第13話:魔種と亜種①
「隣国で飼育している魔種が他国に奪われたことがきっかけで、密売と亜種狩りが始まった。結果、魔種を利用とした戦乱の世が訪れて国が滅びる結果となった、ですよね」
「そうです。では、何故亜種狩りが始まったのか」
「魔種を従えることができるのは亜種だけだから」
「正解です。魔種を従えてこの国を統治しようとした国が戦争を起こした結果、多くの国が落とされこの国は一度滅んだと言われています」
魔種とはゲームで言えばモンスター、よくある物語で言えば魔物だ。そして亜種は魔種と人間の間から生まれた存在のことだそうだ。そのため様々な種類の亜種がいる。耳があったり尻尾があったり、羽が生えていたり。姿は様々だが特徴があるためわかりやすかったそうだ。今ではその面影はないが。
要は混血種だからなのだろう。お互いの血が混ざっているから、人間の言葉も魔種の言葉もわかることから、魔種の調教師は亜種しかできないとされていたらしい。
今ではそもそも魔種がいないのでどんな存在だったかなんていうのはわからないし、どれだけの力があったのかもわからない。
ただ、聞いている限りでは誰もが憧れるドラゴンとか聖獣とかは居なかったそうだ。少し残念な気はする。出会ったとしてもどうこうできる力なんて到底ないが。
そもそも、今でも魔種がいたらこの世界はきっとこんなに平和じゃなかっただろう。だからこの世界には魔法がないのかもしれな…い…?いや、魔術はある。ということは、魔法もあるのではないだろうか。
呪術は日本でもよく耳にする陰陽師的なものかと思っていたが、実際はどうなのか。禁術と言われるものがあるとすれば。むしろその禁術が呪術なのでは。だめだ、この辺の知識がカインの中には足りていないのか、思い出そうとしてもうまく行かない。
「…様、カイン様、聞いていますか」
「あ、はい…っ、すみません」
幾度となく呼ぶ声に漸くと気がついたが、目の前にはとても笑顔なロデアール。その笑顔はかなり怖く感じた。流石教育係を任されるほどであると悠長なことを考えていたらその笑みは深まって、俺は咄嗟に視線を外して無駄に本を何ページか捲った。
「では、先程の話を要約していただけますか?」
「あ…えっと、この世界は過去に乱戦が起きたけど原因は魔種を飼い慣らすための亜種狩りから始まって、今は落ち着いたから魔種はいない…」
「それは振り返りの話です。聞いていませんでしたね、カイン様」
「申し訳ありません…」
素直に謝罪をするとため息を一つしたあとで、仕方ないですね、と払いを一つしてからロデアールは俺の持つ本を更に2ページほど捲ると話を続けた。
「まず、この戦乱の世が落ち着いて何が起きたか」
「飢饉?」
「戦後は飢饉になるほど人はいなかったそうです」
「人がいなかったってことは人間の減退ですか?」
「そうです。人間の減退が起き、焦りを覚えた人間の王は、魔種や疑いのある者を国の裁きという名目で命を奪いました」
俗に言う魔女狩りみたいなものだ。怖いものは排除する。原因を一つに押しつけそれを悪とすることで排除し、この世界は「平和になった」と人に安心という名の洗脳を施したってことだ。反吐が出る。そんなのは裁きでもなんでもない。むしろ裁かれるべきは人だったのではないかとさえ思えてしまう。
「そして起きた次の問題が、種族差別による飢饉。つまり身分の差です」
「人間は偉くて、亜種は劣ると広めた…」
「そうです。人間はとても愚かでした。本当に戦争を終わらせたのは亜種です。それなのに亜種を差別し、亜種のいる町々は冷遇されてきました」
そりゃあ力の差もあるだろう。労働力として仕事を与えれば亜種の方が当然能力が高い。人間は繊細な仕事ができたかもしれないけど、力仕事なんかは亜種の方がずっと得意だっただろう。
となれば、人が考えることは亜種を奴隷として使うこと…。本当に愚かだ。亜種も力があるならばそれを翻すことだって出来たのではないか。
「何故、亜種は奴隷にされても反抗しなかったんですか?」
「良い質問ですね。私も文献で読んだだけなので真相は定かではありませんが、亜種は人と魔種の間で生まれた存在。人間には本能底に逆らえなかったのではないか、と言われています」
「…人間は同調したがる生き物で、魔種は仲間を大事にする生き物だから本能的な面では同族と思うと逆らえなかった、ってことです?」
「恐らく。それでも亜種は種族が根絶やしになるのは避けたかったのでしょう。亜種同士ではなく人と交わることで子孫を残すことを選んだ。その結果、血は薄れ人に近い形となったと言われています」




