第二章 仕返しと洗礼
皆さんどうも~。前回の話はいかがだったでしょうか。前回のあらすじは
学校でいじめを受けている主人公が幼馴染の成瀬 南と一緒に下校してる際突如として現れた化け物に襲われ南が怪物に殺されるすんでのところで主人公の能力が覚醒し、化け物を見事撃退。幼馴染の南から出た言葉は・・・
「やっと見つけた」
状況が全く呑み込めない主人公は立ち尽くしてしまう。
といったところで第一章が終わりました。今回の話はいじめっ子たちへの仕返し、前回の化け物の説明、これから協力して任務を遂行する仲間たちの能力の説明と、ちょこっと説明多めです。眠い時には見なくてもいいかもしれません。(でも見てくれると嬉しいかも、、、)まぁ能力系小説に長い説明は付き物ですものね!ハハッ!気にしない気にしない。まあ能力系小説なんて読んだことないんですけどもね。前置きはこれくらいにして、本編です。それでは、どうぞ。
朝日で目を覚ました。空はまだうっすら暗い。どれくらい寝ていたのだろう。思考がまとまらない。
「たしか、俺は南と帰ってて、、、化け物に襲われて、、、‼」
そうだ。父さんは死んだんだ。俺は頭を手で抱えた。辺りに南の姿はない。先に帰ったのだろうか。脱力感がすごい。
風邪でも引いたのか。とにかく家に帰って横になりたい。これからのことは寝てから考えよう。
家に帰るとリビングで母が椅子に座りながら寝ていた。傍には一食分の昨日の夕飯がラッピングされて置かれていた。俺はソファにあった毛布を母にかけ、水を一杯飲み、自室に戻った。あの化け物は何なのか。あの時の能力は何なのか。父さんは本当に死んでしまったのか。様々な疑問が頭の思考を遮るが、とにかく今はなんだか眠い。二階へ上がり、俺は気絶するように床に就いた。目が覚めると時計の針は丁度正午を刺していた。下で食器を洗う音が聞こえる。母に顔を見せないと。僕は二階へ降りた。
「あんた何やってたの‼お母さん死ぬほど心配したんだからね⁉」
母さんが珍しく顔を真っ赤にして肩を掴み怒ってきた。よっぽど心配だったのであろう。
「ごめん。母さん。俺は大丈夫だよ、何ともない。それより父さんは?」
僕は母さんをなだめながら質問する。
「父さんなら出張だけど、、、それより良かったわ。あなたが無事で。」
母さんはほっとした表情で胸をなでおろす。そうか、じゃあ出張中にあの化け物に、、、昨日のことは母さんには絶対に言えない。しかも腕だけ同じものかもしれないしな、と限りなく薄い可能性を信じなくてはとても食欲なんてわかなかった。父さんの次は母さんかもしれない。その次は南かもしれない。それに今度いつあの能力が出てきてくれるとも限らない。僕はいてもたってもいられなくなった。僕は昨日の夕食を食べて、すぐに二階駆けていった。
「ちょ、ちょっと蓮~学校は?」
母さんが心配そうな声で問いかけるが焦燥感にかられる僕はお構いなしに自室のドアを閉めた。
「僕が強く、もっと強くならないと!」
僕はその日から生まれて初めてキントレとカクトウジュツというものを始めた。気休め程度だが自分に筋肉と実力というものがついてゆく感覚が少し心地よく感じた。 それから二か月後。俺は髪を切り、心を入れ替えて久々に登校の準備を済ませた。
「じゃあ、行ってきます。」
「あなたに何があったかよくわからないけど、今日も無事で帰ってきてね。」
俺は少し口角を上げ頷いた。母さんは父さんが帰ってこないことにひどく傷心し、瘦せ細っていた。毎日テレビを見ていたが化け物も破壊された近隣も、父さんのことでさえも一切報道されていなかった。
いつもより早い時間に学校につく。教室に入ると一瞬で無言の空間が出来上がり、まるで教室に犯罪者がいきなり現れたといわんばかりにクラス中の目線が俺に注ぎ込まれた。約二か月ぶりに自分の席に着くとそこには所狭しと罵倒の数々が書かれた机が目に入った。がいつまでもくだらないことをしているな。と特になど気になどしなかった。席に座るやいなや日陰者の田中が泣きながら近づいてきた。
「なんで二か月も休んでるんだよぉ‼僕が一体どんな目に会わされたかわかっているのかぁ‼お前のせいで‼、、、」
田中の言葉を遮り、俺は反論する。
「何を言ってるんだ。お前。」
「えっ、 、 、フゴッ‼」
俺は田中をぶん殴った後冷酷な目で倒れこんだ田中を見下しながら言い放つ。
「お前は俺を助けようとしたのか?」
田中は下を向き、泣き始めた。高校生にもなって教室のど真ん中で泣きじゃくるとはなんとも情けない。俺は何やら胸糞悪くなって南が話しかけてくれた体育館裏に足を運んだ。そこには相変わらず隠れてタバコを吸っている青野と金髪の山本、肩にバットを担いだ後藤達がたむろっていた。俺に気付き次第、後藤達は三方向から取り囲むように近づいて懐かしいいつもの口調で話し始めた。
「おめえ、俺たちに無断で休んでじゃねぇよ」
「おもちゃは勝手に動いちゃダメなんだぜぇ?」
山本と青野が相変わらずむかつく口調で煽ってくる。しばらく無言でいると。
「てめえ、何とか言ったらどうなんだァ‼」
後藤が金属バットを振りかざす。以前の俺ならここでビビり散らかして尿を撒き散らしていたであろう。しかしあの日に出会った化け物と比べたらこいつらの相手なんて赤子の手をひねるくらい簡単だ。俺はバットをひらりとよけ、後藤の顎を掴みながら忠告した。
「やめときなよ。これ以上はちょっと苦しくなるよ。」
後藤の顎をさらにきつく締め上げる。
「てめえ!ケンちゃんを放せ‼」
山口が殴りかかってくる。しかし隙だらけだ。俺は腹に渾身の蹴りを入れた。ついでに後藤の顎を殴り、二人とも失神してしまった。倒れこんだ後藤の手から離れた金属バットを手に取った。青野は腰が抜けて立てないらしい。俺は青野を見下す形で近づいていった。彼は今にも泣きそうだ。
「ヒ、ヒイ‼ゆゆゆゆ、許してくれよぉ‼ お、俺も実はいじめられてたんだ!同じ仲間だよ!な!な?」
よくも人間はここまで簡単に仲間を売り、浅ましくなれるものだ。俺は青野を心から軽蔑した。
「でも俺のこと殴ったよね。」
「いっ!いやそれはだからほらぁ?いじめられてたから!」
「さよなら」
ゴッ!
もう俺に二度と関わるなよと思いながら手にした金属バットで青野の頭を叩いた。
「鈍い音だなぁ。ちょっと気持ちいかも。」
天を仰ぎ、我ながら自分がちょっと怖いが清々しい気分になっていた。
「もう復讐劇はお済みになられましたでしょうか。」
突然後ろから話しかけられた。声の方向を見ると深い紫色の三白眼と目が合った。艶のある黒のショートヘアー、黒色の皮の手袋、スーツを見事に着こなしている綺麗な女性が佇んでいた。
「貴女は誰ですか。見たところこの学校のものではないようですが。」
余り刺激しないように尋ねた。見るからに学校のものではないし、犯罪者ではないかと僕は怪訝に思った。
「ご心配なく、私は政府直属の喰魂者殲滅部隊の第十三部隊隊長、城崎 未来と申します。貴方が二か月前に出会った異形のもの、そして、 、 、あなたの能力について知っています。」
俺はハッとした。あの化け物は俺以外の人は知らないと思っていたし、あの時使えた回転する衝撃波を乗せた殴打を繰り出せる件についても俺以外に人には説明できないと思っていたからだ。俺は政府だとか殲滅部隊だとか聞き慣れない言葉を不思議に思いながら案内されるがままに女性の車に乗った。
「さっき化け物ついて知っていると聞きましたが、どういう意味ですか?」
早くあのものの正体を知りたくて車に乗るやいなや早速会話を始めた。女性が安定した口調で答える。
「貴方が化け物と呼んでいるものの名前は喰魂者。喰魂者には階級が設定されており、人類に与えられる被害の大きさ順に全三段階設定されています。まず第一段階目は貴方が最初に出会った喰魂者。矮小者、これは喰魂者の中で最も数が多くもっとも小さいサイズで耐久力、身体能力、知能指数ともにあまり高くはありません。重火器の弾丸を数百発撃ち込めばすぐ絶命します。」
いや結構なバケモンだったぜ・・・それをサラッと・・・と少し絶望しながら心の中でツッコミを入れた。
「次に第二段階。狂乱者、これは矮小者とは比べ物にならないほどの戦闘能力を有しており、。通常兵器では全くと言っていいほど歯が立たず、迫撃砲や対戦車兵器を数十発撃ち込まなければ受けた傷はすぐに塞がり絶命させることは困難です。」
少しの絶望が確たる絶望へと変わった。人類は滅ぶのではないか、と本気で思った。これ程までにドッキリ番組のスタッフを求めたことは生涯ないであろう。一途の望みを頼りに後部座席を見渡すが生憎でかい鞄しか置かれていなかった。
「次に最も人類に対して脅威となるであろう生物、第三段階目の怪物。結魂者。これは戦地に出向き奇跡的に生還した隊員が確認した喰魂者でその存在自体定かではありませんが他の喰魂者の中で明らかに知能が高く狂乱者の群れに指示を出していた様子が確認されているそうです。さらに我々との会話も可能であり生還した隊員にこう伝えたそうです。
「衝撃に備えろ。」と」
俺はもう泣きそうだった。あまりにもスケールがでかすぎる。二か月前に戦ったものが一番弱かったなんて。とても信じられるような話ではなかった。
「喰魂者の正確な出生についてはまだわかっておらず絶命すると同時に体が塵のように跡形もなくなってしまうため解剖も不可能。捕えようにも体のサイズが大きすぎて日本での生きたままの運搬は困難を極めます。」
事が大きすぎてあまり話がスムーズに入ってこなかったが話を聞くに政府側も喰魂者の正体についてはまだよくわかっていないようだった。しかし彼女はこう続けた。
「これはあくまで噂程度の情報に過ぎませんが、指示を出していた喰魂者は人型、つまり人間に限りなく近い形をしていることが分かっています。それが化け物なのか、もしくは人間なのか。当時の隊員は回収から直ぐに失踪してしまったので詳しいことはわかりませんがこの地球上のどこかに喰魂者を操っている者がいる可能性があります。まあ単なるうわさ程度の話なのであまりお気になさらず。」
本当はもっと情報を聞き出したかったが今は化け物の正体を聞けただけで十分だった。俺は焦る気持ちを抑え、次は自分の能力について質問した。彼女はハンドルの横に置いてある水を飲み、こう答えた。
「貴方の能力は単純な渦を巻く破壊。どうやって発現したのか、原因は分かりませんが政府はそういった特異体質を持つであろう人物、あるいは既に発現した特異体質者を保護し、その者の解析、監視、強化等を行っています。」
俺は人権を無視した政府の措置に怒りを感じ彼女に向けて怒鳴った。
「ふざけるな!監視?強化?俺は人間だぞ。その特異体質の人たちも友達いて、家族がいて、愛する人だっている。
それを無理やり引きはがして保護をするだと?ふざける大概にしろ!」
家族を無理やりあの化け物に奪われた俺は人一倍人と人との関係が裂かれることに怒りを感じていた。激怒された彼女は車を止め、止めた先のボロボロの廃墟に衣服を掴み俺を放り投げた。ため息をつき俺に覆いかぶさり脅すように答えた。
「その家族や恋人は誰が守れる?今や世界は喰魂者が現れたことで風前の灯火なの。政府は私たちを守ってはくれない!あんたは自分が弱くて誰も守れないまま・・・それでいいの⁉」
「くっ!、、、そんな理屈!、」
僕の言葉には耳も借さず、彼女は言葉を続けた。
「貴方言ったわよね?自分の居場所は壊させないって、あんたが強くならないと。あんたの母親やアンタが住んでる町、アンタの好きな人も全部全部殺される‼強くなるしかないんだよ‼」
「強くならなければ、、、自分達の居場所は!自分たちで守るしかないんだ‼」
さっきまで無表情だった彼女の顔はみるみるうちに怒りで染まっていった。俺はハッとした。確かにそうだ。いつまでも守られる側ではいれない。そっち側にいては誰も守ることも救うこともできはしない。強くならないと母さんを守れない。南を守れない!もう誰も、父さんみたいにしたくない!その瞬間俺の心の内側になにか一つの決意のようなものが宿った。
「俺が、悪かった。未来さん。俺を、 、 、鍛えてくれ!」
俺は父のことを想像するとみんなを守れるならどんなことでもやり遂げる決心がついた。城崎は溜息をつき、
「だからここに連れてきたのよ。」
ガコン!・・・とどこからか音がすると廃墟の床がまるでエレベーターのように下がってゆく。エレベーターが下がりきったところはまるで別世界だった。奥には岩山や廃墟の建物、広がる草原にスケートリング、格闘場等がきっちり区分けされている空間があった。そして目の前には俺を見つめる個性が強い四人組の人達が立っていた。全員闘志を宿したような眼をしている。そこには学校では見かけなかった成瀬 南の姿もあった。俺は彼女がなぜそこにいるかを理解することが出来ずにいたが、全員の体の特徴から察するに彼女も彼らと同じような能力を持っているものなのであろうと不思議と納得した。城崎はまず一番目立つ人物から解説を始めた。
「紹介しましょう。彼の名前はバーニング・フレイム。能力は炎上。炎を媒体とした攻撃、防御、飛行が可能。近距離から中距離の格闘を得意とするこの隊の副隊長を務める暑苦しい男よ。」
背中とふくらはぎに赤い炎を纏っている暑苦しそうな男は暑苦しい顔をしながら暑苦しい挨拶をしてきた。
「よお少年!見たところ高校生か‼くぅ~青い!青いねぇ‼これは燃やしがいがありそうだぜぇ‼」
男の炎が一気に強くなる。城崎は溜息をつき、隣にいる忍者のような姿をした男の紹介を始めた。
「次にシャドウ・キャプチャー。彼は主に暗闇の偵察、暗殺、それらと共に闇を媒体とした標的の捕縛を得意としているエクストライカーよ。」
エクストライカーという言葉はどうやら能力を持っている人間のことを刺しているようだった。さっきの男とは正反対に落ち着いている男は深々と礼をした。
「わざわざ説明する手間が省けた。かたじけない。ここに来たからには少年、規則を重んじ、皆の調和を・・・」
ニコニコしている南が話を遮る形で元気よく挨拶する。
「はいは~い!私の能力は氷雪!相手を凍らせたり氷の槍を作れるよ!これからよろしく。」
城崎はこの独特なノリに慣れているようだ。淡々と次の帯刀している制服を着た少女の紹介を続ける。
「彼女は刀を使った抜刀術を得意とするエクストライカー。ブラッド・チェリー。切ることによって傷口から生じた血を操る事のできる能力よ。主に私と一緒に事務作業をしているわ。」
制服の少女は俺に興味はない、退屈だ。と主張するように左下の床を見てただ無言で佇ずんでいた。
「・・・」
城崎はやっと終わったかと思ったのかため息をつき、最後に自身の能力について説明した。
「私の能力は反発。バインド・マイト。物質が移動する限りその物質を二倍の速度で跳ね返すことのできたり、血流の流れを早くして身体能力の底上げをすることができる能力よ。」
俺はエクストライカーの能力を全て聞き終えた後、この世界にはこんなすごい能力を持った人達がいるのか。と感心した。説明が終わるや否や、バーニング・フレイムは低い声でぼそりとつぶやいた。
「堅苦しい能力の説明がやっと終わったな・・・さあ始めようか、少年。」
始める?何を?といった感じで俺は首を斜めにした。次の瞬間エクストライカー全員がとびかかってきた。
「入隊試験だ!行くぞ貴様らぁ!」
予想外の入隊の洗礼に俺は叫んだ。
「ええぇぇぇえぇ‼」
第二章 仕返しと洗礼 次回続
炎の男。バーニング・フレイムに鬼の修業を積まされる黒瀬 如蓮。地獄の修業を経て、早一か月。
如蓮は初任務を任される。その内容はとある地方の森で矮小者が発見されたと報告。これを殲滅せよとのことだった。お目付け役兼教育係の城崎 未来と氷雪の能力を持つ成瀬 南は現場へ急行するが
そこにいたのは三匹の矮小者の他に二人の未知なるエクストライカーだった‼黒瀬一行を見つけるにあたり、二人組は攻撃を仕掛けてきた‼いったい何の能力を持っているのか。いったい何が目的なのか‼
次回 第三章 修行と初任務‼
次回も絶対、見てくれよな‼