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3人の義理の妹が全員闇持ちで毎日大変なんだが  作者: ʕ•̫͡•ʔ
【第三章】百音は大人気youtuber
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豪雨の下、河川敷にて

テストが来週に終わるので、そこから本格的に再開します。

地に足を踏み付ける度に水飛沫が高くあがり、大粒の雨も俺の頭を叩きつける。

息も随分上がって気温も低く寒い筈なのに体中から熱が放出され、自分でも火照っているのがわかった。


河川敷。それだけの情報じゃどこに百音がいるかわからない。

だがそう言って何も動かない訳には俺の体が許してくれず、足は一人でに川へと向かって進んでいる。


ここら辺には有名な河川敷があり、ドラマの撮影に使用されたらしい。

俺に思いつくのはそこしかなく、排水路からは水が溢れ、水浸しになった道を走り抜ける。


走って走って、そうして。

堤防から河川敷を見下ろすと、一人の少女が茶色く濁った川を恍惚と見つめている。


その後ろ姿には見覚えしかなく、俺の妹である百音に違いなかった。

直ぐ様俺は堤防を駆け降り、その少女の元へと向かう。


「おい百音! 何してんだよ!」


百音対する不安の感情が今、本人を前にして語気に含んで顕になる。

彼女の顔を冷静になってみると、無表情にも近い。

ここで俺は少し冷静さを取り戻し、少しばかり感情的になった俺を自責する。


「──私の、存在価値ってなに?」


唐突に口を開き、雨音も一瞬聞こえなくなる言葉を百音は吐く。

百音の存在価値。確か百音は前にも似たような事を言っていた。


彼女は自分の存在価値はないと思っていたが、Youtubeで成功してからはそれが自身の存在を認める唯一の価値だと思っていた。

だがYoutubeのアカウントがBANされ今、彼女を認めてくれる価値を百音は見い出せていない。


「......答えてよ」


「......いや、お前は、今こうやって存在しているのが価値って言うか、俺にとって掛け替えのない──」


「そんなのいいから!!」


「──」


百音から解き放たれた冷たく、激昂した声に俺は自分の情けなさを改めて認識する。

百音の存在価値を瞬時に思いつかない自分が、情けなくて、憎い。


今も昔も俺は大切な人をこうして目の前で、あと一歩で助けられない。

俺と百音の間には雨音と時折の雷、そして濁流になった川の轟音だけが響いていた。


俺は百音と顔を合わせることが出来ず、視線を少し下方にして拳を強く握り震える事しか出来ない。


「Youtubeは運営の間違いだ。お前がBANされる理由なんてないだろ?」


今俺が話している事は果たして百音に対して効果的なのか否か。

それすらも考える暇なく俺は何とか百音に元気を出して貰おうと足掻く。


「第一、存在価値とかどうでもいいと思うんだよ。お前が元気にしている姿だけで十分──」


そんな事を発している俺を遮る形で。


「大丈夫か百音!」


百音は力尽きたかの様に俺に倒れ込んで来た。

それを支えた俺は心配の言葉をかけるが、反応を示す様子はない。


雨でずぶ濡れたせいで、百音の温かい体温が生ぬるく気持ちの悪い感触になっている。

こうして百音と大きく身体を触れ合ったのは初めてだった。



「......朝から何も食べてない」


全ての体重を俺に預けた百音は、小さく開けた口から微かな声量でそう言った。

百音は朝から配信の切り忘れなどの焦る事が多く、飯を食べる暇などなかったのだろう。


それで今こうやって俺に倒れ込んだのは疲れや空腹等が重なった事による貧血と見る。

雨の影響で体温も下がり、あまり好ましい状況とは言えないな。


「飯買ってくるから、ここで少し待っててくれ」


「......うん」


その百音の返事を聞いた俺はゆっくり堤防の上に百音を寝転がせる。

少女が一人外に置いていくと言うのは少し不安もあるが、この際仕方がない。

俺は地面を力強く蹴り、近くのコンビニへと急いだ。




コンビニに着いた俺は息を切らしながら入店し、びしょ濡れの俺をギョッとした目で見る店員を横目にパンコーナーへと足を運ぶ。

綺麗に配列されたパンを見ながら、百音は何が好きなのだろうと逡巡する。


よく考えてみれば俺、何も百音の事知らないな。

Youtubeをやっていると言う大きな秘密を知れ、それだけで百音を理解した気になっていた。


もう少し百音の事を知っていれば、存在価値なんて事を聞かれた時に上手く返せたのではないか。

そんな振り返っても仕方がない事を思い出しては後悔する。


「取り敢えず女子が好きそうな......メロンパンとかでいいか」


俺の勝手な想像ではあるが女子にメロンパン嫌いな奴などいないだろう、と言う希望的観測で手に取る。

その他にもボリュームのあるパンやドーナツ、そしてお茶や糖分補給のジュース。


色々と腕に抱え込んだ俺はレジに行き、少々高い買い物をした。

会計を済ませた俺は堤防へと再び走り出し、やがて百音のいるところへと辿り着く。


「すまん待ったか。飯なら沢山あるからな」


うつ伏せに地面へと倒れている百音の隣で俺は袋を漁り、買ってきた物を頭の横に置いていく。


「おにーちゃん」


少し幼稚な発音で、唐突にそんな言葉が俺に放たれた。


「どうした百音。早く食って家に帰るぞ」


周りも段々と薄暗くなってきており、雨も降り続いているこの状況は危険だ。

出来れば一刻も早く帰路に就きたいところではある。


「私のこと......好き?」


「──は?」


と、百音のよくわからない質問に素っ頓狂な声を出してしまう。

視線を横にやると百音は顔を上げ、上目遣いで俺を見つめている。

口角は少し上に上がっていて、頬杖をし、足は上下に動かしながら俺の返答を待っていた。


「早く答えてよ?」


「......質問の意味がよくわからないな」


「何言ってんのおにーちゃん。私の事が好きか嫌いか聞いてるだけだよ?」


何だか嬉しそうにそんな事を話す百音に、恐怖に似たような言葉に表すことの出来ない感情が生まれてしまった。

今目の前にいる少女は百音であっても百音じゃないような──


「そりゃ勿論家族として好きだ」


「おにーちゃんさっきから回りくどいよ! 好きか! 嫌いか!」


語気を荒らげる百音に、俺は鼓動の高鳴りを感じながら再び口を開く。


「そりゃ......好きだよ」


「えへへへ。それじゃあ私にあーんさせてよ?」


百音が甘えた調子で言い終えた刹那、近くに物凄い地響きと轟音を轟かせながら、雷が落ちた。

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