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重すぎる対価

ずっと暗く長い夢を見ていた気がする。

そんな夢は段々白を取り戻していき、俺は覚醒した。


視界が一気に開くと、眼中に広がるのは見知らぬ天井。

そして俺は病衣を身に纏っており、瞬時にここは病院なんだと理解する。


五感はしっかりと機能しており、四肢も機能する事を確認し、俺は思わず安堵してしまう。

後で詳しい説明があると思うが取り敢えず何の後遺症もなく終われそうだ。


「美咲は!!」


突然頭に美咲のことが思い浮かび、俺は思わず声を出す。

俺は今こうして生きながらえているが美咲はどうなったのか。


俺が力を振り絞り岸の方へと押したのだが、果たして泳ぎ切れたのか。

俺は気がつけば上半身を起こし、白い壁を見ながらそんな事を考える。


今にででも川に行って捜索しに行こうと俺は横に視線を向けた刹那、目を丸くした。

......そこには、小さな寝息をたてながら顔を俯け寝入っている美咲がいる。


俺は全身の力が抜け、そのままベッドへと身を委ねた。

また見知らぬ天井を眺めながら、一人呟くのだった。


「一件落着......か」

と。





それから少し俺は目を閉じ思いに深けていた。

頃合いがつくと俺は身体を起こし、寝入っている美咲に目を向ける。


美咲は幸せそうな、少し辛いような、そんな複雑な表情をしながら瞳に瞼を下ろしていた。

俺はそんな美咲に手を伸ばし、肩を軽く揺らし初め、彼女を起こす。


「......ん、っっ康太!?」


「やっと起きたか。俺のこの状況を簡単に説明してくれ」


と、そんな俺の言葉の後美咲はその真っ黒な瞳に涙を潤わせ、そのまま水滴がボロボロと零れ落ち始めた。


「......っ......ごめ............ん」


そんな言葉を言い終える事も困難な程感情が溢れ、嗚咽をしながら俺に向かって頭を下げる。


「私が............あんな事をしたせいで──」


「いつ俺がお前に責任があると言ったのか?」


「......ぇ」


美咲は恐らく俺に責任を感じて涙しているんだろう。

そんな事は人の感情を読み取る事が得意ではない俺ですらわかる事だ。


妹が、兄の前で泣いている。

そんな状況下、兄がするべき事は言うまでもなく決まっているだろう。


「いいから泣くな。元気出せよ。俺は今こうして生きている。それが事実として今ここにあるだろ? それだけでもう十分な事だ」


「そうじゃ......ない! 私があんな時に外に出たから、康太を死なせかけた............。康太がいくら平気だって言っても、私の責任は──消えない」


美咲は少し語気を荒らげる。

恐らく感情が昂り、無意識に声を大きくしてしまうんだろう。


美咲の瞳は、真剣そのものだ。

決して俺に対して偽っているものではなく、本心から責任を感じている。


「お前さ、あの時俺のこと所詮は他人だって言ってたよな」


あの時の美咲は天候と共に荒れていた。

俺の事は所詮は他人。ああ、間違ってはいないだろう。


「そんな......つもりじゃ!」


「ないとは言わせない。あれは本心だって俺でもわかる。正直、あの言葉には傷ついた」


美咲の表情はこれ以上は言わないでくれ、と言っている。

だが俺は口を動かすのをやめず、更に口調を強める。


「お前は俺の事をそう思っているのかも知れない。俺もお前と同じように美咲の事を思っている。そう、お互い様だ。......だから」


俺はそのまま言葉を止める。


「......何が言いたいの?」


美咲の鋭い質問が、飛んできた。


「数年後にはお互い家族と思えるようになればいいな」


その瞬間、美咲は眉間に皺を寄せ、明らかな不満を露にする。

俺と家族。そんな文が気に食わなかったのか、お父さんの事も相まって不満だったのかはわからない。


だが今心で発生した不満を、普段通り俺にぶつけられる状況ではない。

美咲にとって俺は憎むべき存在であり、命の恩人でもあるのだから。


「......お前は責任を感じなくてもいいと俺は言ったな。少し後出しみたいになるが、それは条件付きだ」


俺が放った声に美咲は表情一つ変えず、俺に言葉を投げ返す。


「......条件って?」


「お前の過去を、教えてくれ」


その刹那、美咲の顔が引き攣った。

俺はそんなのはお構いなしに、笑みを浮かべる。


「......これで、トントンだな?」

そんな言葉を添えて。

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