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14 腐女子と勉強会の話。3

瀧田たきたくん、ごめんね。あと、ありがとう」


 二人で廊下に出て、方向的には女子トイレに向かっていた。

 これは、作戦に協力してくれたことと勉強を教えてくれたこと、両方に対する言葉である。


「うん、良いよ。はやてを応援したいし、藤咲ふじさきに教えることで俺自身の勉強にもなってるから」


 察しの良さ半端なくないか。それと優しすぎないか。


「瀧田くんほんとにトイレ行く?」


「いや、行かないかな」


「じゃあ他の教室で時間潰そ」


 最終下校は六時半。まあ本当に怒られるのは七時を過ぎてからなので、あと一時間ほどある。

 でも一時間も戻らなかったら心配されるよね。


 よし古池こいけ、三十分でなんとかしろ。


「うん。じゃあここにしよっか」


「そうだね」


 提案されたのは一組の教室。進んでいた方向で一番隅の教室である。うちの学校は七組まであるので、一直線に並んだ教室の内、四組はちょうど真ん中だ。


 私たちは一組の教室に入り、窓側の席に隣同士で座った。


「……」


「……」


 ほぼ初対面で二人きりって、何かの拷問ですか?

 沈黙がつらいです。つらいというか、ビビってるというか……。


 なんで誘っちまったんだろう。各々で時間潰せば良かったなあ。

 ねえ柿ピー。代役の条件に、私とも普通に話せる人っていう項目を加えてほしかったよ。


 話しかける勇気はない。瀧田くんがスマホ見始めたら私も見よっと。

 ……良いんだよ、瀧田くん。動画見てもゲームしても。遠慮しないで良いんだよ。



「ねえ、藤咲」


「ひょっ! ……は、はい、どうしたの?」


 ……え……? キモすぎるんだけど……。本当に私の声帯から出た音ですか……?


「あっはは! 驚き方面白すぎるだろ!」


 おお、ずいぶんとデカイ笑いだな。

 こんなん事故じゃん。仕方ないことじゃん。驚かせてきたのそっちだし。


「スルーしてよ……」


「ごめんごめん」


 わー、泣き笑いも破壊力ヤバイね。


 ……ああ、誰も来ませんように。誰もってか女子が来ませんように、だわ。

 このツーショ見られたら刺されます。確実に。

 瀧田くん狙いの女子多いから。勝手に勘違いされてヅタヅタにされるのがオチっすね。


「……藤咲。質問していい?」


 なんだなんだ、ずいぶんと急だな。こういう導入の時、良い質問が飛んでこないのは万国共通だよね。とっても断りたい。


「……うん。何?」


 怖いよー! 今日の朝ごはん何だったか、とかそういうのでお願いしたい!


 でもね、改まって聞くなんて、絶対あれなんよ。


「あのさ、藤咲って、あの……。えっと、」


 もったいぶるなあ!


「……健人のこと、好きなの?」


 やっぱりな! 藍沢あいざわくんのことだろうと思ったよ!


「んな恐れ多い! 好きだなんておこがましいよ!」


 そんなわけあるかい! 今度はそっちに勘違いですか!

 柿ピーといい瀧田くんといい、思い違いが激しいやつばっかだな!


 ……ん? あ、れ? なんか今の言い回しヤバくね? もしかして私、墓穴掘りました……? え、待って最悪!


「おこがましいって。なんでそんな卑下するの? 好きって良いことじゃん」


「ち、違うの、ほんとに違う」


 マジで私何やってんの? 最初に否定しとかないと信憑性低くなるじゃん!


「そんな、今さら隠さなくても。あんなに熱視線向けてるわけだし」


 いやいや! 隠してるとかじゃないんだって!


 それに、もし仮に。私が藍沢くんのことが好きだったとする。それでも、この状況じゃ隠すよ? ほぼ初対面なんだから言いたくないよ普通に。しかも君、その本人と仲良いし!


 どうやって打開したら良いんだ。どんなに精巧な嘘でも通用しなさそうだなあ。


「なあ、なんで最近健人のこと見なくなったの?」



 ……本当のこと言ったら、信じてくれる……?

 勘違いされてるよりは、良いよね……?



「おし!」


「え?」


「推しなの!」


 瀧田くんきょとんとしてる! よし! 今が攻め時だ!


「瀧田くん。なんで、私が藍沢くんのこと好きなんだろうなって思った?」


 まあ心当たりはありますが。


「だって、健人といる時、その時だけさ。……藤咲とめっちゃ目が合うから」


 だよねー! そうだよね! 目が合うなって思ってたの自意識過剰じゃなかったわ! 良かったー!(泣)


「……好きなサッカー選手が、もしクラス内にいたら見ちゃうよね?」


「うん。絶対めちゃくちゃ見る」


「それ! それと一緒! じゃあさ、瀧田くんはそのサッカー選手と付き合いたいと思う?」


「いや、思わないかな」


「まさにそういうことです。それが推し。藍沢くんは、推しなんです。見てるだけで幸せなの!」


 サッカーの例だと苦しいか? てか私、バレーを例にしろし。


「ふーん……?」


 納得してるのかしてないのか微妙だな。


「まあ、推しってことで認識しとくよ」


 それはあまり良くない返事ですね。つまりは、『そういうことにしといてやるよ』ってことだよね。


「うん、そうです。お間違えのないようにお願いしたい」


 待って、瀧田くんって口堅い? 心配になってきたわ。


 もう、マジで今日最悪っすね。

お読みいただきありがとうございます!


藍沢あいざわ健人けんとのイラストをTwitterに載せました! ぜひご覧ください! Twitterメディア欄をのぞいていただきますと、すぐに見つかります。



月見 エルのTwitter→ https://twitter.com/otukimi_ll

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