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十二話 ねず子、弁当作るってよ

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 


そんなこんなで、騎乗位おっぱい(パワーワード)のその後のお話です。




「うん、美味しい。根津さんって料理が上手だったんだね」

「上手だなんてそんな……。ただ母と一緒に料理をする機会が多くて、それで少し得意というだけの事ですから」

「そうなの? でも唐揚げとかかぼちゃの煮物とかすごく上手に出来てると思うけれど。特にこの卵焼きは、程よい甘さで僕好みの味だなあ」

「唐揚げも煮物も、母が昨日作った残り物をお弁当に詰めただけなので。卵焼きの方は、私が今朝作った物ですけれど……」

「なんだ。じゃあやっぱり料理上手なんだね。だってこんなに美味しいんだから」

 ケンケンのイケメンスマイルを間近で直視して、その対面に座っているねず子は、見るからに頬を紅潮させて、

「あ、ありがとうございます……」

 と、小さく頭を下げた。



 場所は学校──それも本来なら立ち入りを禁止にされている屋上だった。



 そこで俺達いつもの三人は、仲良くレジャーシートの上に座って弁当を食していた。

「でもまさか、こうして僕のためにお弁当を作ってもらえるとは思わなかったよ。本当にありがとう」

「い、いえ。剣斗先輩に相談に乗ってもらいたい事があったので、せめてそのお礼だけでもと思って作っただけですから……」

「読書感想文の件だっけ? うん。僕で良ければ、お弁当を食べ終えた時にでもいくらでも聞くよ。ていうかお礼なんてなくても、いつでも相談に乗ってあげたんだけどね。これでも僕、部長なんだから」

「そ、それは、言葉だけでなく、ちゃんとした形でお礼をした方がいいかと思いまして……」

 ケンケンの質問に、しどろもどろになりながら答えるねず子。まあその辺は、全部俺が考えた作戦だしなあ。

「それはそれとして……」

 と、それまで箸でご飯を突いていた手を止めて、ケンケンは横にいる俺へと胡乱に視線を向けた。



「なんでトラ、さっきからマスクをしながらお弁当を食べているの?」



 そう。

 今俺はマスクをしながら、いつも通り母親の作ったお弁当を食べていた。

「それ、面倒くさくない? わざわざご飯を口に運ぶ度にマスクをズラすなんてさ」

 ケンケンに当然とも言える疑問を投げられ、俺は一旦箸を弁当箱の上に置いてスマホを取り出した。

「なになに? 『慣れたらそうでもない』? まあ、トラがそれでいいなら僕は何も言わないけどさ。ていうか、なんでスマホ文字?」

【ちょっと風邪で喉をやられてな……】

「ここに来る前、普通に喋ってなかった?」

【間違えた。ここに来る途中で喉に矢を受けてしまってな……】

「それもう死んでるはずっていうか、僕と一緒に来たはずなのに、いつの間に矢なんて受けたの?」

【キューピットの矢だからな】

「キューピットの矢じゃあ、しょうがないね」

 理解力が半端ない親友だった。

 こういう余計な詮索をしないケンケン、しゅき♡

 まあ言わずがな、決してキューピットの矢のせいでマスクをしたわけではないのだが。

 俺がマスクをしなければならなくなった理由──それは先日の夜まで遡る。

 そんなわけで以下回想。ほわんほわんほわ〜ん。



 ☆★☆★



 ねず子の二度目の生ぱふぱふ(騎乗位バージョン)を堪能したその日の夜の事だった。

 学校にいる間にケンケンとねず子と三人で昼飯を食べる約束をした俺は、夕飯を食べ終えたあとにその事をメールで伝えてみると、数分としない内にねず子の方から電話が掛かってきた。

 なんでメールじゃなくて電話なのかと首を傾げつつも通話ボタンを押すと、開口一番に『ちょっとトラ先輩!』と叱声が飛んできた。

『いきなり明日なんて聞いてないんですけど! どうして前もって言ってくれなかったんですか!?』

「え? そりゃ早い方がいいかと思って。一応ケンケンにはお前の方から相談があるっていう態で約束を取り付けたんだが、ダメだったのか?」

『当たり前です! こっちだって準備が必要になるんですから! ああもうどうしよう。とりあえず今日の残り物と、あとで冷蔵庫の中身を確認して……』

「大変そうだなあ」

『だれのせいだと思ってるんですか!』

いぬいたくみってやつの仕業だな」

『いやトラ先輩のせいですよね!? トラ先輩が先走ったせいですよね!?』

「英語で言うとカウパーだな!」

『その先走りじゃないですから! ていうか下ネタ禁止っ!』

 え〜? 下ネタを言う事が俺の存在意義なのに〜?

「じゃあ、今の内にやめておくか? 相談の内容は気になるけど、初めて一緒にお昼を食べるから楽しみにしてるよとかなんとかケンケンが言ってたけど」

『……そこまで言われたら、もうやめられませんよ。何とかしてみます』

「別にそこまで気負う必要なくないか?」

 ベッドの上で仰向けになりながら、俺は言う。

「もうちょっと気楽にいけよ。弁当だって簡単な物で十分だろうし」

『もしかしたら、剣斗先輩におかずをあげる機会が来るかもしれないじゃないですか。いい加減な物は作れませんよ』

「……さっきからなんとなく思っていたが、ひょっとしてお前、いつも手作りで弁当を持参してるのか?」

「ええまあ。たまに母が作ったお弁当を持って行く時もありますけど」

「そうか……」

 少しだけ黙考して、そのあと俺はおもむろに口を開いた。



「だったらお前、明日ケンケンの分の弁当も作れ」




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