72 腐女子が病院へ行く話。
私のかかりつけ医、おじいちゃん先生。優しくてとても信頼できるお医者様なのです。
「捻挫だねえ」
「捻挫ですか……」
今回で三回目の捻挫です。なにやってんだか。運動部でもないくせに。
「うん、捻挫。じゃあ今から、ギプスの型取ろうね」
「捻挫。……ぎ、ギプスですか?!」
「そうだよ。ギプスは初めてだっけ?」
「初めてです……!」
さっきも言った通り、捻挫は体育頑張りすぎたとかで三回やってる。でも、ギプス付けるほどのは初めてなんです……。
そんなヤバイんか、今回の捻挫は。
「全然怖くないからね、安心してね。型取るの時間かかるけど、寝ちゃっても大丈夫だから」
「あ、ありがとうございます」
返事が合ってたかはさておき、……寝る、だと? いやいや、緊張して絶対寝れんから。
「じゃあこちらに来て下さい」
看護師さんに案内され、一人用のベッドへ。
「はい、じゃあこっち頭にして」
「はい」
寝転がると、足になんか巻かれ始めた。何これ。包帯?
「これが固まるとギプスになるの。しばらくは足が動かないように押さえさせてもらうわね。固まり始めたらもう大丈夫だからいなくなるけど、力抜いちゃっても良いからね」
「分かりました」
とりあえず、ずっと力抜いといて良いんだよね、多分。
「うん、上手。寝ても大丈夫だからね」
「ありがとうございます」
寝れないよ。人前だし――。
「――さきさん。藤咲さん、おはよう。時間になったわよ」
「……っ! お、おはようございます……!」
ね、寝てた……?
「疲れてたのね。すぐに寝ちゃってたわよ」
あは、フラグ回収すごすぎない……?
「ははは。すみません……」
確かに疲れてたよ? 色々あったし。
でもだからって人前で寝るとは……。
あ! よだれ垂れてないよね?!
……おお、大丈夫だった。セーフセーフ。
というか、最近寝すぎでは? ……まあ、部活で忙しかったっちゃ忙しかったけど……。みんなといれる時間長くて楽しかったし別になあ。
「立ち上がれる?」
「はい、いけます」
変な感じはするけど、……お! あんま痛くない?! 固定するとこんな効能があるんだね!
「では、先生と少しお話しして、今日は終わりです」
「分かりました」
さっきの診察室へ行くと、おじいちゃん先生がすでに座っていた。あれ、なんかまた眠くなってきたような……?
「うん、良い感じだね。じゃあとりあえず、次は二週間後に来てもらって良いかな?」
「分かりました。……あの、治るのはいつ頃ですか?」
「うーん、五、六週間後かなあ」
「な、なるほど」
長っ。ギプスってそんな長い期間付けるもんなのか。
「次は生活について説明するね。お風呂とかは――」
「兄さんありがと」
病院から出て、駐車場を片足で跳びながら移動していると、兄さんが車から出てきてくれた。
「良い……、え? ギプス?」
「そ。捻挫だけどね」
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。捻挫だよ?」
そう。捻挫なのだ。骨折ではない。大袈裟すぎる気もするが、あのおじいちゃん先生が言うんだから仕方ない。
「あ、そうだ。兄さん、サンダル買いに行かない?」
「うん、必要そうだね。行こう」
兄さんが車を走らせて、近くの靴屋さんに。ギプスしてても履ける大きさの白いサンダルを購入いたしました。
これで学校行くってことだもんね?
はあ……。いくら上履きに近い白を選んだといってもね、デカさがハンパじゃないので……。これは目立つな……。
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