妹とミーティングを開いたんだが
家に帰り着くと既に美咲と雪は帰宅しており、リビングでその二人は寛いでいた。
帰ってきた俺らを見るや否や雪は声を発す。
「おかえり。見送りって昼位には終わったんじゃないんですか? もう五時になりますよ?」
「康太が何か百音にしたんでしょ。百音大丈夫? こっち来て」
雪は俺の方に目線を上げて気さくに話していたが、美咲は俺を見る事すらなく、軽蔑する様な声色だ。
百音は美咲の言葉に返答こそしなかったが、そっちの方へと向かった。
俺は美咲に反論しても無意味だと思い、雪にそのまま言葉を返す事にする。
「あぁ、昼くらいに見送り自体は終わったんだが......。その後にゲーセン行ってたんだ」
「なるほどですね。確かに空港までタクシーで行くとなると時間が掛かりますし、納得がいきます。ゲームセンターはどうでしたか?」
「そのゲームセンターであったこと何だが......。百音が変な男に囲まれた」
「嘘!!」
いきなり美咲がそんな素っ頓狂な声を出し、驚いてしまう。
「百音何もされてない? その男って康太じゃない?」
そんな事を早口で百音に言い放ち、頭を撫でる美咲。
見ているだけでストレスが溜まってしまうが、俺は深い溜め息を吐いてから、声帯を震わせた。
「百音申し訳ないが説明してやってくれ。俺が言っても信用されないだろうからな」
「......うん。今から説明するね」
百音が声を発し、皆の視線が向けられるのだった。
俺と百音にあったことを百音が大体話し、説明不足な部分を俺が軽く補足した。
俺が口を挟む度に美咲はこちらに目線を飛ばし、睨みつけて来たが俺は無視しながら続けた。
美咲と雪は俺と百音にあった事を聞いてから、雪は俺に対して褒める言葉を与える。
だが美咲は当たり前でしょ、と俺に甘い言葉を送る事はなく、雪は若干気まずそうな表情をしている。
俺は美咲の事には極力触れず、雪に貰った褒め言葉を、感謝の言葉で返す。
百音は相変わらずスマホばかり見ているが、少しは俺に対する気持ちも変わったのではないだろうか。
事実、俺と今日初めてまともに会話を繰り広げる事が出来たのだから。
その日の夜、俺は自室にてスマホで動画鑑賞をしていたのだが、突如雪から連絡が入った。
通知をタップし見てみると、今から部屋に行くという趣旨の連絡だった。
俺は快く、了解という言葉を送って一応ベッドに腰を下ろし雪が来るのを待つ事にする。
少ししてから部屋のドアノブが動き、扉が開放され、向こう側には雪が顔を覗かせていた。
「入っていいぞ。今日もミーティングか」
「そうですよ。これから出来る日は毎日する訳ですし、私達の初めてを記念しませんか?」
「そうだな、こうして定期的にコミュニケーションをとる機会があるのは素直にいい事だ。どこにでも座ってリラックスしてくれ」
「言われるまでもなく私はベッドに座りますよ。......珍しく私と同じベットに座るんですね」
「ああ、ベッドに座っていたからな。俺が隣だと嫌か?」
「いえ、近いと話すのも楽ですし。......という事で、ミーティングを始めたいと思います。百音とはどうですか?」
俺の隣に腰を下ろし、こちらへ顔を向けて話す雪。
俺は至近距離でも一切嫌な顔色せず話してくれる雪に改めて喜びを感じる。
「今日の出来事で一先ず会話を交わすハードルは大きく下がったと思う。だが百音は俺と話す事は極力避けたいみたいだけどな」
「まー百音は前提として人と話すのが得意としませんしね。私達とですら積極的に会話はしませんよ。ですからそこまで深刻に考える必要はないかと思います。......美咲はどうですか?」
美咲。言葉を聞いただけであまりいい気のしない名前だ。
「今日でお前も肌で感じたと思うが俺は相当嫌われている。俺自身何もした覚えはないが、本当にどうしたいいんだろうな」
「美咲は少し特殊です。私から詳しく言う事は出来ませんが、康太くんには少しばかり我慢を強いる事になりそうですね。あ、美咲関係で言うのですが、例の旅行の件、来週とは言いませんが今月から来月中には行けそうです。美咲には頃合を見計らって話そうと思ってます」
例の旅行の件。俺と雪、美咲と三人で行くであろう旅行。
雪が提案し、俺は承諾し後は美咲の許可を得るだけの段階。
もし行けるのなら、ここで美咲との距離を縮めたいところではあるが。
もうここまで嫌われるとそんな意欲も削られるものがある。
「わかった。色々とお前に任せてしまって申し訳ないな。もし旅行に行くなら金銭面は俺に任してくれ」
「すみませんそこはお言葉に甘えさせて貰います。......明日は学校ですよね?」
「ああ、そうだ。今日は見送りでズル休みをした訳だが」
「私は今日もちゃんと行きましたけどね。......明日、美咲と一緒に登校してみてはどうですか? 美咲ってああ見えて方向音痴で今日迷子になって遅刻したそうですよ。美咲って遅刻とか恥ずかしい事を嫌うのでそれを避ける為だったら康太くんとも一緒に登校すると思います」
「なるほどな。それじゃあ美咲にはお前から伝えてくれないか?」
「わかりました。それじゃあもう時間ですし、私寝ますね」
そう言って雪は立ち、扉を開いた。
廊下側に足を渡らして、俺の方へ振り向いてから笑みを浮かべて言葉を放つのだった。
「おやすみなさい。これからも、応援しています」
と。
これにて第一章は終了となります。
これからは一人一人にフォーカスが当たっていく感じになるので、更に面白くなると個人的には思っています。
ここまで読んでくれた方には本当に感無量です。
この春私は新高一という事もあり、春休みはもう少しで終わってしまうため、学校が始まり更新頻度が落ちるかと思いますがこれからも見て頂けると嬉しいです。
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