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突如訪れる予想外

鍵を入れて解錠し、中に入るとそこには真っ暗な部屋が広がっており、すぐ横にある穴にフロントで貰った板を差し込んでおく。

そうすると部屋の灯りがパッと輝き初め、部屋は暖色に照らされた。


予約した旅館は玄関があり、そここら一段上がると横にトイレ、その奥にある横扉をスライドさせると15畳程の和室が広がっている。

本来なら五人程がこの部屋で寝るのを想定しているらしいが、俺らはこの部屋を三部屋予約し、一人部屋を確保している。


......まぁ、お金には余裕があるからな。

俺は荷物を隅に置き、そこから整理をしてやるべき事を処理した。


和室の更に奥には縁側があり、そこにある椅子に腰を下ろした俺は適当に景色を見ながら備え付きのお茶を適当に啜る。

そんな事をして大自然を堪能していた俺だったが、ポケットに入れてあったスマホが突如として鳴り響く。

俺は外に向けていた視線をスマホに飛ばし、鳴り響くスマホを手に取る。



「まだ準備が終わってないんですか? 美咲ももう私の部屋にいますよ?」


「ああちょっと景色を見てた。今からそっちの部屋に行くよ」


「早くしてくださいね? まだ今日のプランは残ってますから」


そんな言葉を残して雪は電話を切り、物寂しい電子音を残す。

俺はゆっくりと立ち上がり、雪の部屋へと歩を進めた。






「もー遅いですよ。遅すぎて雪とカードゲームしてました」


「景色が綺麗過ぎたんだよ。正直それだけで旅行に満足している」


「そんな寂しい事言ってないで、はやく出ますよ! 美咲も準備はいいですよね?」


「別にいいけど。次はどこに行くの?」


「この近くに有名なパワースポットの滝があるんです。そこに行こうかなーと思ってます」


「滝か。名案だな」


「それじゃ行きましょう! 近いので徒歩でも行けますよ!」


そうして次の行き先は滝と言うことになった。






旅館から少しばかり歩くと、ゴウゴウと言う力強い音が遠方から微かに聴こえて来ていた。

そこからも歩を進めると、段々周りには観光客も増えていき、観光スポットだと言う事を改めて認識させられた。


滝は大きな崖から一直線に落下し、下から作られる池の様なところに大きな水飛沫を上げている。

そしてそこから流れ作られる川の上には木製の橋が架かっており、そこも有名な観光名所だ。


悪ふざけでジャンプでもすればワイヤーが切れてそのまま落下しそうな程、見た目は不安しかない。

渡る奴も皆、ゆっくりと足元を見ながらゆっくりと渡っている。


「とりあえずあの橋渡らないか?」


「......私、怖いからここで待ってますね」


「雪はああいう高いとこ無理なのか?」


「私、高所恐怖症で。ああ言う高い系は無理なんです。康太くんは美咲と二人で渡って来てください」


「そうか。じゃあここで待っててくれ」


美咲の方を見ると俺の方には視線を向けず、流れ落ちて行く滝を恍惚と見ている。

その目は俺に敵対心を向ける鋭いものではなく、優しい瞳をしていた。






橋の前には古びた名札があり、その端の名前が書かれているが、錆びていて読むのはかなり難しい。

そんなところも渡る際の不安に拍車をかけている。

俺は記念にその名札を写真に収め、雪の方へと目線をやった。



「全然怖くなさそうだな。高いところは別に平気か?」


「うん。私スリル楽しむの結構好きだし」


「じゃあお前が先に行ってくれ」


「いいけど康太怖いの? 言っとくけどダサい」


「男でも怖い物はあるんだよ。それに、この橋はかなり年季が入っている。やっぱり少しは様子を見たい」


「それって怖いって事じゃん。言い訳するとかダサい」


そんな事を言ってから、美咲はその橋を渡り始めた。

美咲が板を踏む度に、橋は揺れ見ているだけでもかなり怖い。


だが美咲はそんな事を気にも留めず、ペースを落とすこと無く淡々と橋を渡って行く。

俺も美咲の背中を追い、橋を渡り始める。


確かに下さえ見なければただの揺れる橋にしか過ぎないが、下を見れば絶対足が竦む。

俺は意識的に空を見ながら、橋を渡って行く。


......人間と言うのは好奇心旺盛な生き物だ。

俺は好奇心に負けてしまい、眼下に広がる景色に、意識を向けてしまった。


だが怖いと言えば怖いが、それよりも壮大な自然が広がっている。

下には滝から作られた川が流れ、その周りには人々が水遊びを繰り広げていた。

近くには緑もお生い茂り、俺に残る少年時代の心を燻る。


「渡るの遅くない?」


「下の景色が綺麗でな。少しばかり見惚れていた」


「絶対嘘。正直怖かっただけでしょ。次は康太が先に行って」


「さっきは先に行って貰ったもんな。次は俺が先に行ってやるよ」


そう言って俺は橋を勢いよく走り出して渡って見せる。

それから後ろを向いてみると、美咲がゆっくりと歩いて来ているのを確認した俺は、ジャンプをしてみる。


俺が作った衝撃はうねりながら橋を渡り、美咲のところも大きく上下に揺れた。

ほんの出来心でやった事だが、美咲はそこから急に動かなくなる。


不審に思った俺は美咲のところへ歩を進めたのだが、着いた先には膝がガタガタと揺れる美咲の姿があった。


「ほんとに康太最悪。うざい」


「それは申し訳ない事をしたな。ほら、手を貸してやるから渡り切るぞ。そろそろ雪が退屈している筈だ」


俺は美咲に手を差し出し、俺の手を美咲はそっと握った。

その手は妙に冷たく、そして初めて美咲の手に触れた気がする。


「歩けるか?」


「うん。ゆっくり歩こ。あとまじで最低」


そんな文句を垂れながら、俺の手を取ったままゆっくりと橋を渡る。

途中でまた揺らしてやろうかとも思ったが、流石にこれ以上は好感度が振り出しに戻ってしまうと思った。


そんな俺の邪心を抑えつつ、何とか橋を渡り終える事が出来た。

その刹那、ポタポタと空から雨が俺らに降り始める。


「やっと渡り終えましたか。こっちは暇だったんですよ?」


「美咲が怖がりだったんでな。それよりも雨が降っている。これからどうするんだ?」


「天気予報には終日晴れ予報だったんですけどね。......仕方ないですし、旅館に戻りましょうか」


そういう訳で俺らは旅館に一度戻る事になり、歩をそちらに進め始める。

俺の少し後方を歩いていた美咲は気が付けば隣にいて、俺は思わず視線をそちらに向ける。


美咲の口が動いているが、先程から激しさを増した雨のせいで音が掻き消され、よく聞こえない。

そして喋り終えたのか、美咲はペースを落としまた俺の後方に回る。


......何か話している時の美咲は、少しばかり笑みを浮かべていた。

何を言っていたのか俺はわからなかったが、また後で聞くことにした。

ゴールデンウィーク中は今まで出来なかった毎日投稿をしようと思っています。

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