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勇者から翻訳者に転職します  作者: コバルトの狐
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転職の時

目の前に鏡がある。

映し出されるのは私の姿。

それは信頼。誰よりも強く誰よりも人のために戦った愛しい仲間の姿。

それは羨望。誰よりも前に立ち人々を鼓舞する勇ましき勇士の姿。

それは恐怖。勝てるはずのない戦場ですべてを葬り去った化物の姿。

それは悔恨。仲間に手をかけ父をも滅ぼした悪鬼羅刹の姿。

どれもがどれも私に向けられた感情。


ーーどこからか声が聞こえる。


では、あなたにとってあなたとは?

あなたは一体何者ですか?


鏡に自分の姿が映し出される。

見慣れた自分の姿のはずなのに、感情1つ読み取ることはできなかった。


誰かのためだけに生きたあなたにもう一度。

自分の意思に従う生き方を。

答えを探すはるかな旅を。

あなたのために与えましょう。


さぁ行きなさい。

あなたにあらゆるものと言葉を交わす力を。


鏡が消えると見上げるほどの大きな扉が視界を覆う。

開いていく扉にゆっくりと歩を進める。

後ろで扉の閉まる音を聞きながら。

光へと身を投じた。

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