妹の存在価値
「助手って一体俺は何をすればいいんだ?」
youtuberである妹の百音から助手になれと言われた俺。
正直に言えば俺も困惑の表情を浮かべるしかない。
「それとだな、何で俺はそもそも責任を取らないといけないんだ? 部屋に上がったのは謝るが、責任を取る程のものなのか?」
話の流れで俺が謎の責任を負う方向になっていたが、責任を取るほどの重大な過ちを犯したつもりはない。
「助手はそのままの意味で私の事を補佐すればいいよ。あと何で責任を取るか、でしょ?」
ここで百音は深呼吸をし、言葉を一度止める。
眉毛は下がり、肩も竦めた百音は真剣な表情をして口を再び開く。
「──私はさ、学校に行けてないよね。だから簡単に言うとね、私の存在価値を見出すために数年前私はYoutubeチャンネルを開設して、動画投稿を始めた」
百音は理由こそ俺は知らないが不登校であり、家の中でもあまり人とコミニュケーションを取ろうとはしない。
俺と話したのも百音が手の込んだ自作自演で男に囲まれ、俺が助けた時くらいだろうか。
「私自分で言うのも何だけどほら......見てくれだけはいいからさ? 後は必要最低限のトーク力さえあれば伸びると思ってやってみたら、ビンゴでそのまま大人気youtuberになったんだよ」
正直に言ってしまえば百音は確かに容姿は一級品と言える。
俺はタイプじゃないが、万人受けする可愛らしさを持っていた。
「で私がyoutuberって事は家族の誰にも話してなくて、これからもずっと知られず私は自分自身だけが知ってる事にしようとしてた。......だけど今日、それは不可能になった」
何故ならば、俺が窓から侵入し、Youtube配信をしている百音を見たからだ。
......なるほどな。
百音は自分がyoutuberであるという事を秘密にしていた訳か。
確かにその秘密を秘密でなくしたのは俺であり、確かに責任を負う必要はあるだろう。
「話は大体わかった。──その、知ってしまって何か悪いな」
「少し前の康太だったら私嫌だった。......でも今の康太ならお姉ちゃんの命の恩人だし、一応私を助けてくれたし。信頼はある程度してるつもりだよ」
百音はあまり人の事を信頼する事なんてなさそうな奴だった。
そんな奴から俺はある程度信頼されていると言う事は素直に喜んでいいだろう。
「まぁと言う事で正式に私の助手になった訳だし今から私は康太の事をお兄ちゃんと呼びたいと思います」
思わず『お兄ちゃん』と言う単語にビクリと俺は反応してしまう。
ずっと何年も聞いてこなかったその単語に俺は何とも言えない感情が湧き上がって来る。
「あれ、もしかしてお兄ちゃん照れてる?」
「照れてねーよ。それよりも俺を助手にしてるんだから初仕事くらいくれ」
とそんな自分から仕事を貰いに行くという訳のわからない行動に俺は出てしまう。
......少し動揺してるな、俺。
そんな事を思いながら頬をポリポリと掻く。
「んーとそうだなー。お兄ちゃんタイピングは出来る?」
「タイピングは得意分野だな」
「それじゃあちょっとこっち来てくれる?」
百音はデスクの前に座り、俺にこっちに来るように手招きをする。
俺はそれに従い、ゆっくりと百音に近づいて行く。
「今から動画編集の説明したいと思うんだけど......時間は空いてる?」
「明日は休みだし俺はいいが......。それよりも配信はいいのか?」
俺が邪魔をしてしまい、配信はストップ中な筈だ。
そんな中で呑気に俺に編集の事を教えていても大丈夫なのだろうか。
「あー別にいいよそれは。さっき終わらせといたから。そっちの方が視聴者もなんだろーって騒いで盛り上がるじゃん?」
そんな事を言いながら笑みを浮かべる百音はまさしく視聴者を虜にする、小悪魔だった。
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