第24話:過保護か、それとも(リューイ視点)
どうにもこの男は過保護だと思う。過保護になるのは分かるけど、度を越してる。これではカインを檻に入れてる様にしか僕には見えない。まあ、僕も人のことは言えないけど。
らしくもなく自分から率先して魔術を教える役目を受けたり、今日の護衛だって名乗り出てしまった。
「リューイ」
「言いたいことは分かっています」
この男はカインをまるで我が物として扱う。いつもそうだ。カインはセインには逆らわない。疑問に思いはすれど、無意識に従っているのだ。それに甘えて過保護を押し付けている。
さっきもそうだ。きっとカインは僕が魔術を使ったと思っているだろうが、残念ながらこの子の周りに遮断壁を張ったのは僕ではない。この男の用意した魔道具だ。都合が悪いものは見せない、聞かせない。
なら連れてこなければいいのに。こうして外に出ることはカインのためなのはわかるけれど、それでもこんな苦痛でしかない外出をさせる意味が分からない。
別に外に出てほしくないとか心配というわけではない。けれどあまり汚い世界に触れてほしくもない。純粋でいて欲しいとかではないけども。
この子が外に出るとどんなことを言われるのかなんてわかりきっているのに連れ出したがるのが僕には分からないのだ。
「どこで広まったんでしょうね」
「それを調べるのがお前の仕事だろう」
「違いますよ。それは僕の仕事ではない。僕はあくまでも今日は護衛です。そういった情報に関しては側近の方々に探らせてはいかがですか」
何を勘違いしているのかこのお坊ちゃんは。僕はあくまでも魔術師だ。名目上は。諜報は僕の知るところではない。
まあ、十中八九噂好きな奴らだろう。この格好で出歩いているのだと知れるのは限られているが、口が軽いものでも屋敷内に潜んでいたか何かか。どちらにせよ暇人のすることだ。そこまで警戒する必要もないだろう。カインもとても冷静なタイプだ。この程度で怒ることもないはずなのに。
「広まってるのは今日街に来ているってことだけですかね?」
「さあな」
「本当に、面倒な。暇人というのはこれだから困ります」
「それには激しく同意する」
この子が我慢をしなくていい世界。それが僕の望みだ。そしてそれはこの男も同様なのだろう。血が繋がってないと知っていながら、それでもこの男はカインへの執着を見せる。それは愛情なんかではなようだけど。何がこの男をここまで過保護にしたのだろうか。守る必要なんてないほどにこの子は強いというのに。
「セノア、カイトが待つのに飽きたみたいだいよ」
「仕方ないな。連れて行きたいところもあったし、行くか」
店を出てから陰に隠れるように身を潜めて辺りへの警戒をしていた僕とセインを待ちくたびれたらしく時折カインは暇そうに通りをずっと眺めていた。
「カイト、おいで。移動するよ」
僕が声をかけるとパッ顔を上げて素直にこちらへと寄ってくる。それに僕は手を伸ばしそうになったがそれよりも前にセインが手を差し出した。カインは一瞬嫌そうな顔をしたがそれでもその手を取る。なんで繋がれているかはわからないようだ。それが見ていて少し面白かった。手を繋いでいるのがセインというのは面白くないけどね。今は譲ってあげる。カインが五日本当の居場所に気付くまでは。
「ご立腹だね」
「当たり前。暇で仕方なかったし」
それはそうだ。僕は思わず笑ってカインの頭を撫でた。すぐさまセインに叩かれてしまったが。ああ、これは過保護というよりはただの独占欲なのかもしれない。この子を生かしているのは自分だと、きっとこの男は思っているのだろう。そんな訳ないのに。
ああ、そう思うとなんだか胸糞悪くなってきたな。今だけだ、そこを譲るのは。カインがあるべきはそこじゃなくて、僕たちのいる世界だからね。
店舗外を抜けて広場まで来るとカインのテンションが明らかに変わった。ここまで感情を露わにするのは久し振りだと思ったがそういえば記憶がないと話していた。その影響なのだろうか。あまり普段は見せることのない表情が時々窺える。
様々な露店が並び賑わいを見せるそこから目が離せないようだ。
活気のある声で呼び込みをしている人や立ち並ぶ屋台の前で談笑する人、走り回る子供。そのどれもを必死に目で追っている。そんなに珍しいのだろうかと思ったがこの子が街に出たのは実に2年ぶりだ。新鮮に感じるのは無理もない。
「セノア兄さん、あの並んでるお店が見たいんだけどいいかな」
遠慮がちに声をかけているが目はもう興奮隠せません、とばかりになっていた。その顔を見たら僕なら好きなだけ買いなと言いたくなるがセインは違う。少し悩んだ様子を見せたが案の定却下をしていた。それにカインはしょんぼりした顔になる。僕は無意識に舌打ちがでた。二人は気付いていないようだったけど。
「セノア、せめて少しは見てまわったら?そんなに全部ダメだとしていたら来た意味がない」
セインは一瞬詰まったように言葉を飲んだ後で仕方ないとばかりにカインの手を離した。彼は待ってましたとばかりに一件の露天に走り寄る。とても嬉しそうなその表情に僕は大変満足だ。自然と機嫌も良くなり彼の向かった露店へと近付く。セインからは離れてしまうが僕はカインの護衛だ。別に構わない。彼がこうやって笑えるようにするのも護衛の務めだろうからね。結局のところ、やはり僕も相当な過保護なのだ。どうか今日は何も起きないといい。ただそう願うばかりだ。
そう思う日こそ厄介だったりするのだけど。
足を運んでくださりありがとうございます!昨日投稿分誤字があったので修正しました。眠い中書くのはダメだ。




