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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第四章 ~ギルド~
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アルヴァ魔法について語るようです 前半

説明回です

 王城の訓練場には現在、アルヴァ、イーステリア、マリナ、ノーレス、そしてアルヴァの頭の上にラビィ、珍しくルナもアルヴァの隣に立っている。

 イーステリアとマリナは訓練場の中にもかかわらず、机と椅子を用意し、紅茶を飲みながら雑談している。その側にノーレスが立っており、場所さえ気にしなければ優雅な日常の一幕にしか見えない。しかし実際はイーステリアとマリナは雑談はしているが言葉がカタコトだし、ノーレスは紅茶を注ぐ動作やお辞儀がぎこちない。

 そんな三人の様子を見て、アルヴァは満足したように頷いた。


(これだけ何かをしながら魔力操作を行えるようになったら、もう僕がもうできることはないかな? 後は練習次第だし)


「ルナはどう思う?」


「最低限」


「やっぱりそう思う? ラビィはどう?」


『これ以上は本人の努力次第だな。正直もう魔力操作について教えることはないな』


 ルナとラビィの言葉にアルヴァは頷き、三人に声をかける。


「三人とも合格だよ」


 アルヴァがそう声をかけると同時に、イーステリアとマリナは机に突っ伏した。それに巻き込まれそうな食器類はノーレスよって瞬時に回収され、無事だった。


「き……きついです……」


「思ったより集中力が……」


 肉体的な疲労というよりは精神的な疲労を感じているようで、イーステリアは頭を抱えている。マリナはイーステリアほどの疲労ではないようだが、起き上がるつもりはない様だ。ノーレスは疲労は軽微なのか、いつものように綺麗な姿勢を維持している。


「ノーレスさんは余裕そうですね」


「複数のことを同時にこなすことは仕事上多いので、このぐらいなら余裕……とは言いませんが、何とかなります。少し他のことが疎かになるのが難点ですね」


「これだけの時間でそれだけ出来れば十分ですよ。僕はそこまで出来るようになるまで一年はかかりましたから」


「そう言って頂けると嬉しいですね」


「わたくしはどうですか?」


 少し疲労がなくなってきたのか、イーステリアは起き上がり、期待に満ちた目でアルヴァを見ている。


「教えることがないくらいには上達してるよ。マリナも問題ないよ」


 アルヴァがそう答えると、イーステリアは嬉しいような寂しいような笑みを浮かべた。


「そうですか。では、この訓練ももう終わりなのですね……」


「いや、まだだよ? だってまだ魔力操作を覚えただから、魔法を使う練習もしないと」


 アルヴァがそう答えると、イーステリアの表情が喜色に染まった。


「では、本日は魔法の訓練ということでしょうか?」


 ノーレスは確認するように、思案顔で問いかけた。


「そうですけど、どうかしましたか?」


「もうすぐ学園は長期休暇に入ります。その間はどうされるのかが気になりまして」


「長期休暇?」


 アルヴァはなんのことなのか分からず、イーステリアとマリナの方に目線を向けた。知らないと察してくれたのか、イーステリアは説明を始めた。

 長期休暇は年に二回存在するもので、貴族の多い学園ではその長期休暇で社交界に顔を出し、同年代以外の人たちと繋がりを持つための期間だ。他にも家に帰り、現状を報告する期間でもある。どちらにしろ平民にはただの休みでしかないのだが。


「そんな休みがあったんだね、知らなかった。イーステリアやマリナはどうするの?」


「わたくしはおそらく色々な勉強が待っていると思います。無理やり学園に通っているところがあるので……」


 イーステリアがちらりとノーレスを見ると、ノーレスは力強く頷いた。どうやらその推測は正しかったようだ。


「わたしは家に帰ろうと思います。お父様が心配されているので。本当ならイーステリア様やルナ様も一緒に来て頂いて、お父様に紹介したかったのですけど……」


 マリナはそう言いながら苦笑した。ルナはともかく、イーステリアを招くなど本来ならありえない発言だ。なにしろイーステリアは王族。自由に出かけるなどありえないことなのだ。それを理解しているマリナがわざわざそう口にしたのは、本当にイーステリアを友達と考えていると伝えたかったのだろう。アルヴァの名前を挙げなかったのは友達と考えていないわけではないだろうが、親に紹介するという意味を考えてしまったからだろう。


「それなら僕がマリナについて行こうか?」


「アルヴァ様が……ですか?」


 発言の意味がわからず、マリナは首を傾げる。ただ、何かを察したのか、ノーレスがため息をついた。


「僕なら【隧道(トンネル)】で即移動できる。少しの時間くらいならイーステリアも作れるよね?」


 その言葉を聞いて、イーステリアは何も言わずに期待に満ちた目でノーレスを見る。


「確認してからとなりますが、おそらく大丈夫でしょう。詳しい日時は後程お伝えさせていただきます」


 そう言ってノーレスは頭を下げる。イーステリアはそれを見てマリナとともに喜んでいた。


『じゃあ、俺はこっちに残るか。魔法を教える奴も必要だろう?』


「いいの?」


『日に何度も往復するのは面倒だろ? この二人程度ならまだ俺で充分だ』


 アルヴァは移動中もマリナに魔法を教え、イーステリアとノーレスには【隧道(トンネル)】で戻ってきて教える。そういう生活を送るつもりだった。ラビィはそれを察し、イーステリアとノーレスの相手は自分がすると名乗りを上げたのだ。

 しかし、それに納得できないものがいた。


「お心遣い、ありがたく存じます。しかし、いくらラビィ様がお強いとはいえ、魔法を教えることは難しいのではありませんか?」


 ノーレスだ。しかしラビィはノーレスの懸念が理解できたのか、苦笑した。


『まぁ、お前の言いたいこともわかる。ホーンラビットが魔法なんて使えるのかって思うよな。俺もそう思ったことがある』


 ラビィはそう言いながら魔法陣を展開する。その数三つ。その光景にノーレスは珍しく驚きの表情を浮かべた。


『やってやれないことはない。俺はそれを嫌って程実感してる』


「失礼いたしました」


『気にするな。昔の俺も同じことを思ったことがあるからな。その常識を覆した馬鹿が昔いただけだ』


 そう言ってラビィは展開していた魔法陣を消す。


「まぁ、細かなことは今後話し合えばいいとして、今日は魔力操作をどう魔法に役立てるのかの話をしましょう」


 アルヴァは常識を覆した張本人として追及されることを恐れたのか、話をそらした。なんとなく全員それを感じながらも、興味のある内容にそれを指摘する者はいなかった。


「まず、魔力操作の利点から改めて説明しましょう」


 アルヴァがそう言うと、イーステリアとマリナは座ったまま姿勢を正し、ノーレスも緩んでいた気持ちを引き締めた。


「まず、魔力操作で筋力の能力値が上がるわけですけど、それには実は条件があります。それは体を覆う魔力の厚みを均等にするというものです」


「均等? 強化するために集めるのではないのですか?」


 ノーレスは不思議そうに言った。


「確かに集めた方が防げそうですが、それは少し違います。あくまで均等に自信を覆うことが重要です。どれだけ一部だけ厚く覆ったところで、強化は覆った中でも最も薄い場所の分しか補正されません」


「鎧とは考え方が違う……ということですね?」


「そうです」


 アルヴァはそう答えながら、確かに分かり辛いよなと苦笑した。


(普通集めればそこだけ強化されると思うよね。でも、そうすると何故か全く強化されない。全身を覆った時のみ、強化される。だから繊細に、均等に、体中を同じ厚みで覆わないといけない。こんな感じだからいつしか強化する方法も失われ、同時に魔力操作も廃れていったんじゃないか? 魔道具に頼った方が楽だろうし)


 アルヴァはそんな関係ないことを考え、すぐにやめる。今は説明に集中するべきだと思考を切り替えた。


「これから魔力操作をするときは体中を均等に覆うことを意識してください。ただ覆うだけでは意味がないので」


 その言葉を聞いて、イーステリアとマリナは困ったように微笑んだ。先ほどまでただ覆うだけでもかなりの疲労感だったのだ。そのうえ均等になるように意識しろと言われれば、気が遠くなるのも無理はないだろう。


(昔の自分を思い出すなぁ。もっとも当時の僕には嫌だと思う余裕もなかったけど)


 昔の自分を思い出しながら、微笑ましい反応をするイーステリアとマリナを見て、アルヴァは微笑む。


「ふむ…… これは厳しいですね」


 早速実践しているのか、ノーレスは確認するように呟く。アルヴァはノーレスの魔力の動きを()()()()()いた。


(やっぱり二人より呑み込みが早い。ナンガルフさんもそうだったけど、やっぱり無詠唱が使えるかどうかの違いかな)


 アルヴァはそう頭の中で推測しつつ、話を続ける。


「でも、慣れればかなり有用だと思います。何しろ僕が本気で魔力操作をすれば―――ッ!」


 説明は最後までなかった。説明を終えるまでに隣にいたルナが剣でアルヴァの頭部を殴打したからだ。あまりの威力にアルヴァは吹き飛び、地面に何度もぶつけながら飛んでいき、壁にぶつかることでようやく止まった。ラビィはアルヴァの頭を踏みつけることで回避していたが、それが原因でアルヴァの回避が間に合わなかったのは否めない。

 あまりに突然のことにイーステリアとマリナはもとより、ノーレスすら呆気にとられ、言葉を発することが出来なかった。

 三人が呆然としている間にアルヴァは何事もなかったように立ち上がり、身体についた土埃を払いながら元の位置に戻ってきた。


「確かに今頼もうと思ってたけど、早すぎだよ。察してくれるのは嬉しいけど、僕の言葉を待ってくれても良かったんじゃない?」


 流石に痛かったのか、アルヴァは殴打された場所をさすりながら言った。


「主なら大丈夫だと思って」


 ルナは悪びれる様子もなく、不思議そうに首を傾げた。その様子を見て、アルヴァはため息をついた。ラビィは我関せずと跳び上がると、アルヴァの頭の上に乗っかる。


「まぁ、少し予定外のこともありましたけど、魔力操作の有用性は理解してもらえたかなって思います」


「ま……まぁ、それは確かに……」


 ノーレスはアルヴァの頭部をちらちら見ながらはっきりとは答えず、言葉を濁した。


「今の音、大丈夫なんですか?」


 音の問題ではない気がするが、イーステリアが心配しているのは本心なのだろう。混乱しているのかなとアルヴァは考えながら、『大丈夫』と答えた。


「さっきの音、似たような音を前に聞いたことがあるような……」


 マリナはそう言いながらちらりとラビィを見た。厳密には違う音だが、ラビィがアルヴァの頭をたたいた時と同じような音がしていたと思いだしたのだ。


「まぁ、皆が今の攻撃を受けたら魔力操作が完璧でも頭が胴体とお別れだろうね」


 アルヴァは笑いながら言うが、マリナとしては笑い事ではない。それほどに今見た光景は衝撃だった。


「まぁ、レベル上げはおいおい考えるとして、次は魔法の話をしようか」


 アルヴァは今の出来事をなかったことにして、話を続ける。


「そもそも魔法の発動に必要なものって何だと思う?」


 アルヴァの質問にイーステリアが答える。


「呪文、魔法陣、魔力の三つですね」


 答えられたことが嬉しいのか、イーステリアは笑顔で言った。


「でもそれだと魔法具で魔法が発動する理由にならないし、無詠唱が出来るのはおかしくないか?」


「それは、魔法具に魔法陣を刻むことで呪文の代わりを…… あれ? でもそれだと魔法陣はどこに……」


 イーステリアは答えながらその矛盾に気づいたのか、途中から自問になっていた。


「マリナは分かる?」


「今の説明が違うとなると、必要なのは魔力は絶対だとして、魔法陣も実は必要な気がします」


「なぜ?」


 アルヴァはマリナの意見が気になったのか、先を促す。


「前からおかしいとは思っていたんです。魔法具はものによっては誰でも使えるのに、杖だけはスキルがある属性しか使えないのは何故なのかって。実は魔法具は本来誰にでも使えるもので、杖が使えないのはおかしいんじゃないかって」


 マリナの答えには願望が含まれているのだろう。自身のスキルは使えないものであるがゆえに、魔法具である杖の存在に疑問を持ったのだろう。

 アルヴァはマリナの答えににっこりと笑い、満足げな表情を浮かべた。そして、とんでもないことを口にした。


「そう、その疑問は正しい。そもそも魔法は魔法具を使えば誰にでも使えるものなんだから」


今更世界の理についての説明とか、遅くない?

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