6話
見渡す限りの平野が広がっている草原。草原で目立つ色のアイテムはウルフ達にはすぐに見つかる。七色虫で染色されたアイテムは見つかりにくいように魔力の波長を変えて擬態する。ボクはまばらに生えている木に登りブルーファングシルバーウルフの群れを確認する。
遠くにいるのを見つけた!まだこちらには気づいていないみたいでゆっくりくつろいでいる。ウルフ達はシルバーが3匹、ブラックは5匹いるな。
ブラックの弱点は・・・いつも通り心臓が弱点だな。
シルバーの方は・・・みんなバラバラで腎臓、肝臓、胃か。
しかもシルバーはどれもみな同じ体格で見分けがつきにくい。希少種相手となると弱点を徹底的に攻めないと勝てないのに、見分けがつかないのであれば攻めあぐねる事になる。
このまま帰って報告するのは簡単だ。だがこのままでいいのか・・・どうする・・・
何か出来る事はないか考えながら役に立ちそうなアイテムがないかアイテム収納袋をゴソゴソ探りだす。薬草、毒消し草、食料・・・急いできたから山で採取されたアイテムもそのままだな・・・ブルームーンハニー、七色虫・・・七色虫は使えるかも。
魔力の波長によって色が変わる七色虫。染料にも使える虫ならこれを使ってマーキングしてみるか・・・しかし群れを相手に接近戦はリスクがありすぎる。
どうする・・・
ボクは左腕に装備してあるアダマン鯛のウロコの盾をじっと見つめる。
勇者マイヤならどうする・・・
よし、やるしかないな。だが群れを相手にこのままだと心許ない。
ボクは予備の盾をアイテム収納袋から取り出す。
予備の盾はアダマン鯛のウロコの盾よりは防御力は劣るが軽くて扱いやすい盾、スカイリクガメの甲羅の盾を右腕に装備する。
初めてだな両腕に盾を装備するのは・・・でもこれだけやれば群れを相手に接近戦をしても大丈夫だろう。
右手の中に七色虫を握りしめてブルーファングシルバーウルフの群れの元に近づくと、ウルフ達もこちらに気がついた。
隊列を組んで襲いかかってくる5匹のブラックウルフ。5匹の連続攻撃だけど、所詮はBランクの魔物だ。
アダマン鯛のウロコの盾で軽く受け流す。
攻めても攻めても攻めきれないブラックウルフ達に怒りを覚えたのか3匹のシルバーウルフが動き出した。
やっと主役の登場か。
ボクは右手の七色虫をギュッと握り潰した。
まず1匹のシルバーウルフが動き出す。弱点は腎臓。
噛みつき攻撃してくるシルバーウルフをアダマン鯛のウロコの盾で受け止め、握り潰した七色虫の右手を弱点の腎臓の部分に擦り付ける。
腎臓の部分にはくっきりと色がついている。マーキング作戦は成功だな。
喜びも束の間に襲いかかってくる残り2匹のシルバーウルフ。希少種のブルーファングシルバーウルフのランクはAランク。その攻撃はやはり重い一撃で3匹のシルバーウルフの攻撃は両腕の盾で捌くので精一杯で七色虫のマーキングをする暇もない。
逃げるのは簡単だがこのままだと埒があかない。せめてもう1匹だけでもマーキングはしたい・・・
そんな事を考えながらシルバーウルフ達の攻撃を受け止め続けていると、ある感覚におそわれる。
これはレベルアップする前におそわれる感覚だ・・・だが盾術はこの前レベル4に上がったばかりだし、鑑定スキルは使い出して5年しか経っていないから、今レベルアップするとは考えられない。となるとこの感覚は・・・二刀流スキルなのか・・・
二刀流スキルはボクにとって死にスキルだとばかり思っていた・・・まさか・・・盾を二つ装備したからなのか・・・
そしてその時は訪れた。
ボクの体に電気が走る。二刀流スキルがレベルアップ
した。その途端にシルバーウルフの攻撃が軽くなる。二刀流スキルがレベル2になった事によって盾術スキルの効果が2倍になったのだ。
レベル1の時では1.5倍の効果があったのだがウルフ系の魔物とは今まで戦った事がなかったから、ウルフの攻撃の重さはわからなかった。クマの一撃と比べるのもおかしな話になるし。
こうなると話は変わってくる。軽くなったシルバーウルフの攻撃を受け流し、マーキングを素早く行った。
先遣調査の役目はこれで終わった、後は逃げるだけ。ボクは木に飛び移り、風魔法を使いギルドまで逃げ帰った。
ギルドに戻ったボクはギルドマスターに報告する。
「ブルーファングシルバーウルフは3匹、ブラックウルフは5匹いました。ブラックウルフの方の弱点はいつも通り心臓で、シルバーウルフの方はそれぞれバラバラで腎臓、肝臓、胃でした。シルバーウルフの個体は同じくらいの大きさで区別がつきにくいと思いましたので、七色虫によるマーキングをしておきました」
「ほう・・・七色虫によるマーキングですか・・・高級品でもある七色虫を使っていただきありがとうございます。それでは私は一度席を外させてもらいます」
ギルドマスターは急いで出ていき、冒険者達に指示を出していた。
ようやく一息つけたな・・・しかし盾の二刀流か・・・メインの盾はアダマン鯛のウロコ盾でいいとしてサブの盾はスカイリクガメの甲羅の盾だと大きいな・・・もう少し小さな盾を探さないといけないな。
数時間後、ブルーファングシルバーウルフの群れの討伐の報告が入った。冒険者に負傷者は出なかったみたいだ。
ギルドマスターがこちらに近づいてきた。
「ありがとうございました。ホクトさんのおかげで冒険者達も無事に討伐する事が出来ました。少しお話しもありますのでこの後食事に行きませんか?もちろん私の奢りです」
「ありがとうございます」
ブルーファングシルバーウルフの件も一件落着だ。




