10 腐女子たちが腐女子する話。
さあ、皆さん。私たちは今、我らの生息地に来ている。……聖息地かもしれない。……いや、性そく……やめておこう。
「瑞穂、鼻息なんとかしてよ」
ありゃ、またもや鼻息が荒かったですかい。
「ねー。興奮しすぎ」
興奮度合いまで分かってしまいますか。
「仕方ないだろうおうおう!」
今日は、透香と奏音とともに、アニ○イト本店に来ているのだ! 腐女子三人で集まるのは実に久しぶりである。
一年生のとき、私と透香は同じクラスだった。最初は探り探り、ちょっとずつ腐をほのめかす。そうして、お互いに感づいてウズウズし始めた頃、私が最初にカミングアウトしたのだ!
勇気が必要だったよ。でも必要な勇気だった!
そして、奏音とのカミングアウト合戦は、部活の時に私が口を滑らせたことから始まった。
奏音が『進撃の小人』をスマホで読んでいた時。奏音もそれを読んでいたことが嬉しくて嬉しくて。その話をしようと思った私は誤って『進撃の腐人……!』と言ってしまったのだ。幸い二人きりだったため、それ以外の被害はなかったが絶望した。
すると、奏音が目を輝かせながら、『もしかして腐ってる……?』と言ってきたのだ! 奏音も腐だったあ!
そして、私がこの二人を繋ぎ、こうして三人で話ができるようになった。最高すぎる!
「じゃあ、行こう!」
アニ○イト本店は、BL本がマジでたくさんある。これでもかってくらいたくさん。幸せ。
「ねえ、それって突っ込んだ方がいい?」
透香が私のデコを指して言った。正直言うと、触れてほしかった。ありがとう。
「うん、もっと早く突っ込んで。これデコぴんでなったのやばくない?」
「デコぴん? 相当怪力なんだね」
「ね。すごい。芸術っぽい」
大丈夫? なんて聞かれると思ってた私がいけないんですかね。
「じゃ! 終わったら出口集合で!」
「おっけい」
「ラジャ」
BLコーナーに着くやいなや、私たちは別行動を開始した。
各々好きなジャンルが違うのだ。三人で回っていたら時間がなくなるかもしれないから、出した策である。
……いや、嘘である。
なぜなら。私と透香は、奏音にはまだ早いものを好んでいるからです。
私がよく読むのは、愛重め系。溺愛、偏愛、ヤンデレ、共依存などなど。これらが大好き。……お願いします引かないで下さい。
……え、良くない? ズブズブに愛されてる主人公。可愛すぎるよね!?
透香はメリバとか不幸な感じのを好んでおります。
私もメリバ好きだから、透香にいつもおすすめしてもらってるよ! 透香さんのチョイスに間違いなし。マジで良いマンガ持ってきてくれる。
で、問題の奏音さん。奏音はねー、そういう描写がない、綺麗なハピエンを良く読んでるんだよね。
……ね? 私、奏音と一緒に回る勇気はまだないです。だって! 引かれたら悲しい! 泣いちゃう!
や、切り替えよう! こんな楽しいところにいるのに、泣くなどとはなんだ!
今日はいっぱい買っちゃうもんね! お小遣いそれなりに貯めてきたんだから!
「はあ!」(これ共依存やん!ス○ーカーっぽさもあるし神!)
「はう!」(これ溺愛系でしょ。受け泣かされてる可愛い)
今は止める人がいないから、キモめの反応が止まらない。
……ま、どうせここにいる全員が興奮状態で、私のことなんざ見えてないでしょ。
そう安心した直後、最大級のキモい反応をしてしまう。
「うにゃあ!」
びっくりしすぎて、自分でも意味分からん声出たわ。恥ずかしすぎるんだがどうしたら良い?
……でも仕方ないとこある。だってね?
私の三次元の推しに似た受けが出てるマンガ見つけた!
神か? 作者さんありがとう。マジでビジュもシチュもそのままです。(※瑞穂の妄想と同じということです)
二時間後、目当てのマンガと、推し(※違う)が出てくるマンガを購入した。
出口に行くと、すでに二人が待っていた。
「良いの買えた?」
「うん、ガチ神作品見つけたわ」
「よし、早く帰ろう」
買い物終わったらお茶でもしようか、と話はしていた。でも、やっぱ無理よね。私も一刻も早く帰って読みたいです!
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