大人気youtuberのBAN
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「これは私が起こした大失態......。お兄ちゃんの顔バレもしたし、何のメリットもない放送事故だった」
そう言って目の前で懺悔の様な言葉を吐き連ねる百音。
俺は椅子に腰掛けながら、百音の話に耳を傾け続ける。
「この責任はどうとればいい? お兄ちゃん」
百音は最悪な放送事故を引き起こし、結果的に俺の顔バレと、素の生活の一部が流失した。
ネットの反応は比較的良好ではあるが、大人気youtuberの大きな配信自己として大々的に知れ渡っている。
言わば悪目立ちしているような状態であり、俺らからしてみれば望むような展開ではない。
顔がバレたと言う事は学校側にもバレるリスクが上がったと言う事でもあり、学校生活において少々肩身が狭い思いをする可能性もある。
現実として今日は愛から俺が百音のYoutube活動に携わっている事が知られてしまい、面倒事になってしまった。
恐らく今日だけで終わる話とは到底思えず、今後も面倒な事態になるだろうな。
「責任、か。確かにお前のせいで俺の顔もバレたし、ハッキリ言って最悪な事態だ」
「そう、だよね......。私があんなヘマをしたばっかりに......」
百音は俯き、段々とトーンを落としながらそんな事を言い終える。
俺は一旦深い溜め息を吐き、一泊を置いてから再び口を開く。
「まぁでもだから責任取れなんて事をお前に言うつもりはない」
「お兄ちゃん本当に私は責任を取らなくても、いいの?」
被害者の俺が責任を取らなくてもいいと言っているのに、何故そんなにも責任を取りたがるのか。
そんなことして何かが好転するとは思えないのだが。
「ああ。責任を取るだなんて堅苦しい物は不要だ。これから気をつければいいだけなんだからな」
「お兄ちゃん、意外と優しいじゃん!」
百音はそんな事をとびっきりの笑みを浮かべて、威勢よく言うのだった。
次の日は空も暗く、地面を叩き付ける雨音で会話をする事ですら困難な程強い雨だった。
美咲と行く通学路も、様々なところに水溜まりが出来ていて、排水溝も水が溢れそうになっている。
「こんな大雨なんだから休校くらいして欲しいよな」
「確かに。濡れちゃうと透けるし本当に迷惑」
そんな天気に対する愚痴を零しながら、今日も普段通りに学校へ向かった。
学校についてからも普段通りに、いつも通りに過ごして。
体験入部中の夢部にも一応顔を出し、Youtubeに関する件も愛から問いただされて。
そんな事を繰り広げた後、俺は鼠色に染められ、雷を伴う空の下一人で帰路を辿る事になった。
一人で帰るのは暇で、スマホを片手に学校にいる間に溜まっているメッセージに適当に目を通しながら歩くのが日課だ。
そうして画面上に指を滑らせ、確認していたのだが。
「私の存在価値ってなに......なんだよこれ」
一つのメッセージが俺のスマホには届けられていて、その内容もよくわからない。
百音から『私の存在価値ってなに』と入っているが一体どういう意味なのか。
次の瞬間空がピカッと光出し、直後身体中に響き渡るような重低音と共に落雷する。
......何か、嫌な予感がした。
俺は家に向かう足を急ぎ、地を力強く蹴って百音がいる家へと、向かう。
靴の中に水が入って気持ち悪くても、跳ねた水が下半身をずぶ濡れにしようが、気にせず俺は走り続ける。
そうして家の前へと俺は辿り着き、家の中へと入る。
廊下を走り抜け離れへと直行し、扉を開放、中へと足を踏み入れた。
パソコンデスク上に置かれているモニターには、何やら文字が映し出されている。
俺はそれに近寄り、声に出して読んでみる。
「Youtubeのコミニュティラインに違反していたため、このアカウントを停止しました......」
頭が真っ白になるのがわかった。
何も考えられない。これから俺はどうしたらいいのか。
呆然としている中、一枚の紙が音をたてながら机から落ちていくのが目に入り、ハッとした。
その紙を拾い上げてみると、何やら文字が書かれている。
「自分を探しに行ってきますって......何を、してるんだよ!」
窓の外に目をやると雨は更に強さを増しており、窓に降りつける水で景色がよく見えない。
紙を握りしめた俺は踵を返して玄関まで一直線に走り、外へと飛び出す。
「百音......お前は一体何を考えてるんだよ!」
ハッキリ言って百音が今どこにいるのか、検討もつかない。
だが俺に今出来る事と言えば直接会って話して、そして......。
「......どうするんだ?」
頭が一気に冷えていくのがハッキリとわかった。
今こうして百音を探し求めて、見つけたとして。
俺は一体どうするのが正解なんだ?
百音は自分の存在価値はYoutube上にしかないと、そんな事を考えていた。
その存在価値を認めてくれていたYoutubeのアカウントがBANされた今彼女はどうするのか。
どうやったら彼女を救える?
そんな事を考えていると、ポケットから電子音が鳴り出し、俺はそれを手に取る。
「お前今どこにいるんだよ!?」
電話に出た刹那、俺はそんな怒号にも似たような口調で言葉を放つ。
「......河川敷で待ってる」
そんな言葉の直後、ツーツーと通話の終わりを告げる電子音だけが俺の耳に入る。
「河川敷ってあいつは何を──」
嫌な、予感だけが背中を走り抜けた。




