いたずら好きの猫
里の中を連れられ歩いているとはたとオサが振り返って言う
「っと、そういや言ってなかったな。
この里に来たのはお前が初めてってわけじゃあない。
すでに何人かここに住んでんだ。挨拶回りでもしていくか?」
「いいのか?」
思いがけないところでいろんな魔物から話を聞けるいい機会を得れたのではなかろうか。
「まぁ、いきなり押しかけてもなんだし、他のやつにも話を通しといてやる。」
「ありがたい。でもその前に。」
振り返り飛来物を受け止める。
飛んできたものは水風船のようなもので、あたればびしょぬれになっただろうということはわかる。
「ほー…。受け止めるか。さすが勇者だ。」
とオサはこちらを楽しそうに眺める。
そして俺の手からその水風船を取り上げると、飛んできた方向へと投げ返した。
オサの投げた水風船はまっすぐと飛んでいき。
「ッだ!」
木の上から呆然とこちらを見ていた人影に直撃した。
人影はそのまま木から足を滑らせ落下する。
「…て、あぶな!」
と駆け寄ろうとした私をオサが制止する。
「まぁみてろって。」
とそれは空中で綺麗に体を反転させ着地する。その後ろにはしっぽが2本揺らめいていた。
「すごいもんだろ?あれは猫又族のオスだ。
いたずら好きだが隠れるのがうまくてな?手を焼かされてるんだよ。」
「さとおさ!なにもあんなにおもいっきりぶつけなくたっていいだろ!?」
不服そうな顔でオサをにらむ男の子。人間でいうと12歳くらいだろうか。
「馬鹿。やっていいのはやられる覚悟を持った奴だけだっつの。」
と言ってニヤニヤと男の子を見下ろした。何とも大人げない。
子供はオサに文句を言うのをあきらめたのかこちらへと向き直す。
「だいたいなんであれがとれるんだよ!こっちなんていちどもみなかったのに!」
「当てられるわけないだろ。そいつは勇者だぞ?」
「ゆうしゃ!?」
というと一転キラキラとした目でこちらを見つめてくる。
「あのせかいいちつよいおうさまにかったっていうゆうしゃ!?
へぇー、へぇぇーー!」
とその子はくるくると私の周りを回り始める。
「あんまつよそうじゃないんだね。おうさまみたいにおっきくてこわいひとだとおもってた。」
「見かけで他を判断するなってことだ。
てことで悪いな、勇者。そいつに少し付き合ってやってくれないか?
里のやつらに話をつけてきてやる。」
「あ、あぁ。わかった。
よろしく頼む。」
「さとおさー、またねー。」
そういってオサが去ったのを見送ってその子のほうに向きなおした。