17 腐女子は事後報告された話。1
翌日の朝、私と瀧田くんは古池に連れられ、人気のない階段の踊り場に来ていた。
ああ、またしても誰も通らないでくれと願うとは。
「なんだよ颯。俺たちこれからどんな話されんの?」
「そうだよ。なんで昨日は、二人して説明しないで帰っちゃったの? 心配したんだけど」
私たちの文句には耳を傾けず、古池は階段を数段上がって腰を下ろした。そして、自分の足に肘をついた。
エ○ァのあの人にそっくりでっせ。
「……良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」
「おいおい、やめてくれよ」「おいやめろよ」
ギリ、ハモらんかったな。おしい。
「じゃあ良いニュースから言うわ」
ごり押しすんな。
「……昨日は、江角さんと一緒に帰りました」
「古池やるやん!」「颯スゲーな」
今度は全然揃わんかったわ。
てかマジですごい。
奏音が二人で帰るの了承するとは……。え、普通に良い感じに進んでるのでは?
「あとLIMEも交換した」
「ええー!」「おお!」
めちゃくちゃ良いじゃん! 奏音とLIMEも交換するなんて、スゴすぎる。
あの子基本的には連絡を面倒くさがるタイプだから、交換するのも渋るんだよね。
「……え、でも次、悪いニュースなんだろ? 帰り道で何かあったのか?」
そうでした。良い報告だけじゃないんだった。
「いや、何も」
え、違う? じゃあこれかな。
「家まで送り届けてないの後悔してる、とか?」
「いや、ちゃんと家のすぐそばまで送った」
あ、これも違うんだ。奏音のことだから、一緒に帰ったとはいえ古池とすぐバイバイしてるもんだとてっきり。
「……俺、江角さんに、嘘ついたんだ……」
一切こちらを見ずに、聞き取れる最小限の声で言った。
ん? なんだ、それだけ? もっと深刻かと思ってたのに。
そうか、古池よ。下らない見栄はっちまったのか。そんなに嘆きなさんな。私がやんわり訂正しといてやる。
「どういう?」
瀧田くんの言葉には、『早く教えろ』が詰まっていた。
顔もちょっと険しくないか。古池にとってはつらいことかもだからさ、待ってやろうや。
「……伊織がフジサキノコトスキッテイッチャッタ」
「「は?」」
今度は盛大に揃いましたね。一文字だけど。
早過ぎるぞ。よく噛まずに言えたな。
と心の中でツッコミを入れている間に、早口でまくし立てた本人は息を整えた。そして、大きく息を吸って爆弾を投下した。
「伊織が! 藤咲のこと好きだから! 付き合えるように協力してやろうって言っちゃった!!」
「はいーー?!」「???」
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