25話
なんでこんな事になったのだろうか・・・
今ボクは鍛治勇者のゼロさんと一緒に討伐したマサカリカツイダゴールドベアをギルドに持ち込みしてる。
ラオさん、受付の人、ギルドにいた冒険者達はマサカリカツイダゴールドベアの討伐に大いに盛り上がっている。ただしゼロさんだけは浮かない顔をしている。
なんでこんな事になったのだろうか・・・
〜〜〜
時を遡る事2時間ほど前になる。ボクはゼロさんと一緒にマサカリカツイダゴールドベアの討伐をしにマサカリ山に来ていた。
「もう少しでマサカリカツイダゴールドベアと遭遇します。準備はいいですか?」
「オレは問題ない。それよりもホクトさんに言っておきたい事がある」
このタイミングでどうしたんだろう・・・
「同じ二刀流の使い手として二刀流の極意を教えておこうと思う。二刀流の極意はただ2つ剣や盾を持つだけではないという事。野球でいうならピッチャーとバッターの二刀流というように違うモノ同士が1つに存在する事で最高の存在になるという事だ」
ボクでいうところの鑑定眼と盾術の事だな。
「オレでいうならば剣術と鍛治がそれにあたる。剣術と鍛治のダブルスキル持ちが作る剣は剣術のスキルによって剣の攻撃力が上がるのは知られているが、オレの作る剣は二刀流の相乗効果もあってさらに攻撃力が上がっているんだ」
鑑定眼と盾術の相乗効果か・・・
「これを聞いてホクトさんにも何か思うところはあると思う。極意はすぐに掴めるものではないと思うが頑張ってくれ」
「わかりました」
ボクは冒険者になった時に最強のタンカーとは一体どういうタンカーなのだろうか考えていた事があった。
よくいわれるのは防御型のタンカーと回避型のタンカーだ。
防御型のタンカーは盾術スキルを持っている人で相手の攻撃を受ける事でタンカーとして活躍する。他にも盾術スキルのハイパーガードやウルトラガードでタイガーイーグルの使うフェザーレインやドラゴンのブレスなどのような全体攻撃からパーティーのみんなを守る役割もある。リスクとしては攻撃を受ける事によって防具の消耗による経費がかかる事が考えられる。
回避型のタンカーは鑑定眼を使い、相手の攻撃を読んで躱して相手を翻弄する事でタンカーとして活躍する。攻撃を躱すので防具の消耗による経費はかからないが、攻撃を避けれなかった時のリスクは大きい。もう一つ回避型のタンカーの特徴としては回避した際に現れる相手の隙を狙ってのカウンター攻撃を弱点に仕掛けれるのも大きな特徴だ。
盾有りのタンカーと盾無しのタンカー、どちらが最強のタンカーの議論は冒険者の間ではよくされる。
ボクはどちらのスキルも持っているから特にその事に関して考える事は多かった。以前パーティーを組んでいた時はマイヤとセイヤのスキル構成を考えてボクは防御型のタンカーで行く事を決めた。
鍛治勇者のゼロさんのスキル構成を見ればボクは防御型のタンカーの方がいいのだろう・・・でもボクの考える最強のタンカーは盾有りの防御型タンカーではない・・・盾有りの盾無しの回避型タンカーだ。
盾有りの盾無し・・・これは矛盾した話だ。イヤ、無盾といった方がいいのだろう。
盾無しの回避型の場合、相手の攻撃を避ける際にどうしても緊張感から筋肉が強張って一瞬反応が遅くなる時がある。それは相手が強敵であればあるほど筋肉の硬直は現れる。その緊張を無くす策としてボクは盾を持つ回避型タンカーを考えた。盾を持っていれば攻撃を回避出来なかった場合でも受け止める事が出来るという安心感から緊張を緩和出来る。
そしてもう一つ、観察眼を使う回避型だから出来るカウンター攻撃。今までのボクは回避してカウンター攻撃としてマーキングをしていた。
観察眼がなければ弱点を見る事が出来ない。だから弱点にマーキングをしているがマーキングは目立つように点ではなく面でマーキングしている。本来弱点は点で見えている。それは龍点穴と言われている魔物の弱点。
もちろん相手も動いているからその龍点穴に正確に攻撃するのは難しい。だがその龍点穴に正確に一撃を決める事が出来るのであればどんな相手でも一撃で倒せる事が出来ると言われいる。
ボクの目指す最強のタンカーは防御しながら回避して攻撃も出来るタンカー。
勇者とパーティーを組む以上、最強を目指していかなければいけない。よし頑張るぞ。
「ゼロさん、マサカリカツイダゴールドベアが見えてきました。まずはボクが先に行ってマサカリカツイダゴールドベアの攻撃を受けますので、その隙に攻撃を仕掛けてください」
「わかった。もう一つホクトさんに言っておきたい事がある。【月を見たければ空を見上げよ】」
この言葉は冒険者として上を目指したければ月を理解しろと言われている言葉だ。刹那の時間に3回突きを放つ剣術の奥義の三日月はこの言葉から生まれた奥義でもある。
ボクはこの言葉を聞いていつも夜に月を眺めていた時を思い出す。そしてボクの名前のホクトの由来でもある北斗七星もボクはいつも見ていた。ボクには北斗七星のあの形はいつも龍に見えていた。天に浮かぶ龍。
この時、ボクは何か極意を掴んだ気がした。
「それではホクト行きまーーす」
マサカリカツイダゴールドベアはこちらに気づき右腕を振り上げる。
最大限の集中を持ってこの攻撃を受け流す・・・イヤ、受けないで流す。
「ホクト流回避術・龍天の無盾」
マサカリカツイダゴールドベアの振り下ろしを盾に当たるか当たらないかのギリギリのところで回避する。
マサカリカツイダゴールドベアは盾で受け止められると思っているのに当たった感触がないため戸惑っている。
そのわずかな隙に弱点の龍点穴に斧熊の短剣を突き刺した。
その突きは綺麗に龍点穴に決まりマサカリカツイダゴールドベアは動かなくなってしまった。
ま、まさかボクが倒すなんて・・・
ふと気づくとゼロさんはボッーと立ち尽くしていた。




