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十話 されど魔神は胸と踊る



 昼休み中にねず子からメールで呼び出され、指示通り弁当を食べ終えてすぐに体育館裏へと向かった俺。

 ちなみに、ケンケンは図書室に行ってしまった。いつもならこの時間はケンケンと駄弁だべっている事が多いので、なんか妙な気分になる。

 それはケンケンも同じだったようで、

「トラが昼休み中にどこかに行くなんて珍しいね。せっかくだし、僕は図書室にでも行こうかな。昼休みに一人で図書室に行くなんて滅多にないから、なんだか変な気分だけれど」

 とか別れ際に言っていた。

 きっとケンケンの事だし、今頃図書室で文芸作品でも読んでいるのだろう。俺だったら絶対美術コーナーに行って裸婦画集を探しちゃうね。次点で保健体育の本。

 閑話休題。

 なんやかんやで体育館の近くまでやって来たのだが、思っていたより人はおらず、ぶっちゃけ閑散としていた。てっきりもうちょっと人がいるものかと思っていたのに。

 まあでも、体育館ってあんまり清潔なイメージってしないもんな。特に夏場は汗が飛散するからちょっと臭かったりするし。

 だが逆に言えば、人が来ない分、後ろ暗い事をするにはもってこいの場所ではある。

 ははーん。さてはねず子の奴、俺を罠に嵌める気だな?

 甘い。甘いぞねず子よ。俺を罠に嵌めようなんて、五十六億七千万年早いわ! お釈迦様が再臨しちゃうぜ!

 謎はすべて解けた。もうなにも怖くない。

 そんな感じで意気軒昂と体育館裏に言ってみると、メールの通り、ねず子が体育館倉庫の扉付近で一人佇んでいた。

 よっしゃ! 先手必勝じゃ!



「ねず子! 観念しろっ!」

「ふぁ!? ト、トラ先輩!? 観念って何が!?」



 開口一番に叱声を飛ばした俺に、ねず子は動揺を露わに両目を剥いて当惑していた。

 このヤロー。しらばっくれやがって。こうなったらとことん追求してやる!

「お前のやった事はすべてまるっとお見通しだ! ここで俺を嵌めようとしているのはな! 一体どんな風に俺を嵌める気なんだ!? さっさと白状しろ!」

「ハ、ハメ……!? な、何を言い出してるんですかあなたは! ハメるとかイヤらしいっ!」

「ああん? 卑しいのはお前の方だろうが。誤魔化してないで、さっさと言え。どうやって俺を嵌める気だったんだ? 嵌める気満々だったんだろ!?」

「ひゃ!? さ、さっきからハメとかマンとかやめてくださいよ! 完全にセクハラですよ!?」

「は? 罠の正体を暴こうとしているだけなのに、なんでセクハラになるんだよ?」

「……? 罠?」

「おう。俺を罠に嵌めようとしてんだろ?」

「えっ」

「えっ」

「…………」

「…………」

「こほん。トラ先輩、今日私が体育館裏に呼び出したのはですね──」

「お前、なんか強引に話を逸らそうとしてないか?」

 しかも、何かピンクな妄想をしていたように思えてならないのだが?

「こ、細かい事はいいんです! だいたい、全部トラ先輩が悪いんですよ! いつもいつもエッチな事ばかり言うからっ!」

「逆ギレかよ! ん? エッチな事って、やっぱお前何か変な勘違いを──」

「だからそれはもういいですから! そもそもトラ先輩だって、私が罠を仕掛けているとか勝手な勘違いしてたじゃないですか!」

「日頃の行いのせいなんだよなあ」

「どの口が言いますか!」

「下の口だよ?」

「男なのに下の口なんてあるわけないでしょうが! って、私に何を言わせるんですかっ!?」

 ナニを言わせてるんだよなあ。

「はい! この話題終わり! 私がトラ先輩を体育館裏まで呼んだのは、こんなしょうもないやり取りをするためじゃないんですからね!?」

「じゃあ、なんで俺をここに呼んだんだ? ゴブリンか?」

「……なんでまた急にゴブリン?」

 用事と言えばゴブリンだからな。良いゴブリンは死んだゴブリンだけだ。

「そんなわけのわからない理由じゃありませんよ。剣斗先輩の件で相談したい事があったんです」

「なんだ、そっちか」

 まあでも、俺をわざわざこんなところまで呼び出す理由なんて、ケンケン以外にないか。

「つーか、それってメールじゃダメだったのか?」

「こういうのは、ちゃんと顔を合わせてからの方がいいかと思いまして。それにメールだと時間が掛かりそうな内容でもあったので」

 変なところで律儀な奴だなあ。

「ふーん。で、その相談って?」

「あ、はい。ほらこの間、剣斗先輩と一緒に連絡先を交換したじゃないですか」

「ああ。したな」

「それで連絡先も無事ゲットできた事ですし、もうワンステップ進みたいと言いますか、今度は剣斗先輩と一緒にお昼休みを過ごしたいと考えていまして……」

 恥ずかしそうにモジモジしながら俺の質問に答えるねず子。トイレに行きたいのかな?

「ねず子、トイレならこの近くにあるぞ?」

「いやトイレに行くのを我慢しているわけじゃありませんから! 好きな人の事を考えて照れていただけです!」

「じゃあ誰がトイレに行きたいんだよ!?」

「知りませんよ! そもそもトイレとか言い出したのはトラ先輩でしょう!?」

 ありゃ。そうだっけ? 最近どうも記憶力が悪くてなあ。その内一週間毎に記憶がリセットされるかもしれん。一週間フレンズかな?

「ほんとにもう。どうしてトラ先輩はこうも無意味に話を逸らせたがるんですか……」

「ライフワークだからな」

「なおさら性質たちが悪い……」

 ムスコの勃ちは良いけどね!

「とりあえず、話を戻しますよ?」

「だが断る!」

「戻させてくださいよ!? いつまでトイレの話を引っ張るつもりなんです!?」

「このまま最終話までトイレの話してようぜ!」

「嫌ですよそんな小説! 誰得なんですか!」

 一体誰が得をするのか、それは俺にもわからない。損得勘定ばかりで物事を決めちゃいけないって、ばっちゃが言ってた!

「兎にも角にも、剣斗先輩と一緒に昼食を食べたいんですよ! だからトラ先輩も一緒に来てくださいって相談をしたかったです!」

「あん? なんで俺まで付き合わきゃいけないんだよ? ケンケンと一緒に飯を食いたいなら、勝手に二人で食べたらいいだけだろうが」

「だ、だって、二人きりになるなんてまだ緊張しちゃいますし……」

 顔を赤らめながら答えるねず子。なるほど。それで俺という緩衝材が欲しかったわけか。

「別にいいですよね? 胸だって揉ませてあげたんですから」

「だが断る!」

「まさかの二度目!? どうしてですか!? 胸を揉ませたら私に協力するって約束したくせに!」

「確かに協力はすると言ったし、ケンケンと二人で昼飯を食べたいって言うなら、俺からケンケンに話してもいいけど、何でもかんでも行動を共にするとまでは言ってないぞ。だいいち、無制限で頼み事を聞くなんて約束をした覚えもないし」

「それ詐欺じゃないですか! 最低! 最低!」

「詐欺って言われてもなあ。そもそも詐欺って言うのなら、ケンケンに内緒で俺に協力させようとしている時点で、ケンケンを騙している事にならないか?」

「そ、それは一理あるかもしれませんけれど……」

 図星を突かれたと言わんばかりに、顔を逸らすねず子。

 ねず子自身、ケンケンの親友である俺を利用してまで恋を成就させようとしている事に、心のどこかで迷いがあったんだろうなあ。生意気な後輩ではあるけれど、根は素直で真面目な奴だし。

「……だったら、何をしたらまた私の頼み事を聞いてくれるんですか?」

「決まってるだろ?」

 ねず子の不満たっぷりな問いかけに、俺はニヤリと口端を歪ませて、溌剌とこう告げた。



「ねず子、またおっぱいを揉ませろい!」




次回、二度目のおっぱい回!(別名、男のリビドゥ開放回)

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