13 腐女子と勉強会の話。2
「いいい良いよ! むしろありがとう!」
何言ってんだああ! むしろありがとう? キモすぎるやん!
瀧田くん頭良いから、参加してくれるのありがたいってことなんです!
ねえ、それより古池! なんで瀧田くん連れてきた? 柿ピーは?
と、古池に顔で伝えると、スマホを触るジェスチャーをしてきた。スマホを見ろと、そう言うのですね。
ということは、古池は事前に知ってたということですか。
素早くスマホを開くと、柿ピーからLIMEが来ていた。
『ごめーん! よくよく考えてみたら、サックスパートが二人もいるのに、隠し通せるはずないなって気付いちゃってー!』
オネエキャラを隠すためになんですね。そうですか。急用とか、事故ったとかではなく、柿ピーが自分で選んだのですね。
『で、代わりの人探してたんだけど、私が声かけられそうだったのが、健人か伊織でね? でも瑞穂ちゃん健人のこと苦手そうだったし、伊織に頼んだの!』
……に、苦手…………?
逆ですが? 推しですが?
なんでそういう解釈になってるの?!
―――昨日。(柿ピー視点でお送りします。)
やっと午前の授業終わったわね。
お昼ご飯、今日はコンビニでメロンパン買ったから楽しみだったのよー!
あ、そういえば。瑞穂ちゃんって、平日は誰にお弁当の自慢してるのかしら。
土日はいつも、焼きそば! そうめん! ラーメン! ってすごい勢いで見せてくるのよね。……全部麺類ね。
「藍沢くん、……」
あら、瑞穂ちゃん今、健人の名前出したわ。
もしかして、松井さんと恋バナでもしてるのかしら!
健人には、……聞こえてなさそうね。
「…………」
瑞穂ちゃんに比べて松井さんの声小さいから、上手く聞き取れないわ。
「…………。ひどい! もうホントにやだ!」
え?! 嫌なの?! 恋バナじゃなくて、苦手な人の話?!
……健人、聞こえてなくて大正解よ。―――
(瑞穂視点でございます。)
まあ藍沢くん呼ばれたら勉強会どころじゃなくなってたから、それはグッジョブ!
でもね? 危険度でいったら瀧田くんの方がヤバいかもしれない。
だって、藍沢くんを見つめてるのばれてるかもなんだよ?
私に嫌悪感抱いててもおかしくないじゃん……。
ま、まあ、とりあえず。このメンバーでやるしかないよね。
「奏音、古池は知ってる、よね?」
「うん。この前ダンスのときに知り合った」
知り合った。うん、友達ではないのね。
……ちょいと悲しんでおられますな、古池くん。
「おけ。で、こちらは瀧田伊織くん」
全然知らん人を紹介するって、これも決まりが悪いことなんすね。学びました。
「瀧田です。よろしくお願いします」
わーお、彼もまた笑顔が甘ぇなあ……。
あれ、大丈夫だよね? 奏音、瀧田くんに惚れたりしな……おっと、不謹慎だな。
「お願いします」
あー、なんかこういう出会い方もアリだったな……。
……いやいや! 何言ってんの。私が提案して、古池は頑張ったんだからそんなこと思うなよ私……。
二人は私たちの前に座った。けど、机を四個くっつけたら、奏音&古池、私&瀧田くんで隣同士となった。
これも作戦の内である。
一時間後、午後六時。
教室には、瀧田くんと私の声のみが響いております。
これが何を意味するのか。
「こいつがこんな感じでやらかしたからこれに繋がるんだ。ここら辺、流れで覚えた方が良いよ」
「はい、ありがとうございます」
私、ガチで勉強教えてもらってます。瀧田くんにね。
肝心の前方二人は、どっちも勉強できる方。ゆえにさっきから無心でノートにカキカキしてるんすよ。
それ、なんの意味もないですやん。せっかくの機会なんだから話してくれよ。仲良くなってくれよ。
私が頭良くなる会じゃないんだから。
よし、かくなる上は!
「わ、私、トイレ行ってこようかな」
二人の集中を阻害するためだ。恥を忍べ、私。
「え、じゃあ私も」
「ダメ!」
あ……。強めになりすぎた……! ごめん!
「え」
明らかに動揺してるわ。そりゃこんな強く否定されたらそうなるよね。
「あ、えっと。荷物見てて欲しいんだ」
理由はきちんと用意しているのだ。
今日は薄い本をリュックに積んでいる、と最初の三十分で奏音に話してある。もちろん嘘ではある。
どうか、私の意図を汲んでくれ……!
「……あー! うん、良いよ」
気付いてくれた! ありがとう!
私の薄い本が公共の場でばらまかれないよう、見張っていてくれ! 絶対そんなことにはならないけど!
あとは瀧田くんが察してくれるかだが……。
「ごめん、俺も行ってくるわ」
瀧田くん、さすが。さすがです。
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