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美咲の過去

私は神楽家の長女としてこの世に生を受けた。

最初は両親二人から大きな愛情を注いで貰い、順当にスクスクと成長していった。


気がつけば私は物心がついていて、妹が出来ていた。

確か妹は百音だった気がする。


私が長女で、その三個下である雪、そして更にそこから一個下の百音。

そういう構成なんだけど、何故か雪の記憶があまりない。


雪はとても活発な子で、ある時から強く記憶に刻み込まれているのに、小さい時の雪の記憶が本当にない。

......まるで、最初っから居なかったみたいに。


雪の事は置いておいて、私にフォーカスを戻すね。

私は自分でも言うのも何だけど、昔はかなり元気で口が達者で、いつもクラスの中心にいるような女の子だった。


毎日友達に囲まれ、毎日笑いまくって今思えば人生でここがいちばん楽しかったと思う。

そんな中でも私は好きな人が出来た。


私は元々目立っていて、欠点一つない誰もが羨む人間だった。

だから私の好きな人が私を嫌う理由なんて一切ある訳がなくて、かくして私達は小学生ながら付き合う事になったのね。


小学生で付き合うと言えば放課後二人で帰路を辿ったり、二人きりで遊んでみたり。

そんな健全で面白味がないかも知れないけれど、私達二人は私達なりの幸せな日々を送っていた。


そんな時、私の家庭で大きな亀裂が入る事になる。

私のお父さんが務める会社が倒産し、お父さんは職を失った。


それから何がお父さんをあんな目にしたのかはわからない。

無職になったお父さんは毎日ギャンブルに向かっては大金を使い、お母さんが何年にも渡って貯めてきた貯金も無断で使う様になった。


それから家ではお母さんとお父さんの喧嘩が絶え間なく繰り広げられるようになって、私は大きな傷をおった。

それだけならまだよかったと思う。


借金まみれ、お母さんからも文句を言われ、自分でも自身の事で思うことがあったのかも知れないお父さんは、暴力を振るうようになった。

この世の中で一番最低で最悪だけど、最も簡単で効果的。


そんな無差別な暴力を、私だけに振るうようになってしまった。

何で私だけなのかはその時は知らなかった。わからなかった。


私はお父さんに何も危害なんて加えていないのに、私とお父さん二人きりになるといつも私に手を上げた。

何度やめてと叫んだかわからない。


だけどお父さんは私の悲痛な叫び声に耳を傾ける事はなく、ただただ快楽の為に私を殴った。

日に日に私は精神的にも肉体的にも疲弊し、学校を休むようになった。


......だけど、家にいるのは不登校になった私と無職なお父さんだけ。

お母さんは仕事に行き、百音は幼稚園に通っていたから。


一日中二人きりになった一つ屋根の下では壮絶な暴力が繰り広げられた。

そんな毎日の中、私はお父さんが何故私だけに手を上げるのか、知る事になる。


その日は特別なことは何もなく、いつも通り服の下、見えないところを殴られていた時だった。


「お前、毎日楽しそうで癪に障るんだよ!! 俺が働いて課長に怒鳴られていた時もお前は楽しそうに遊んでたんだろ!!! しまいには俺は無職で、お母さんにもめちゃくちゃに言われる始末だ!!! パチンコも何円負けたのか覚えてない!! こんな俺自身も嫌いなんだよ......。だからお前を見ると、無性に腹が立つんだ!!!!」


お父さんのその時の表情は鬼そのものだった。

心中で渦巻く憎悪の感情を我武者羅に私にぶつけ、吐き出し、解消。



お母さんに相談してもお父さんには適わないと私を見て見ぬふりをしていた。

今思い出すだけでも反吐が出る。


そんな辛い日々の中、更に私に追い打ちをかける事が起きた。


「──くん、交通事故にあったみたいね」


そんな母の言葉で私は知った。

私が大好きで、心の拠り所だった付き合っていた彼氏。


そんな人が、交通事故にあい死亡したと。

お通夜にも、葬式にも私は出席する事はなかった。


聞けば私以外の同じ学年の人は参列したらしいけど、そんな事はどうでもよかった。

ただ私の大好きな人がこの世から消えたと認識すると、私が壊れそうで。


だけどその心配は直ぐに消え失せた。

私は以前とは打って変わって静かで地味な子に生まれ変わり、人を愛すことも信頼する事もなくなった。


終いには男性恐怖症も発症し、男性には関係なく恐怖を抱くようにもなってしまった。

そして程なくしてお母さんはお父さんと離婚し、暴力が振られる事はなくなり、私は学校に登校するようにはなった。


だけど以前の面影もなくなった私に寄り添う人間はやがて消え去り、孤独の道を私は歩む事になった。

──これが、端的に纏めた私の過去。

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