11話
ヤバイカザンの街に着くと始めにギルドの南支部に向かった。
ヤバイカザンの街は広く、東西南北に支部があり中央に本部がある。南支部の管理地には3つの山があり、その2つの山には特Aランクの魔物とBランクの魔物しか出ないそうだ。そして残りの1つの山にはSランクの魔物、烈火ドラゴンが住む山がある。
だからこの街には鍛治勇者がいる。勇者への依頼料はAランク冒険者の約10倍。ドラゴン討伐はともかく、残りの山の依頼も鍛治勇者が担当して討伐している。そのため南支部はいつも赤字で赤字解消のためギルドマスターのラオさんが呼ばれた。
ラオさんはなんでも前の街の最後の1か月異常なくらいの黒字を出した実績を買われて呼ばれたそうだ。
特Aランクの魔物はダブルAやトリプルAランクの魔物を指し、Aランク冒険者のパーティーが2つや3つ必要という事だそうだ。
特Aランクの魔物ともなると偽装弱点というものをするそうで、偽装弱点は遠くから鑑定眼で見ると弱点がいくつもあるように見え、近くまで行かないと見破れない。
かなり危険なため近くまで行けない先遣調査員。そのため冒険者には弱点がいくつも説明される。だから特Aランクの魔物の討伐にはAランクの冒険者パーティーが2つも3つも必要というわけなのだ。
もちろん凶暴性もAランクより上だからいくらパーティーが2つも3つもあっても常に危険が付き纏う。
そんな魔物討伐に冒険者達は行きたがらず、やがて鍛治勇者が特Aランクの魔物も担当するようになったそうだ。
こんな話を聞いていたらあっという間に南支部にたどり着く。
ラオさんとアラタさんと共に南支部に入ると、前任の支部長が出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。護衛の方はありがとうございました。それではラオさん、こちらへどうぞ」
前任の支部長にはボクも護衛だと思われたようだ。
「ちょっと待ってください。ホクトさんは私について来てください」
「は、はい」
前任の支部長はお前誰だよっていう顔をしながらラオさんとボクを会議室に通した。
会議室に通されると、そこには部長職の人や先遣調査員も並んで座っていた。
そしてラオさんの支部長就任の挨拶が始まる。
「この度、南支部長に就任したラオと申します。そしてこちらはギルド職員ではありませんが、先遣調査員として働いてもらう事になるホクトさんです。みなさんよろしくお願いします」
ラオさんが頭を下げてお辞儀をしたので、ボクも一緒になってお辞儀をする。
顔を上げると2人の先遣調査員が不満そうな顔をしている。
「先遣調査員のシオさんとスーさん、何か言いたそうですがいかがなさいましたか?」
「すでに名前を覚えていただきありがとうございます。南支部には3人も先遣調査員は必要ないと思うのですが、どういう事か説明してもらえると助かります」
「彼は特Aランク専任の先遣調査員として活躍してもらいます。私はここのギルドの赤字を解消するために呼ばれました。そのための秘策が彼になります。なのでお2人はこれからBランクの担当になってもらいます。これにご不満がある場合は彼と同じように偽装弱点を見破っての調査をお願いする事になります」
「・・・」
さすがに特Aランクの魔物相手に接近戦は出来るわけないよな・・・っておい!そんな事何も聞いてなかったんだけど・・・まぁマーキングの事考えると必ず接近戦になるんだから当たり前か。
挨拶も終わり、支部長のラオさんに呼ばれた。
「私はこれから一週間程度は引き継ぎもあります。その間、ホクトさんは山の下見に行ってもらいたいです。明日からマサカリカツイダベアが主の山、マサカリ山に行ってください」
「はい」
マサカリカツイダベアはダブルAランクの魔物、右手の爪の1つが大きな斧の形をしている事からこの名前がついた。だけど注意するのは右手の爪だけじゃない。左手の爪も小ぶりだが斧の形をしている。
この斧の形をした爪は最高ランクの剣にもなる。剣術スキルを持つ者にとっては憧れの武器の1つでもあるため、常に需要はあるが供給が追いつかないのが現状。
「マサカリ山の下見かぁ」
明日からの探索に備えていろいろ準備しないといけないな。まずは道具屋に行って、次に食料調達もしないとな。
ギルドを出ようとするとアラタさんに引き止められた。
「ホクトさん、ちょっと頼みがあるんだがいいか?」
Aランク冒険者のアラタさんがボクに頼みってなんだろう?
「ギルドには後で正式に調査依頼を出すんだが、マサカリカツイダベアの先遣調査をしてもらえないだろうか?下見に行くんだろ?」
先程の呟きを聞かれていたみたいだ。下見に行った際には一度手合わせをする予定だったからボクはアラタさんのお願いを了承して道具屋に向かった。




