朝顔の時計。
朝顔の咲くところを見たことがありますか?
実は、自分はあるのです。
小学生の頃。
学校のベランダで育てた朝顔。
そして、夏休み中は家に持ちかえり、そのあとは、家で、朝顔を育てました。
(よくある、夏休みの観察研究です)
朝顔を持って帰って来たとき、妹が「アサガオが開くところが見たい」と言い出します。
好奇心が旺盛な妹です。
朝早く起きるのが得意な自分は、妹のために起きようと、きめました。
「明日、いっしょに起きて見てみようね」
明日の朝、起きるのがまちどうしく、なりました。
しかし、朝顔の目覚めは見たことがなかったので、何時に起きたらいいのか、まったく見当がつきません。
適当に、朝4時くらいに起きようと思いました。
朝、四時に起きました。
まだ夜の気配が残る街。
(夏なので、朝4時とはいえ、割と薄明かるかった)
けれども、すでに朝顔はひらいていました。
「アサガオって、とっても早起きなんだなあ。今度は、アサガオに負けないくらい早く起きよう」
次の朝、三時に起きました。
星空。
外はまだ真っ暗です。
夏の夜の空気は、
澄んでいて、湿っていて、
静かで、遠くで音がして、
月と星と黒い空が綺麗で、
それでいて、何かが潜んでいそうで、
子供心に、なにか、いつもとは違う世界の気配が、ちょっと、怖かった記憶があります。
草木も眠っている丑三つ時。
そんな時間に、妹と二人だけで、暗い庭に出るのは、心細かったので、 祖母を巻き込み、共に、庭へ見に行きました。
どきどきしながら、朝顔の置いてある庭をのぞきにいきました。
まだ、朝顔は起きていませんでした。
じっくりと朝顔と見ていると、花がひらいていくのが分かります。
まるで、赤ちゃんが小さなしゃっくりをしているように、
時々ピクッと動きながらひらいていきます。
時間を縮めなくてもわかるのです!
確かに、動いているのです。
植物が動くと知った瞬間です。
貴重な経験。
「なんで、太陽も出ていないのに朝に開くのかな」
妹は言いました。
「アサガオは、時計をもっているんだよ」
自分は、そう答えました。
「そうだね、まだ明るくならないのにひらくから、アサガオはぜったいに時計を持ってるよ」
妹と、こんなような会話をしたことがあります。
これ以来、夏は、日の沈んだ夜の世界に、ときめきます。
空気、音、匂い、気配……
夏の夜は、不思議が眠っています。
枕草子ではありませんが、夏は夜です。
月もいいし、闇も良い。朝顔も咲く。
そして、この日の出来事のせいか、
朝顔を見ると、いつも、このことを思い出します。
朝顔は、時計を持っている……と。
後にも先にも、植物を30分、40分と長い時間、凝視したのは、あの時だけかも……
これは、実は、小学生の時に書いたもの。
夏休みの宿題か何かで書いたもの。
なぜか、その作文用紙が保管してあったので、多少書き直して、ほぼそのまま投稿(笑)




