30話
あーよく寝たなぁ。
昼過ぎに寝始めて起きたら夕方になっていた。
えっ、もうこんな時間なんだ、まだ間に合うかな。
ボクは急いで出かける準備をする。行き先は図書館だ。
図書館に着くと後1時間で閉めるからあまり長居しないようにと言われたので、早く目的の本を探すために図書館の管理人に聞く事にする。
「あの、すみません。龍天の拳の本はどこら辺にありますか?」
「あんたこんな時間に急いで来たと思ったら探している本は漫画本なのかい。呆れたねぇ。龍天の拳は1番奥の漫画コーナーの勇者列伝のところにありますよ」
「ありがとうございます」
ボクはイヒヒヒについて気になった事があった。そしてそれは伝説の勇者、リュウケンを元にした漫画、龍天の拳に描かれているのだ。
はるか昔に存在したといわれているリュウケンは魔術、打撃術、鑑定スキルを持った勇者。胸に7つの魔石を埋め込み、武器を使わず己の拳のみでドラゴンを討伐したという伝説が残されている。
気になったのはリュウケンの幼少期の頃の話。リュウケンは幼き頃から老師エンリュウの元で修行をしていた。その修行の一つに火の猿、カエンとの百人組手というモノがある。
そしてリュウケンはカエンとの百人組手に勝利して胸に一つ目の魔石を埋め込むという話があるのだ。
リュウケンの胸に埋め込まれた魔石とイヒヒヒの胸に埋め込まれたヒエイ石は何か繋がるような気がする。
一度ラオさんに聞いてみるとするか。
「ありがとうございました」
管理人に挨拶して図書館を後にする。
ギルドももう少ししたら閉まってしまうな。急いでギルドに向かおうとすると黒い服を身に纏った1人の老婆に呼び止められた。
「ちょっとそこの若いの、占いには興味はあるかい?」
「人並み程度に興味はありますが、今急いでいるのですみません」
ボクが行こうとすると老婆は話を続けてきた。
「そんなに時間は取らせないよ。【月を見たければ空を見上げよ】この言葉は知っていると思う。だけどアンタの場合は月より先に太陽を理解した方が今後の人生上手くいくよ」
「どういう意味ですか?」
「龍神様のご縁があるのであれば、再び会えるからその時にでも説明するよ。急いでる時に声を掛けてすまなかったねぇ。占いのお金はけっこうだよ」
「ありがとうございました」
ボクは急いでギルドに向かい始めた。
太陽を理解するって何なんだろ・・・
ギルドに着いたボクは急いでラオさんのところに向かった。
「こんな時間にどうしましたか?」
「イヒヒヒについて気になった事があるんですけど、ラオさんは龍天の拳をご存知ですか?」
「えぇ、もちろん知っていますよ。私のラオという名前はリュウケンの最強のライバルであるトラオーから取っていますから」
「そうだったんですか!トラオーは魔術、打撃術、交渉術の上位スキルともいわれるユニークスキル、読心術を持つ勇者。観察眼で現在と過去を見て未来を読むリュウケンと相手の心を読むトラオーとの戦いは1番面白いところです!!」
「たしかにそうですが、今は龍天の拳の話ではなくイヒヒヒの話をしましょう」
こんな身近に龍天の拳の話が出来る人がいると思っていなかったため、つい熱くなってしまった・・・
「すみません」
そしてラオさんにリュウケンの幼少期の頃の話をした。
「そう言われてみればたしかに似ていますね。そしてリュウケンは老年期には表舞台から姿を消して国王のために裏の世界の忍者となった。リュウケンの最後は名前を変えて幼少期を過ごした山で余生を過ごしたともあります」
うんうん
「リュウケンは忍者となった時は火の魔術を多用していたため火影と呼ばれていました。ヒエイ石は火の影の石と書きます。ここも繋がってくると思いますね」
「おーーー、たしかにそうですね」
なんだかいろんな事が繋がってきてテンションが上がってくる。
「ちなみにですが、この時のリュウケンの忍者の活躍がギルドの先遣調査の元になったという話はご存知ですか?」
えっ・・・知らないよ・・・でも大好きなリュウケンが今の先遣調査の仕事に繋がっているのはなんだか嬉しいな・・・
「その顔は知らないみたいですね。とりあえず私は火の猿、カエンについても調べてみたいと思います。わざわざありがとうございました。いつか龍天の拳についてゆっくりと話出来たらいいですね」
「はい!!!」
再びギルド宿舎の部屋に戻ってきたがテンションが上がっているからまだまだ寝られそうにないな。
しかしラオさんの名前がトラオーから来ていたというのは驚きだ。たまに心を読まれているのかなって思うのはラオさんもきっとトラオーの読心術を意識しているからなんだな・・・そういえばラオさんって何のスキルを持っているんだろ・・・




