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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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決闘当日のようです

遅くなりました

「逃げずに来たようだな」


 決闘の当日となり、アルヴァは闘技場に来ていた。目の前には決闘相手が既おり、何か話しているのだが、アルヴァの耳には届いていなかった。


(あの特別に用意されてるとこに座ってるのが王様で、隣が妃様かな? ただ少し離れたその周りで座ってる人達は誰だろう? 相手の親族か? あの中の一人が相手の父親かな?)


 アルヴァは見渡しながらそう推測する。


(ナンガルフさんや母さん、ルナが見に来るのは仕方がないとしても、なんでイリスとマリナはその両隣に座ってるのかな? 貴族や王族は普通別の場所じゃないの?)


(やっぱり村でのやり取りで仲良くなったんじゃな~い?)


 そもそも答えを求めていない心の中での疑問に、当たり前のようにレイが答えた。


(それよりも気になるのはその周りに配置された騎士、そして別の場所に何故かいる学園長と教師か)


(無視はいじめの始まりだ~!)


 レイは抗議の声を上げるが、アルヴァは全く相手にしない。


(王族に僕の力がばれるのは望むところだけど、学園まで広めるつもりはないんだよね。とりあえず試験の時のように手を抜かないと)


 アルヴァとしては王族に力が知れ渡るのは問題なかった。ラディリアスやイリスにばれている以上、隠し通せるとは思えなかったのだ。ならば力を知らしめれば、下手な干渉を回避できるだろうと考えていた。


(でも、負けるわけにもいかない。前回の試験を基準にするとあれで最低限の実力みたいだし、もう少し本気出さないとかな。塩梅が難しいけど)


(お? 本気だしちゃう? やっちゃう?)


 無視されても全くめげないレイは、嬉しそうにそう提案する。


(なんでこういう時に限って聞いてないの? 塩梅が難しいって考えてたんだよ?)


「おい! 聞いてるのか!」


 アルヴァがレイに注意したのとほぼ同時に対戦相手の青年は大きな声を出した。何も聞いていなかったアルヴァはどう答えればいいものかと思案する。しかし、それより先に少年は言葉を口にする。


「ふん…… どうせ今更決闘をすることを後悔しているんだろ? もう遅いんだよ」


 青年が自己完結してくれたことにアルヴァは安堵した。流石にこの場で聞いていませんでしたと答えて火に油を注ぐようなことをするほど、人の心がわからないわけではないのだ。


「これより、決闘を行う! この場はこのラディリアス・アノウンが仕切ることになる! 両者異存はないか!」


 青年の話が終わるのを待っていたのか、終わったと同時にラディリアスが口を開いた。さほど大きな声ではないにもかかわらず、ラディリアスの声はアルヴァの耳にしっかりと届いた。


(拡声の魔法具かな? この場内にもあるみたいだし、こっちの会話はあっちに伝わる仕組みになってる? まぁ、そうじゃないと何が起こってるのかわからないか)


 ラディリアスの声にアルヴァは関係のないことに思考を動かす。


「では、この決闘の決まりについて説明しておく。勝敗はどちらかの死か、降参によってのみ決定する。それ以外はたとえ王族とて許されない。もちろん、場外からの手助けなどの一対一の決闘を汚す行為は厳罰になる。観覧する者たちも肝に銘じるように」


 その言葉に当然とばかりに皆が頷く。ただ、アルヴァの母親だけが覚悟を決めた目でラディリアスをはじめ、王族に目を向けていた。


「それでは両者は指定の位置に!」


「覚悟しておけ」


 青年は捨て台詞の様にそう言ってアルヴァから離れていった。その言葉にアルヴァは呆れながら、自分も指定の位置に移動していく。


「これより決闘を開始する! 両者、準備はいいか!」


 定位置につくと、ラディリアスはそう問いかける。その言葉に青年とアルヴァは頷いた。


「それでは、はじめよ!」


 号令とともにアルヴァは動かなかった。最初は相手の実力を測るために様子見するつもりだったようだが、それは青年も同じだったのか、静かな始まりとなった。


「おい、平民」


 青年は杖を弄びながら、にやにやとした笑みを浮かべている。


「俺は寛大だからな。先手は譲ってやるよ」


 寛大な人はそんな態度はとらないだろうと思ったが、それは口にしなかった。


「なぜそんなに平民を見下す?」


「なぜ? そんなの決まってるだろ。平民は弱者だからだ」


 青年は何を当たり前のことをと言いたげな意外そうな表情で言った。


「お前ら平民は学ぶ努力もせず、働く努力もしない弱者のくせに不平不満ばかり口にする。そんな愚かな平民は優秀な我々貴族が導かなければすぐに路頭に迷うことになる」


 まるで日々誰かが言っていることをそのまま話しているような、中身の伴わない話を当然とばかりに青年は口にする。


(自分たちで技術や知識を独占しておいてこの言い草か。いつの世の貴族の愚かさは変わらないなぁ)


 まるで貴族社会の悪い部分の代弁者のような青年に、アルヴァは憐みの目を向ける。アルヴァにとって目の前の青年は被害者にしか見えなかったのだ。だからといって許すつもりは毛頭ないのだが。


「お前ら平民は大人しく俺たち貴族の言うことを聞いていればいいんだ。それが出来ない弱者を間引くのも強者の務めだ」


「つまり、強者は弱者をどう扱おうと自由ということか?」


「平民の割には物分かりがいいな。分かったらさっさと跪け!」


「それがお前の規則(ルール)か。じゃあ僕もそれに従おう」


 アルヴァはそう言って魔法陣を展開した。


(とりあえず、どのくらいが普通かわからないから、あそこにいる学園の教師たちがどの程度反応するのかを基準にするしかないかな)


 王や妃、貴族などの反応はそのプライドがあるため、まともな反応をしないことをアルヴァは前世の経験から理解していたため、比較的反応しそうな二人の反応を見ることに決める。


「君が弱者だ。跪け」


 アルヴァはそう言って火魔法【炎弾】を青年に向かって撃ちだした。青年は何かを言おうとしてしかし、炎弾の防御のために障壁を展開することを優先した。単発で撃ちだされた炎弾は青年が展開した障壁で受け止められた。


「なにが跪けだ! 貴様! 俺に向かってそんな口をきいていいと思ってるのか!」


 青年が何か言っているが、アルヴァは一切気にせずに、アルヴァは次の魔法を使うことに専念する。


「初撃は耐えるよね。じゃあ、続けていこうか」


 アルヴァは展開した魔方陣から再度【炎弾】を撃ち出す。それも、今度は連続で。


「な―――!」


 青年は何かを言おうとしたようだが、その声は【炎弾】の着弾の音にかき消された。【炎弾】は次々に着弾するが、アルヴァはしっかりと相手の生存を確認しているため、攻撃の手を緩めるつもりはなかった。


(ここまでは想定内。反撃の余裕はないみたいだけど、しっかり防いでる。じゃあ、更にて数を増やそうかな)


 アルヴァは更に展開する魔方陣を増やし、その数は三つになった。そこから最初と同じように【炎弾】が次々と発射される。それでも青年は耐えていた。しかし、青年にもうすでに余裕はない。文句を言う暇もなく、ただ目の前の命の危機を回避するために、全力で障壁を展開し続ける。だが、アルヴァが青年のことを(おもんばか)ることは無い。青年の言った通り、弱者をどう扱おうが自由なのだから。

 攻撃をやめると、青年はまだ立っていた。障壁で全て防いだようで無傷だが、その表情は恐怖で歪んでいた。


「なんなんだ…… なんなんだお前は!」


「まだまだ余裕そうだね。じゃあ、更にいこうか」


 アルヴァは青年の言葉など気にせず、更に展開する魔法陣の数を増やす。その数は五つに達した。


(ここまでは入学試験の時に使った魔法の数と同じ。ここまでなら最低レベルだから、ここからが問題かな)


 アルヴァはちらりと学園長とサムエルの様子を観察するが、特に変わった反応はなかった。自分の推測が間違っていないことに安堵する。

 アルヴァは勘違いしているが、そもそも試験の時の結果はサムエルが隠ぺいしたため正当なものではない。故にアルヴァが使っている魔法技術は既に標準から逸脱してしまっている。王族にあまり反応がないのは、ただ驚きの連続で反応する余裕がないからでしかない。

 アルヴァは五つの魔法陣から【炎弾】を二つ、【水弾】【石弾】【風弾】を撃ちだす。しかしその瞬間、アルヴァは別の魔力反応を感じ取った。


(ん? 誰かあいつの前に障壁を展開した?)


 アルヴァはそう考えながらも容赦なく魔法を撃ち続ける。


(四人かぁ。別に攻撃されたわけじゃないし、魔法や魔力の感じからすると学生くらいかな? 隠してたらわからないけど)


(そう? ベテラン魔法士じゃない?)


(まさかぁ。接近戦が専門だったナンガルフさんと同程度の練度だよ? そんなわけないって)


(そうかなぁ……)


 レイの考えた通り、手を出しているのは青年が事前の用意した魔法士だった。ナンガルフは接近戦はもとより、魔法でも名をはせた冒険者なのをアルヴァは知らない。


(でも、不正は不正だから、少しお仕置きが必要だよね)


 アルヴァは一度、すべての魔法の発動を停止した。しかし、魔方陣は展開したままであり、いつでも発動できる状態で待機していた。


「今のを耐えるなんてさすがだね」


 アルヴァは心にもない賛辞を贈る。その言葉が相手の自尊心を傷つけると分かっていての一言だった。しかし、青年にその言葉に答える余裕もなく、肩で息をするほどに疲弊していた。体は疲れているはずはないのだが、あまりの恐怖に精神は削られ、体がこわばり、それだけで疲弊していしまっているのだ。


「じゃあ、今の僕の全力を見せようか」


 アルヴァは自覚はないが、少しこの場を楽しんでいた。日頃これだけ魔法を使える機会もあまりないため、それが本人も知らず知らずのうちにストレスになってしまっていたのだ。


「これが今の僕の全力だよ」


 そう言って展開された魔方陣の数は八つ。その光景だけで青年の顔は引きつっていた。


「これをやると他のことが疎かになるんだけどね」


 「じゃあ、耐えようか」と言うアルヴァの言葉に青年は降参を口にしようとするが、それよりも早く八つの魔方陣から炎の矢が撃ち出されるのだった。

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