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妹の部屋が汚すぎるんだが

それから空を見上げる俺ら二人に沈黙が訪れ、俺はただただ呆然と彼方へ続く空に魅了されていた。

しばらくして寝転がって空を見上げていた雪がムクっと起き上がったかと思えば、俺の方を見て笑みを浮かべる。


「案外気に入って貰えたみたいで嬉しいです。......時間もあれなのでもう帰りませんか?」


そんな言葉に俺も身体を立たせてから、口を動かす。


「そうだな。今日は夜ご飯作れる気分じゃないだろ? 帰りに飯でも買って行かないか?」


「名案ですねそれ。じゃあ私が美咲と百音に何がいいのか適当に聞いておきますね」


廃墟ビルから出る経路を辿る最中、俺ら二人はそんな会話を繰り広げる。

横では雪スマホを片手に液晶の上に指を滑らせ文字を打ちながら、俺の歩幅に合わせていた。



長閑な田園風景を俺は視界に入れ、少しばかり昔の事を振り返っていた。

雪は俺が聞いた『この近くに住んでいたとかか?』というのに対して半分正解と言っていた。



ここら辺は一見長閑な風景に見えるただの田舎だろうが、裏ではとんでもない世界が広がっているのを知らない奴は多い。

俺は知っている。だが雪はなぜここ周辺の事を知っていたのか。

──もしかしたら雪は、俺と似ているのかも知れない。






それから幾らか時間は過ぎ、適当にスーパーで弁当を買った俺と雪は荷物を俺が持ち、帰宅し終えていた。

リビングには俺と雪二人しかおらず、美咲は気分的に部屋で孤食をすると言い、百音は普段から一人で飯を食べている。



電子レンジで温めた弁当を雪が美咲と百音のそれぞれの部屋の前にそっと置いておく。

俺はそんな働きぶりを横目で見ながら、箸を進めていた。


「......美咲の連絡先教えてくれ」


部屋の前に届け終わった雪がリビングにやって来るのを認めた俺はそう言葉を発した。

雪は少しばかり驚いた様に目を丸くし、ポケットからスマホを取り出す。


「こう言うのは本人から直接貰うのがいいと思うんですけどね。まぁ、いいですよ。これです」


「ありがとうな。雪のおかげで色々助かってる」


俺は雪のスマホに表示されている美咲の連絡先のQRコードを読み取り、感謝の言葉を述べる。


「いやいや私は好きでやってるんです。......他の人が喜んでいる顔を見ると、嬉しいんです」


雪はポケットにスマホを入れ直し、胸に手を当てながら優しい声色で言葉を放つ。

俺は他人が喜んでも所詮は他人という事で、雪のように人に優しく接せられる人間ではない。



世の中にはそんな優しい人物がいる事は理解しているが、いざ目の前にすると少々罪悪感が出てくるものだ。

それに雪のこの言葉は、何となく腑に落ちないものがあった。


「なんか納得出来ないが、雪がいいなら安心だけどな。取り敢えず俺はこの後美咲の部屋に行ってみる」


「ええそれ本当ですか!? 康太くんも積極的に行動する様になったんですね」


「雪が言った言葉のお蔭様だ。あの言葉で俺は二回目の勇気を貰った」


雪が俺に放った『──行動しないと何も変わりませんよ?』という言葉。

有名人の名言やネットで転がっている名言で同じような言葉はコロコロ転がっている。

だがそうじゃない。雪が言った事に意味があるのだ。


「私は本当に役に立ててるのかわかりませんが......。まぁ、美咲の事は康太さんに任せっきりになりますし、困った事があれば何でも言ってくださいね」


「ああ、そうする事にするよ」


そんな事を雪に言うと、彼女は満面の笑みを浮かべた。






俺は固唾を飲み込み、目の前に立ち塞がる扉を軽くノックする。

しばらくするとドアノブが動かされ、ゆっくりと扉は開放される。



その先には髪の毛を下ろしたいつもとは違う美咲が立っており、視線は俺を睨んでいた。


「入ってもいいのか?」


「勝手に入って。部屋汚したら許さないから」


そんな冷たい言葉を浴びせられつつ、俺は部屋の中に入ったのだが......。


「何だよこれ! 足の踏み場もねーじゃねーかよ!」


思わずそんな大きな声を出してしまった。

美咲は俺に向かって舌打ちを飛ばしてから、何なのと一言ぶつける。



眼下に広がるのは本や脱いだままの服、化粧品や帽子......数えればキリがない。

ベッドの上や机も隙間なく物が散乱しており、整理整頓がまるでなっていない様子だ。



俺は深い溜め息を吐いてから、美咲に言う。


「俺を呼ぶ前に掃除しようとは思わなかったのか?」


「......別にどうでもいい相手の為に労力使わない」


少し棘のある言い方だったが、それよりもこの部屋の惨状の方が厳しいものがある。


「取り敢えず掃除してから話すこと話す事にする。この状態じゃ話したくても何も話せないだろ」


「めんどくさい。やるなら勝手にやってくれる?」


「はいはいわかったから。お前は口よりも手を動かしてくれ。じゃないと適当に捨てるぞ」


俺は試しに近くに落ちていた化粧品を手に取り、ゴミ箱に向かってみる。


「あまってまって!」


そんな焦りながら俺の手を強引に掴みあげ、化粧品を美咲は取り戻す。

その反動で俺は意図せずバランスを崩し、物が散乱している床に倒れ込んでしまう。

その刹那、埃が部屋中に舞い上がり、俺は咳き込んだ。


「......そんなに焦るなら手伝ってくれ。お前だって勝手に捨てられたら困るだろ?」


「......うん。手伝うから必要最低限なこと以外は喋らないで」


俺はその言葉に頷き、目の前に広がる散らかった物を手に取るのだった。



高校が始まったので更新頻度落ちます。

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