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第23−1話:街

 陽が明るくなったのか眩しさで目を覚ます。腕の中にはいつの間にかコハクがいた。とても静かに眠っている。あれからなんだかんだ二度寝出来たようだ。

 ナタリエは出ていったのだろうか。あまりにも静かだ。眩しさの正体はどうやらカーテンが開けられていたためのようだが、それに首を傾げてしまった。深夜確かに閉めたはずだったからだ。


「起きたのであれば朝食を」


 !!

 居た…。気配ぐらい出してくれ。頼むから。俺はかなり驚いてしまい咄嗟の言葉が出なくて口をはくはくと動かすだけだった。コハクも起きたのか、隠れるようにして俺の後ろに回ると背中に手を置いてきた。そのまま背に違和感を覚えたがコハクが姿を消したことで察した。そんなことまでできるとは聞いてない。


「朝食を」

「あ、ああ、えっと、」


 話す気はないとばかりの姿勢が伺えて再度黙る。それにも段々と慣れた。昨日感じていた苛立ちも今はない。寝起きの頭でぼんやりとしているとナタリエが部屋を出て行った。テーブルの上には夜中同様リゾットが置いてある。


「なんでまたリゾット…」


 食べたばかりのものを再度出されるとは流石に思わないだろ。思わず笑ってしまう。更に言えば食べてからそんなに時間は経っていない。作りすぎたとかなのかと思えば深夜のものとは色も香りも違った。

 ベッドから起きると着替える前に席へと着いてスプーンを手にした。

 そういえば前にセインが用意したもの意外食べないように言われていたが、ナタリエが持ってくるということはセインが用意したものなのだろうか。

 ああ…、そういうことか。


「これしか作れない、ってことね」


 納得すると余計に笑ってしまった。同時に前回は感じなかった食事に対する執着みたいなものを思い出す。

 風邪をひかないために、栄養だけはとひたすら食事に気を遣われていたから。

 ある意味生きるためだけに、迷惑をかけないためだけに食事をしていた。そう思うとこの変化はとても大きなものに感じる。

 まだ結構熱いそれを冷ましてから一口食べた。

 ほんのりとした優しい甘さに安堵した。



 今日もまた勉強が待っていると思うと少しテンションは落ちるが、やる気は少し出た。少しだけ。

 食事を終えると着替えるためにクローゼットを開け、どれに着替えるかを考える。支度を手伝ってくれるはずの侍女はナンシーだったので、今の俺の侍女はナタリエの筈なのだがこの場には居ない。もとより俺の侍女をする気はないようだった。まあ、居なくても一人で着替えられるし、むしろ本来の年齢を考えると手伝われるのは恥ずかしくて耐えられないのでありがたい限りだ。

 比較的大人しめの服を手に取ったところでドアをノックする音が聞こえた。

 ナタリエかと思いどうぞーと軽く声を掛ける。


「まだ着替えてないのか?」

「セイン兄様…」


 なんで。いや、なんでも何も用があるんだろうけど。


「こら。その服だと目立つだろ。もう少し落ち着いたのにしないと」


 そう言いながら何故かセインがクローゼット内を吟味し始めた。俺は何事かとただ背中を見つめるばかりだ。いや、その服も大分大人しめだし恥ずかしさがないと思ったんだけどね?セインからしたら目立つのか。そういえばセインが着ているのは日本でも見かけるようなラフなものだった。白のワイシャツにカーキのパンツ。それにジャケットを羽織っている程度だ。


「今日は街に行くからそのようにってナンシーに伝えたんだが…聞いてないのか?」

「何も。そもそも彼女は僕とは話してれないので」

「まさか伝言さえ伝えないとはな…。言っておく」

「そうしてください」


 言っておくって本来は俺の侍女なのだが。ここまでくると最早セインの侍女だなと内心小さなため息をついた。まあそんなことはさておき、今日は街に行くらしい。ここに来て初めて本格的に外に出られる。何日経ったかあまり覚えていないが外に出られるのはとても嬉しい。

 街と聞いてそわそわしだ俺を見てセインが笑っていたが今はそれも気にしない。渡された服を手に取ると確かにシンプルで、タイなどもなく長ズボンとポロシャツのような感じの服で俺は安心した。いそいそと着替える。セインがその場にいたが気にしない。

 靴下を履いて用意された靴を履く。あまり履かれた形跡がないのを見るとカインはあまり外には出なかったんだなと思う。ジャケットを羽織ったところでセインに手を握られた。


「準備できたみたいだな。行こう」


 そう言いながら仕上げとばかりに帽子を被せてくれる。それがなぜか嬉しくなり笑顔になる。まるで遠足前の子供のような気分だ。


「今日は街のどこに行くんですか?買い物?」

「もうすぐ父様の誕生日だからそれの買い物だ」

「父様の…」

「どうした?」


 父親の誕生日と聞いて上がっていたテンションがたちまち下降し複雑な気分へと変わった。父親のことはあまり知らないが、カインの記憶から察するにカインを殺そうとしてるのは父親だ。足取りが重くなってしまう。しかしセインはそれを知らないはずで、それならば一緒に行かないのは不自然だろう。誤魔化すようにゆるく首を左右に振った。


「街で買うもので父様は満足するでしょうか」

「高級なものを嫌がるからな。庶民的なものばかり好むからいいんだ。この間も母様が装飾品を買うのを怒っていたし」


 この家の大黒柱は節約?癖でもあるのか。漫画とかで読む貴族は大半金遣いが粗いイメージしかなかった。まあ、ほぼほぼそれが原因で没落やら破滅やら市民が苦しめられてーってしてたし、節約をするのは悪くないのだろう。

 俺とセインは部屋を出て長い廊下を抜け、ホールへと出た。

足を運んでくださりありがとうございます。これからも更新頑張るので是非よろしくお願いします。

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