16話
再びアラタさんとマサカリ山に来ていた。本日二度目という事もありもうじき日が暮れるような時間になっていた。
「急がないと暗くなるな。夜の山はさすがに危険だぞ」
「わかりました。七色サーモンは七合目に多くいます。案内しますの付いてきてください」
「さすがに俺だってAランク冒険者だ。遅れはしないから全速力でもいいぞ」
そこまでいうならサクッと終わらせて帰りたいから、全開で行くか。さっきもマサカリカツイダベアにたどり着くのかなり早かったから問題ないでしょう。
全速力で走っていると五合目まではアラタさんは遅れずに着いてきていた。だがしかし、五合目より上はマサカリカツイダベアが出没するエリア。その緊張感もあってか徐々に遅れ始めるアラタさん。
七合目まで来るとほとんど姿が見えない感じになったので追いつくまで七色虫の採取を始める事にした。
「まいったぜ、俺が追いつけないとはな。ところでさっきからホクトさんは何をしているんだい?」
七色虫は鑑定眼を使わないと見つけられない虫だから、鑑定眼を持っていない冒険者から見たらただただ草を漁ってるようにしか見えない。
「マーキングに使う七色虫という虫を集めていました」
「これが噂の七色虫か・・・って言ってもこの暗さだと見えないんだけどな」
もうだいぶ日も落ちかけてきている。早くしないといつマサカリカツイダベアに襲われても仕方ない時間だ。アラタさんも追いついたし、急いで川のあるところまで向かおう。
七色サーモンは姿が見にくい魚だが鑑定眼を使わなくても見える魚だ。しかしそれは日中での話で日も暮れかけているこの時間であれば、七色サーモンの姿はほぼ何も見えない。現にアラタさんは結構な数の七色サーモンがいてもどこにいるのかわかっていない様子。
ボクは腰に差している青の牙の短剣を取り出して、七色サーモンを獲り始めようとする。
「ホクトさん、青の牙じゃなくて青銀の牙を使った方がいいぞ」
えっ、何で青銀の牙を持っている事を知っているの?
「何ボサッとしているんだ。青銀の牙をお前さんに渡したのは俺だぞ」
あっ、そういう事だったのね。じゃあ問題ないから使わさせてもらうとするか。本当はマイヤに渡すまでは使いたくなかったんだけどね・・・剣術スキルもないボクの実力だと捕獲に時間がかかり、青の牙の短剣だと味が落ちてしまう。
ボクは青の牙の短剣を腰に戻し、アイテム収納袋から
青銀の牙の短剣を取り出した。夕暮れの光でも薄い青が幻想的に綺麗に光る青銀の牙。
ボクは川に足を踏み入れて七色サーモンの弱点に青銀の牙の短剣を突き刺し、捕獲は完了。
ホッとひと息した途端に現れたマサカリカツイダベア。アラタさんもちょっと気を抜いた時だったため、ちょっとの隙を与えてしまったがそこはAランク冒険者。瞬時に体制を立て直し剣を抜いた。
「今ここで戦うのは危険だ。ホクトさん、すぐに逃げるぞ」
「マサカリカツイダベアはなかなか見つからないからマーキングだけでもいいですか?」
ボクは左腕のアダマン鯛のウロコの盾と右腕の果肉カニの甲羅の盾を構える。
「何呑気な事言っているんだ!死ぬぞ」
そんなやり取りを見て、ソロソロオソッチャウゾと言わんばかりの勢いでゆっくりとマサカリカツイダベアが動き出す。
「ボクなら大丈夫ですよ」
ボクはニヤリと笑い、鑑定眼・心眼を使いマサカリカツイダベアの過去を見る。
マサカリカツイダベア同士が争っているシーンが見える。まずは右腕を振り上げてと見せかけて左アッパー
で一撃を喰らわす。その一撃で相手がよろめいたところで出来た隙に右の強烈な振り下ろし。これで相手は動かなくなった。
このマサカリカツイダベアはなかなか強い個体だな。そしてすかさず鑑定眼・開眼で弱点を見る。弱点は右腕。
ならば左のアッパーを受け止めてからの右の強烈な一撃を受け流し、その隙にマーキングだな。
そしてマサカリカツイダベアがボクとの距離を徐々に縮めてくる。
イクゾッ
一気に距離を詰めてきたマサカリカツイダベアは右腕を振り上げた。
その右腕の動きに何も反応をしないでいたら、アラタさんはやられると思ったのか加勢しようとしたところでボクは左のアッパーを受け止めた。
アラタさんは驚いていたが、マサカリカツイダベアはもっと驚いていた。だがそのまま振り上げた右腕を振り下ろしたところで、ボクはそれを受け流し左側に抜けて右腕にマーキングを完了。
「マーキングは終わりました。撤退しましょう」
鮮やかすぎた一連の流れにあっけに取られていたアラタさんだったが、状況を瞬時に理解して一緒に撤退して、ギルドに戻る事となった。
えっーーーと、アラタさん結構隙ありすぎじゃね?と思った今日一日だった。




