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第1話 先生の異世界カタルシス

ドグラマグラ太郎先生が僕に彼の思いを語り始めた。





何か語らなければならない。


二〜三話でいいと思う。 


俺が書いているのは異世界小説じゃないという気分になる。


腹が立つような立たないような妙な気持になる。


しかし。


あやまるのは早計だと思う。


うっかりあやまったら書く事がなくなる。


折角水面に顔を出したところを又突き沈められる義務はない。


そういう気持ちは自分一人がトラックに轢かれたい奴だろう。


ほかの奴をトラックに轢かせまいとする気持ちだろう。


トラックになんか轢かれてもらわなくともいい。


自分一人で異世界を書くばかりだ。


◇ 


俺は本格異世界小説が書けない。


構想はあるが駄目だ。


エターナルエンドに突き進み次の連載を始める未来なら見える。


綺麗にまとめる未来が見えない。


急に10年後や30年後に飛んでまとめる事なら出来そうだ。


あるいは夢オチになら出来そうだ。


しかしそれでは書いている自分にカタルシスを与える事が出来ない。


◇ 


本格異世界物を書く事の難しさが身に泌みる。


その癖読むのは本格異世界物もしくは本格異世界味の深いものが好きである。


大好きである。


だから読者として本格異世界物に対する註文は相当持っている。


むろん無理な註文も多いに違いない。


それでも自分の註文に嵌まった本格異世界小説をあこがれ望んでいる。


このあこがれは決して人後に落ちないつもりである。


◇ 


読者を弄ぶ異世界小説は嫌いである。


異世界小説を書くなら正々堂々とだ。


玄関からお座敷から台所から雪隠まで見せてまわらなくてはいけない。


しかも退屈させないように非常な興味を持たして案内して行かなければならない。


この点が本格異世界物の一番骨の折れどころではあるまいか。



トラックに人が轢かれたような転生をしたのはどうも面白くない。


ところが異世界物を書くとそんな手法を用いなければ向うへ素直に行けないのだ。


うんざりする。



日常に行数を取られるのも有難くない。


日常と戦闘とが交差する時だ。


気づかない間にかちりと役目を果たした剣が鞘にしまわれる時だ。


本格異世界物の痛快味が忽然口内に広がり鼻腔に突き抜ける。


味を惜しむかのように匂いを惜しむかのように自分の身体に長くくゆらせる。


この感覚が異世界小説の独特の生命であると思って私は心から歓喜する。



ステータス描写無用を叫ぶ者がある。


チートを爽快感に使う作者がある。


どちらも両立し得ると私は思う。


しかもどちらも作家的無良心に陥り易いようである。



異世界小説の神秘は究極するところ異世界であってはいけないと思う。


2÷2=1であり2×2=4でなければ結局感心出来ない事になるようである。


1=X/X=1×1=0/0=8÷8なんていうのを使うのは駄目である。


√(-1)を使う時に本格異世界小説の価値は0となる。


◇ 


作者が一度読んだものを有意識にも無意識にも真似たものは駄目だ。


どんなに口ざわりがよくても味が落ちるから直ぐにわかる。


必ず自分の体験から汲んだ水でなければいけないようである。


他人の擬似体感の水で作った酒は決して酔わない。


酔えば悪酔いをする。



今までは異世界即興味と思っていた。


異世界即話術とも考えていたがこれは違うようである。


笑われても仕方がない。 


全篇の異世界ストーリーを一挙に現世界にするのが本当の異世界だ。


異世界的話術で異世界を作るのはインチキ話術だ。


◇ 


異世界小説は日常到る処に在る。


クライマックスでは。


俺の考える最強のカタルシスとは。


諸君がそこで呼吸している此処こそが既に驚くべき異世界なのだ。


ぐうの音も出ない論法でこの世界と異世界が1つになるのだ。


諸君こそが既にトラックであり転生者であり転移者でなければならぬ。


ただ作者が読者がそこまで妄想していないだけの話である。



すこし頭が変になって来た。


これ以上話すといよいよ笑われそうだからやめる。

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