表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/106

09 腐女子と次男とその友達の話。

「ただいまー」


 ……へんじがない。ただの しかばねの ようだ。


 うん、ごめん、ふざけたわ。

 恭平きょうへい兄さんいないのかな。どうしたんだろ。


「兄さん?……あ」


「やっほー瑞穂みずほちゃん」


 リビングのドアを開けたら、うちのテレビでSwatchやってる他人がいた。


黒木くろきさん、どうも」


 彼は涼平りょうへい兄さんの友達である、黒木くろき優弥ゆうや。やっぱチャラいのって、見た目で分かるよね。


「兄さんたちはどこに行きました?」


りょうはじゃん負けコンビニ。恭平さんは多分まだ帰ってないよ」


 恭平兄さんが帰ってない、だと。

 まあ大学生だしそういうこともあるか……。


 じゃないだろ! なんで大学生なのに、妹に帰りを心配されてるんだ! 大学生なのに普段全然遊びに行かないなんて、恭平兄さんおかしいのでは? 良いんだ、いっぱい遊んで来てくれ!


 一方で涼平りょうへい兄さん。あなたこの家の住人だよね? 家を他人に任せて良いんか?


「……あと、他の方は?」


坂上さかがみ野口のぐちはバイト」


 坂上さんと野口さんは、これまた涼平兄さんの友人。いつもはその二人も一緒なのだが、今日はいないのか。

 それにしても……バイトってあのお二人でもできるんですね。


 私の質問に答えると、黒木さんはスマホを触り始めた。


「あ、涼。まだコンビニ?」


 兄に電話か。何を言うんだろう。


「え? もう帰ってるとこ? じゃあ戻って追加で弁当とか買ってきて。じゃ、よろしくー」


 おお、言い終わってからすごい速さで切りましたね。

 電話越し、しかも私は少し離れてんのに、最後のちょろっと、兄さんの『あ"あ"?』って声がここまで聞こえてきたわ。


「涼に瑞穂ちゃんの夕飯も頼んどいたから。帰ってくるまでゆっくりしてな」


 黒木さん、私と涼平兄さんより全然家主感ありますね。




「兄さんお帰り」「涼お帰り」


 私たちは二人でマ○カーをしながら、涼平兄さんの帰りを待っていた。いや、食料が届けられるのを待っていたと言うべきだな。


「お前ら何やってんだ」


 何って、罰ゲームのデコぴん待ちですけど。


 私が前髪を持ち上げて渋い顔をしている。黒木さんが手を私の顔の前に出している。これを見て推察できないのか。


 黒木さん、これがまたね、ケンカだけでなくゲームも強いんじゃ。

 何戦かやって、勝ったのはたったの一回。これがオタクがヤンキーに負ける構図です。悔しいですっ!


「デコ、ぴん、だよっ!」


「いったあ!!」


 このヤンキー、手加減と言うものを知らないんでしょうね。明日には、私の額がとんでもないことになっているだろう。


「涼もやる?」


「……おう」




「あっはは! またお前かよ!」


 兄さん、弱えええ! 十戦、全ビリだよ。あり得ん。

 ま、私も全二位ですけど。


 黒木さんのデコぴん、あれでも私には手加減してくれてたみたいなんだよね。兄さんにやったときの音がヤバかったので発覚しました。

 私のときはピシッて感じだったのに、兄さんのは、バンッ! みたいな音してた。とにかく怖かったわ。



 その後も何戦かして、全部兄さんが最下位だった。

 マ○カーで遊び尽くした後、みんなでご飯を食べてから黒木さんは帰っていった。




 翌朝。


「昨日はごめんね……って、え! 二人ともおでこどうしたの?!」


 夜遅くに帰ったのであろう、恭平兄さんはすでに朝食の支度に取りかかっていた。


 私が部屋を出たのと同時に涼平兄さんも部屋から出てきたので、一緒にリビングに来たのだが。それが恭平兄さんの衝撃を増幅させてしまったらしい。


 私まだ自分のおでこ見てないんだよね。そんなヤバイのかな……?

 兄さんのはかなりグロテスクな感じになってるけど。私はまだ大丈夫な方だよね……?


「昨日、白熱しちゃって」


「何が? もしかしてケンカ?!」


 あちゃー、余計に心配させてしまった。

 ……デコぴんって、暴力の一種ではあるのかな。


「いや、……マ◯カー」


 え? 今の涼平兄さんだよね? 声ちっさ。


「……え?」


 ほら、恭平兄さん聞こえてないよ。


「だから! マ○カーだって!」


「いや、普通マ○カーでそんなんにならないだろ!」


 そりゃそうだ!


「恭平兄さん、これはビリっけつに贈られる、罰ゲームのデコぴんです。これは勲章なのです」


「デコぴん? く、勲章?」


「うん。黒木さんからいただいた」


 ヤベっ。言わなきゃ良かったかも。


「二人とも優弥にやられたの?」


「ど、同意の上でね」


 恭平兄さんの顔がどんどん険しくなってくから、一応言っといたわ。でもなんのフォローにもなってないんだろうな。


「か、顔洗ってくる!」


 逃げました。完全なる逃亡。

 あとは頼んだ、涼平兄さん!



「ギャー!」


 洗面所にて。鏡に映る自分を見て、叫んでしまった。


 マジ……?! これじゃあ涼平兄さんと変わらんやん! 腫れすぎ!

 これ、あと二日で治るの? 黒木さん強すぎるんよ。

 フォローとかしなくて良かったかも。黒木さんなんか恭平兄さんに絞られれば良いんだ!



「うわああ!」


 私と入れ替わりで洗面所に行った涼平兄さん。

 気付いたようだな、自分のデコのグロさに!


 ねえ兄さん。今日が土曜日で良かったよね、私たち。


 まあ、私は友と約束があるんだけどな! なんて言われるんだろう! 怖い! 会いたくない! 恥ずかしい!

お読みいただきありがとうございます!

松井透香まついとうかのイラストをTwitterに載せました! ぜひご覧ください! Twitterメディア欄をのぞいていただきますと、すぐに見つかります。


月見 エルのTwitter→ https://twitter.com/otukimi_ll

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ