魔物との協力関係
イノシシを引きずったオサに連れられ森を少し進む。すると、突然視界が開ける。
「ここだよ、うちの里の予定地。」
家が一つ、それなりに立派なのが立っていた。
「これは…すごいな。」
「意外だとでも言いたげだな?」
とじろりとオサはこちらをにらみつける。表情に出てしまったのだろうか。
「あぁ、すまない。正直驚いたよ。
私にとっては魔物がこれだけのことをできるというのは考えたことがなかったのでな。」
「へぇ。ま、前線に出るやつは知能の薄い種族やただの獣が多いらしいからな。
勇者のあったやつらにゃそういないかもな。」
「…そうなのか。」
改めて私は魔物というものを誤解しているのだと痛感した。魔物は言葉を使えず、知能も技術らしい技術もない。そう考えてきたが、それは一部に過ぎないのだろう。
「さて、俺たちはこれから里に住む仲間を探す。」
「仲間。」
「あぁ、お前の目的もいろんな奴に遭いたいって話だったろ?そのついでだよ。
俺が渡りをつけてやるよ。そのうえで強い奴をみつくろってくれ。
どうせなら強い里を作りたいんだ。俺だけじゃ力不足かもしれないからな。」
「なるほど。」
たしかにそれならwin-winの関係だ。こちらからお願いしたいくらいだ。
「それは助かる。こちらからもお願いする。」
「よし交渉成立だ。ま、すぐじゃないからしばらくはここで休んでくれ。
俺からいうことがあるとしたらたまに立ち合いをしてくれると退屈しないですむんだが?。」
「あぁ、ここまでしてもらえるんだ。手合わせくらいお安い御用さ。」
そうしてオサとの協力関係を築いた。オサの手を握りながら、魔王とも同じように対話ができたのではないかと少し暗い気持ちになった。