旅行先でクラスメイトと出会ってしまったんだが
「やっと着いたな。移動だけでクタクタなんだが」
「そんな事言わないでくださいよ。旅行は今からが始まりなんですから。そうですよね美咲?」
「あ、うん。これくらいで疲れてたら人生やってけないでしょ」
「美咲は今日も辛辣だな。ま、折角旅行に来たんだし楽しもーぜ」
突如昨日雪から聞いた旅行の件。
まさか前日の夜にいきなり言われるとは思いもしなかったが、今こうして俺らはその翌日に旅行に来ていた。
眼中に広がる街の景色は至る所から湯気が出ており、見た目からも温泉地だと言うことがわかる。
──そう、俺らは所謂『温泉旅行』をしに来たのだ。
勿論雪が勝手にプランを考え決めたもので、俺らには今後の計画も何も聞かされていない。
雪曰く、『何も知らない方が楽しそうじゃないですか』だそうだ。
俺はこういう旅行等はしっかりとプランを練って行動するタイプなため、今この現状はかなり新鮮味がある。
また景色も俺はかなり好きなのだが、移動の新幹線では意図せず寝入ってしまった。
......まぁ、起床時間が普段よりも早かった影響なのだが。
「取り敢えず旅館にチェックインしに行かないか? 荷物とか色々置きたいしな」
「確かに名案ですね! 私も丁度荷物が重たいなーと思っていたところです」
「お前のプランそろそろ聞かせてくれないか? 俺は不安しかないんだが......。取り敢えず向かうか」
雪はいつもは頼りがいがある存在なのだが、今回ばかりは不安しかない。
俺はやれやれと溜め息を吐きながら、歩を進めるのだった。
それから少しだけ歩いて、俺らは旅館に到着した。
駅から徒歩数分というアクセス抜群のところを予約していたため、大した労力を使わずとも到着出来た。
俺はエントランスのソファーに身を委ね、チェックインをする雪と美咲の背中を眺めていたのだが。
いきなり隣に座ってきた存在が、唐突に俺に声を掛けてきた。
「なんで康太がここにいんの!?」
そんな大きな驚いた声の主は俺のクラスメイトである、外間麻美だった。
俺も大きく目を見開いたまま、口を開く。
「逆に何で麻美がここにいるんだよ? ......しかも一人か?」
外間麻美。クラスの女子生徒の中で圧倒的な存在感を誇る彼女は、誰もが認める女子のリーダー格だ。
そんな彼女はインターネット上で毎日遊ぶ姿を公開しており、如何にも一人で何かをするのは嫌いなそうな人物である。
しかし、今こうして目の前には一人でソファーに腰を下ろす麻美がいた。
「......そうだけど? 一人だったらやっぱ旅行って危ない?」
「いやそういう訳ではないんだが......。なんと言うか、お前って一人旅とかすんだなと思ってな」
「私だって一人になりたい時くらいはあるし。......それに、一人旅ってなんかカッコイイじゃん?」
そうして満面の笑みを麻美は浮かべる。
俺は適当に苦笑いをしながら、その瞬間を何とかやり過ごす。
「......で、康太は一人で来てんの? やっぱりあんな事があったから自然豊かなところに逃げたくなった?」
「別に逃げる気も何もない。ただ今日は家族と旅行に来ているだけだ」
「ふぅーん。家族と来てるんだ。......あれ、確か家族って美咲ちゃんも?」
俺は前日、全校生徒の前で美咲との交際説を否定すべく、美咲と家族であるということを打ち明けた。
その後の反応は知る由もないが、少なくとも交際説は消え失せた筈だ。
あれからスマホの電源もつけておらず、友達の反応もわからない。
「ああ、美咲は家族だからな」
「でも血は繋がってない訳でしょ? その上で旅行って言うのは康太何か企んでるでしょ?」
「何も企んでねーよ。それよりもお前が思う俺は最低過ぎないか?」
「流石に冗談だけどさ。......康太、あれから女子の間では意外とカッコイイかもみたいな感じになってるって知ってる? 男子の間でもかっけぇーみたいにはなってる」
......ほう。意外とあの件に対する俺への評価は最悪な結果は免れたみたいだ。
まだ安心だけは出来ないが、学校だけは何とか登校出来そうである。
「そうか。意外と好評なみたいでいい気分だな」
「別に好評という訳でもないけどね? ......それよりも美咲ちゃんとかはどかにいるの?」
「美咲達なら今向こうで──」
「あ、もしかして康太くんのお友達ですかー?」
俺が話しているのを遮る形で、雪の声が俺ら二人の間に切り込んで来る。
声の方角へと視線を飛ばすと、雪と美咲が立っていた。
「おお美咲ちゃんじゃん。元気してるー? それに貴方の名前は?」
俺の隣に座る麻美は身を乗り出し、興味津々に美咲と、その横に立つ雪に向かって言葉を放つ。
美咲は少し気まずそうに手をこちらに振り、雪は嬉々として口を動かす。
「私神楽雪って言いますー! 私の横にいる美咲の妹です! 逆に貴方の名前は何ですか?」
「雪ちゃんね覚えとくね。私の名前は外間麻美。これから気軽に話してかけてくれると嬉しい」
「麻美さんですね! 私も覚えときます。ええと、早速ですが連絡先交換しません?」
「えーとね、ちょっとまって。あ、これこれ」
この間何十秒だっただろうか。
短い時間の間に、雪と麻美は連絡先を交換する段階まで進んだ。
......言っておくが、雪と麻美に面識などは一切無い筈だ。
それなのに、この二人はここまで関係性が進もうとしている。
やはり、若いノリというのは凄いものだ。
「ありがとうございます! 後で色々話しかけますねー」
「全然いいよー。私から先に行くかも。その時はよろしくね。じゃ、私先部屋に行くから。じゃあね」
そう麻美は言い残して、ソファーから立ち上がってこの場を後にする。
俺ら三人しかいなくなったところで、雪は口を再び開く。
「チェックインは出来たので、私達も行きましょう。三人別々に部屋はきちんと取ってあるので安心してくださいね」
雪はそう言い、俺と美咲に鍵を手渡す。
ふむ、旅館で一人部屋をちゃんと取ったのは豪勢と言うか中々攻めるな。
「じゃ荷物置いたら私の部屋に来てください。そこで色々話したい事がありますから」
雪はそう言ってから、俺らに背を向け先にエレベーターの方へと歩を進め始めた。
高校生活が大変さを増し、更新が中々出来ませんでした。
失踪はしないので、気長に待って頂けると嬉しいです。




