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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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アルヴァは忠告されるようです

 依頼を受けてから一週間経っていた。あの後依頼場所を目指したアルヴァだったが、誰もおらず改めて依頼を確認すれば一週間後の日付が記されていた。よく考えれば一応名目上は魔物討伐のために部隊を動かすのだから、最低限の準備が必要なのは当然であり、準備期間が設けられているのは必然だった。それを失念していた自分を恥じながら、一週間はいつも通りに過ごしていた。やったことといえば母親への事情説明、そして、ラビィとルナに引き続き護衛を頼んだことと、ルナから『黒剣(こっけん)』を借りることだった。魔王の頃に制作したもので今の体には不釣り合いなのだが、それでもこれほど自分に馴染む武器もないため、保険として持ってきたのだった。


(話を聞く限りじゃ『黒剣(こっけん)』を使うまでもないだろうけど、備えは大事だからね)


(あたしはやりすぎないか心配だなぁ)


(レイ、珍しくまともなこと言うね)


(あたしはいつもまともだ~!)


(ん? あれは……)


 アルヴァはレイに反応しようとしたが、それよりも門の前で通行人に邪魔にならない位置で立っている人物たちに気を取られた。その人物たちもアルヴァに気づいたのか、アルヴァに駆け寄ってきた。


「アルヴァ様!」


「アルヴァ!」


 同時に声を上げた人たちはそこで初めてお互いに気付いたのか、驚いた顔でお互いを見合わせ、固まってしまった。


「あれ? エリーゼさん?」


「イーステリア様とマリア様? それにレイ? どうしてここに?」


 示し合わせたわけではなかったのか、お互いの存在に今気づいたように顔を見合わせていた。


「エリーゼさんこそ。何となく理由は分かりますけど」


 イーステリアはそう言ってアルヴァをちらりと見る。その視線だけでエリーゼも察したのか、苦笑した。


「お互い同じ目的みたいね。アルヴァ、なんでこんな依頼受けたの?」


 そう言ってエリーゼが取り出したのは依頼書の紙だった。


「そうです! あのようなあからさまな依頼など、どう見ても罠ではないですか!」


「わ……罠?」


 エリーゼは意味が分からなかったのか、驚いた様子で手元の依頼書をまじまじと見つめた。何かおかしなところがあるのかと改めて読んでいるのかもしれない。


「罠だからこそ向かうんだよ。これ以上、後手に回りたくないし」


 「罠ってどういうこと?」とエリーゼは困惑したように呟くが、それに答える者はいなかった。


「いくらアルヴァ様といえど、ドラゴン部隊に一人で挑むなど無謀です!」


「ドラゴン部隊って言っても本当のドラゴンじゃなくて亜竜(ありゅう)であるワイバーンでしょ? 問題ないよ」


「確かにアルヴァ様には勝算がおありなのでしょう。しかし、個人の力には限界があります。騎士団長も言っていました。グリーンドラゴンすら狩るドラゴン部隊はいくら個人で優れていようと戦いにすらならないと。ですからアルヴァ様、おやめください」


 イーステリアの懇願を聞いて、アルヴァは少し考えこんだ。イーステリアの言葉に一理あると思ったわけではない。ただ、自分の思っていた以上にこの国ではドラゴン部隊が相当な武力として評価されているのだと実感し、自分の感覚とそれをすり合わせるためだった。


「マリナはどう思う?」


「正直わたしは戦闘に関しては素人なので何とも言えません。ただ、わたしの【心眼】にはいつも通りのアルヴァ様しか見えません。ルナ様もそうである以上、問題ないと思っています。わたしがここに来たのはただ見送るためですので」


 「そうなんですか!?」とイーステリアは驚いているところを見ると、マリナはイーステリアに何も話していないようだった。


「エリーゼは?」


「よく理解できないけど、無謀ということだけは分かるわ」


(まぁ、見たことのないものを信じるのは難しいよね)


「わかった。でもそれでも向かうよ。むしろ三人には見ていて欲しいかな。特にイーステリアとマリナは訓練したらどんなことが出来るようになるのかわかると思う」


「出来るようになること……ですか?」


「いつも訓練ばかりで何ができるようになるのか実感できないでしょ? だから、僕がそれを実演するよ」


 名案だとばかりにアルヴァはそう言うが、イーステリアの表情は曇った。


「行かない……という選択肢はないのですね」


「ないよ」


 アルヴァのいつも通りの態度にイーステリアは覚悟を決めたように表情を引き締めた。


「わかりました。では、ご一緒にその場に(おもむ)き、見届けたいと思います」


「いや、来る必要はないよ。危ないかもしれないから」


 アルヴァはそう言うと、何かを【道具箱(アイテムボックス)】から取り出した。


「あ~…… ラディリアスさん、聞こえますか? ……事情は把握していると思います。今からそちらに四人送りたいんですけど大丈夫ですか? ………………わかりました。今から【隧道(トンネル)】を使います」


 アルヴァはそう言うと、目の前に【隧道(トンネル)】を使った。穴の向こうにはラディリアスとノーレスが見えた。


「ラディリアスさんには僕を観察できる魔法具を渡してあるから、見るなら一緒に見るといいよ。許可はもらったから」


「……わかりました。無事をお祈りいたします」


 そう言ってイーステリアはお辞儀をした。アルヴァはあの神に祈っても何もしてくれない気がすると考えながら、頷いた。「え? え?」といまだに状況がわからないエリーゼをルナが引っ張って【隧道(トンネル)】を通過したのを見届けると、アルヴァは穴を閉じた。


(あれでよかったのかな?)


 なかなか動き出さないアルヴァに、レイは声をかけた。


(何かあるといけないからね。切り札がないとは言い切れないし)


(そんなものあるのかなぁ……)


 アルヴァの心配を杞憂と感じているのか、声からはレイの呆れた気配が伝わってきた。


(古代の魔法具)


(あぁ~~……)


 しかし、その一言でレイは納得したのか、微妙な反応を示した。


(古代の魔法具ってあれでしょ? 何百年も前に作られた現在では再現不可能な魔法具のことでしょ?)


(そうそう。いくらどう作ったのかわからなくても使うことぐらいは出来るだろうし、もしも残っているのが僕が魔王だった頃の物だった場合、僕ですら抑えきれないものがあるかもしれない)


 道具を使うのに高度な知識は必要ない。携帯電話の中身を知らなくても使えるように、銃の構造がわからなくても引き金を引けば撃てるように、構造を知らなければ作れないだけで使う分には問題ないことが多いのだ。


(その確率は低いと思うけどな~)


(自分だけならいくらでも守れるし、別にその場にいなくても僕の魔法具で見れるんだから無理する必要はないよ)


(そうなんだけど~ あたしにもっと頼ってほしいの~)


 流石にそれだけのためにレイに魔法を作ってもらうつもりのないアルヴァはレイの言葉を聞こえていないふりをした。聞こえていないわけがないのだが。


 そんなやり取りをしている間に検問を抜け、王都の外に出た。既にその地点で指定された重合時間が過ぎていたのだが、アルヴァは一切気にせずゆったりと歩きながら目的地に向かった。到着すると、遅れてきたアルヴァに兵士は嫌そうな顔で見たが、自分の役割ではないと思ったのか、黙って隊長のところに案内した。


「冒険者風情が遅れてくるとは何事だ!」


 到着して早々アルヴァはそんな罵声を浴びるが、アルヴァは一切気にせず、謝罪もなかった。


「何か言ったらどうだ!」


「そういうのはいいので、さっさと本題に入りましょう」


 アルヴァとしては無駄な問答はするつもりはないので単刀直入に本題を切り出す。


「その不遜な態度は何だ! 遅れてきておきながら謝罪もしないとは! これだから冒険者は!」


「僕の命を奪おうとしている人にどう敬意を払えと?」


「な……何のことだ!?」


「そういうのはいいですから、さっさと始めましょうよ。準備が終わるまで待ってますから」


 アルヴァがそう言うと、隊長はにやりと笑った。


「流石にあの依頼に騙されるほど愚かではなかったか。しかしそれでも逃げずに現れるとは、愚かだな。魔法具の力で強くなった分際で、自分自身が強くなったと勘違いしたのか?」


 そう言うと、腰に帯剣していた剣を抜いた。


「もう少し森の奥まで連れて行ってから始末するつもりだったが、仕方がない。予定が少し早くなっただけだ」


 隊長が抜剣(ばっけん)した剣を掲げると、隊長に空からワイバーンが降り立った。そして隊長は颯爽(さっそう)とワイバーンに乗ると、ワイバーンは空に跳び上がった。それを合図にしたかのように様々な場所から人を乗せたワイバーンが舞い上がった。


(全部で十五頭か。群れの最大個体数にしてるのかな? これがドラゴン部隊。飛ぶだけで一方的に攻撃できることもあるし、魔法とかで攻撃されたら普通に脅威かな)


「驚いたか! これが我らドラゴン部隊だ! 貴様のような平民が日頃見ることも出来ない最強の部隊だ! 命乞いをするなら今のうちだぞ!」


 隊長は高らかに声を上げる。しかし、アルヴァは面倒そうにため息をついた。


「面倒なので、さっさと来てください」


 アルヴァのその態度に隊長は額に青筋を浮かべる。


「虚勢がいつまで続くのか見ものだな!」


 隊長は剣をアルヴァに突き付ける。それを合図に他の兵士たちが魔法の準備を開始した。


(さて、開戦かな。出来ればイリスたちにたくさん見せたいから、長くもってくれるといいんだけど)


 アルヴァはそう考えながら、ただ静かに魔法の準備が終わるのを待っていた。

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