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第15話:リューイという男

 落ちる影に気付き俺は勢いよく顔をあげる。さらりと流れ落ちる金色の髪が視界に映り次いでやけに整った顔立ち、そして暗味を感じさせる灰色がかった瞳の男が隣に立っていた。


(いつの間に…)


 気付けなかった。部屋のドアが開いた音も、足音も。こんなに存在感のある男ならば気付けるだろうに、気配さえわからなかった。

 そして俺を見下ろすその瞳は仄暗さが拭えぬ様に見えて、ぞっとしてしまう。それなのにこの身体はなぜか不思議なことに安心感を覚えている。チグハグな感情に俺は一瞬息をするのを忘れていた。

「今日は気付いたんだね」


 穏やかな声音にはっとして息を一つつく。まるで許されたから漸く呼吸ができたような感覚だった。


「中々来ないから迎えに来たんだ」


 その言葉で今日のスケジュールを思い出した。そうだ。座学のあとは魔術の講義があったのだ。しまった。いやでもさっき座学が終わったばかりなのだから言うほど遅くはないはずだと思うのだが。ちらりと時計を見やる俺に気が付いたのか俺の視界を遮るように男が身を乗り出してきた。


「その格好で訓練棟に行くのかな?」

「え?あ、すみません、至急準備します」


 慌ててベッドを降りてクローゼットを開けると適当に汚れても平気そうな服を引っ張り出した。身体がこの後何をするのか覚えているのか俺は躊躇わずに服を選ぶ。


「着替えたらすぐに向かうので表で待っていてもらえると助かるんですが…」

「仕方ないね。5分で支度できなかったら今日はなしだよ」


 そう言ってひらひらと手を振りながら出ていく男の背を見送ると俺は急いで着替えた。

 鏡で簡単に服装をチェックしたところで止まる。

 鏡に映る姿はどこからどう見ても少年で、色素はとても薄く白い肌がまるで人ではないようだった。白銀の髪が白さを際立たせており、深い海の色をした青緑の瞳は一瞬で目を奪われる。思わず鏡に手を伸ばしたところで鏡に映る時計に気付いてはっとし慌てて部屋を飛び出した。


 先程の男は退屈そうに腕を組んで壁に寄りかかっていた。目が合うと同時に身を翻し歩き出す。俺は黙ってそれを追う。


 この人の名前はなんだったか…。…ああ、そうだ、

 『リューイ』だ。

 魔術特使団の団長という肩書きを持つ、魔術にとても優れた人物。

 また随分な肩書きの人にカインは教えてもらっているもんだと背中をみながら考えていた。


「そんなのんびり歩くなら僕は仕事に戻るけど、いいかな」


 俺とリューイとの間には10歩分程度の距離が開いていた。

 あまりぴたりと後ろを歩くのは良くないかと思っていたのだが、それが逆に彼には不快だったらしい。


「すみません」


 一言謝罪をしてすぐ後ろに着く。

 ただこの男、背があるせいか足が速い。そんなに急いで歩いているようには感じないのに、後を追う俺は若干小走り気味になっていた。


 中庭を出て少し歩いたところに訓練場はあった。ぐるりと高い塀で覆われており、上は透明なドーム式の屋根があるのかところどころ光が反射していた。最初はガラスか何かかと思ったがどうやら違うようだ。


「さて、始めようか」


 そういうとリューイは上部へと向かって掌を翳すと光柱が立ち上がり上空に薄い膜が広がり空間を覆った。恐らく結界というものなのだろう。ゲームや小説の世界でしか知らないそれに俺は驚いてただ見つめていた。


「どうかした?」

「あ…いえ、少し驚いて」


 それに逆にリューイの方が不思議そうにしていた。俺が何に驚いていたのかがわからないようだ。それはそのはずなのだろうが。俺からすれば初見なのだから許してほしいと思う。


「さっきも少し気になっていたのだけれど、今日の君は変だね。今日はやたら丁寧な話し方をするし」

「そう、ですか…?」

「ほらそれ。いつもはとても生意気なのに、今日はやたら丁寧で気持ちが悪い」


 流れるままに身を任せて出てくる言葉をそのままに話していたがどうやらカインは普段はリューイにだけは生意気な少年だったようだ。いやそんなの知る訳ないだろと言いたい。


「実は体調を崩してから断片的に記憶が欠けているようで…リューイ先生?のことも朧気なんです」

「え、気色悪い。何その先生って。え、すごい気色悪い」


 そこ!!!?そこなの!?

 思わずツッこんでしまったがリューイは心底気色悪いものを見ているとばかりの視線を向けてきていた。


「すみません、普段はなんて…」

「リュー。あと、タメ口だったから、そうして」

「わかりま…じゃなくてわかった」


 物凄く不快な顔で睨まれたので咄嗟に訂正する。なんだこの人。顔が良すぎる分迫力がありすぎて怖い。というかこの世界顔がいいやつしかいないのかとちょっと落ち込みそうになった。そういえば俺の弟もとんでもないイケメンだなっていつも思っていたな。あれ?俺の周りがおかしいだけに思えてきたな…。涙が出そうだ。


「で、何に驚いてたの?」

「結界?」

「嘘でしょ?」

「嘘ですって言いたい」


 結界に驚いたことがこの人からしたらさぞ不思議なことだったのか。今更に取り繕いようもないので何も言わないでおくが。

足を運んでくださる方、いつもありがとうございます。

たとえ少しでも目に留めてくれる方がいること、本当に嬉しく思います。

これからも精進しますので、よろしくお願いします。


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