中学までずっとメガネだったし、今でも家帰ったらソッコーメガネだし!
「あはは! 友情って!」
「やめろ、マンガじゃ有るまいし」
片や爆笑(瀧田)、片や大焦り(古池)。
私の恥には触れないでくれるらしい。わざとやったと思われてる可能性もあるけどね……。それならそれで良いか。
♪(チャイム)~~
うわヤバい。チャイムなっちゃった。
「やば」
そう言って古池くん、真っ先に走り出しました。
おいぃぃ! この裏切り者ぉぉ!
お前のために朝早く来てやったんだぞ!
「あ! 颯、先行くなよ! はあ……俺らも行こっか」
それに比べて瀧田くんは聖人だなあ。
「うん」
走るスピードも私に合わせてくれるし。優しいね。こりゃやっぱ彼女の一人や二人いるでしょ。
「あ。あのさ藤咲」
「なに?」
ほんの少し前を走る瀧田くんが振り返って言った。
また何か察した? でも今回は私の顔すら見てないよね?
「……俺じゃなくて、健人だったら良かったよな。ごめん……」
「……はい?」
おぉい! 勘違いしたまんまじゃん! 私違うって言ったよね?! 頼むそれを察してくれ!
んなしょんぼりしなくて良いから! 私の方がしょんぼりしたいよ!
……こりゃ昨日言わない方が良かったか?
後悔がすごい。絶望もすごい。
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