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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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アルヴァは訓練を始めるようです

 アルヴァはイーステリアの案内で訓練場を訪れていた。そこは周りを壁のようなもので囲まれた屋外で、囲まれた形は円形だ。周りから眺めるように出来ているのか、人が座れる場所が用意されている。


(一応壁の強化や観客席に被害がいかないように障壁はあるみたいだね。障壁は内から外への衝撃や攻撃を受け止める感じかな)


 軽く魔力操作でどういう場所なのか把握したアルヴァは、期待を込めた視線を向けるイーステリアと、少し不安そうなマリナの方を見た。


「本当に魔法を使おうとしたら不安が残るけど、今日はとりあえずここで訓練しよう」


「不安ですか…… 一応ここ、最高設備を備えた場所なのですが」


 そう不満そうに口にしながら現れた第三者に、アルヴァは呆れたように声をかける。


「ノーレスさんは何しに来たんですか?」


「主人様がイーステリア様だけでは詳細がわからない可能性があるということで、わたしくが参りました」


 その言葉にイーステリアは不満そうに頬を膨らませていたが、なにも言わなかった。


「僕が拒否するとは思わなかったんですか?」


「これからは必要とあらば貸し一つの使用権限をわたくしの判断で使ってもかまわないとのことでした」


「そこまでする必要はありませんよ。というか、そこまでして知るような技術も知識も話すつもりはありませんし」


「それでもわたくしたちにとっては未知のものなのでしょう?」


 そう言われて確かにそういった技術は欲しくなるかとアルヴァは納得する。


「もちろんです。まぁ、好きにしてください」


 アルヴァの言葉にノーレスは深々と頭を下げる。


「今更ですけど、イリスもマリナも訓練を受けるってことでいいんだよね?」


「もちろんです! 早く魔法具を使ってみたいです!」


 イーステリアはアルヴァが作った杖を大事そうに両手に持って微笑む。


「あ、悪いですけど魔法具は使わないよ。今回は魔法具も詠唱もなしで魔法を使う方法を習得してもらうから」


 その言葉をイーステリアは一瞬理解出来なかった。理解出来た瞬間、驚きの表情になる。


「無詠唱ですか!? そんな高等技術をわたくしが!?」


「もちろん」


 魔力操作さえ習得すれば無詠唱はそれほど難しい技術ではないため、アルヴァは正直に頷く。その魔力操作を覚えるまでが一苦労なのだが。


「マリナはどうする?」


 今更だなと考えながらアルヴァは問いかける。そもそもここで断る勇気がマリナにはないことを知っていながら連れてきたのだから。


「もちろんよろしくお願いします」


 ただ、その答えはアルヴァが思っているよりは前向きな姿勢だったが。


「じゃあ、早速ですが始めましょう」


 アルヴァがそういうと、三人はじっと真剣にアルヴァを見た。


「今回皆さんに習得してもらうのは魔力操作です。聞きなれない言葉かもしれませんが、要は自身の魔力を自分の意のままに操る技術です」


 ちなみにこの技術に正式名称はない。アルヴァが分かりやすいので勝手に魔力操作と呼んでいるだけだ。


「そのようなことに何の利点が?」


 ノーレスはできるのかとは問いかけず、その先の疑問を口にした。


「魔力操作はすべての魔物が無意識に行っている技術で、これを行うだけで様々な恩恵があります。例えば……」


 アルヴァはそこで言葉を切り、【道具箱(アイテムボックス)】の中から自分と同じくらいの大きさの石を取り出した。その衝撃で大きな音が辺りに響き渡る。


「今、一体どこから……」


「【道具箱(アイテムボックス)】という魔法です。これもいつか使えるようになりますよ」


 「詳しい説明はまたこれを教える時にします。本題はこれじゃないので続けますね」と告げると、アルヴァは説明を続ける。


「この岩を持ち上げるためには相当な【筋力】のステータスが必要です。でも、魔力操作を使いこなすとこうなります」


 そう言ってアルヴァは左手で岩を鷲掴みすると、そのまま岩を上に少し持ち上げた。その光景にノーレスとイーステリアは目を見開いて驚いたが、マリナはよくわからなかったのか、首を傾げる。


「前世から考えれば、アルヴァ様なら当然ではありませんか?」


 アルヴァは想定外の反応に困ったように曖昧に笑った。


「それは違いますよ、マリナ様」


 それを察したのか、代わりにノーレスが説明を始める。


「転生した者でも受け継がれるのは記憶と、ステータスではレベルと魔力と精神力のみで、体力と筋力はレベルが上がらなければ変わりません」


「そうなのですか!?」


 やっと現状を理解したのか、マリナは驚いた表情でアルヴァを見た。その反応に満足したのか、アルヴァは岩を下ろす。


「僕の体力と筋力は平均より少し低いくらいです。普通に筋力で勝負したらノーレスさんの足元にも及びません」


「わたくしもそのように存じます。しかし、その魔力操作を行っているアルヴァ様との力比べは考えたくもないですね」


「まぁ、具体的に言うと、完全に魔力操作を行えるようになると、魔力の数値がそのまま筋力に加算される形になります。しかも、その状態で攻撃を受けた場合、体力よりも先に魔力の方から減少していくというおまけつきです」


「でもそれだと、魔法を使える回数が減りませんか?」


 イーステリアはいまいち利点が思いつかないのか、首を傾げる。


「まぁ、そうなんですけど。そもそも魔法使いが攻撃を受けないようにするのが普通で、これは魔法使いにとっては保険のようなものです。実際、防御の恩恵に(あずか)れるのは前衛ですね。だから、誰にとっても必要な技術だと僕は思ってます」


「つまり、魔力操作を使えるようになれば、無詠唱で魔法が使えるようになり、攻撃と防御面でも補正がかかるということですね?」


 ノーレスは今までの話をそうまとめた。その言葉にアルヴァはしっかりと「はい」と答え頷く。その言葉でイーステリアとマリナは事の重大性を理解したのか、今日何度目になるかわからない驚きの表情を浮かべた。


「なるほど。魔物が同レベルなのに強いわけです。長年謎だった魔物のステータス補正の謎が解けました」


 ノーレスは得心が行ったのか満足そうに頷いている。


「あ、あの…… ちなみにアルヴァ様のステータスをお聞きしてもよろしいですか?」


 イーステリアは我慢できなかったのか、そう口にした。平民の間ではステータスを公開しないのが一般的であることは理解しているし、今まで言わなかったということは、隠そうとしていることも理解している。しかし、どうしても気になってしまい、更にはノーレスは知っているような口ぶりなので、ここしかないと意を決して声を出したのだった。


「あれ? 言ってなかったっけ?」


 しかし、アルヴァとしてはもう隠しているつもりはなかった。むしろ既に伝えたと思っていたほどだ。


『まだだ』


 アルヴァの言葉にイーステリアが呆気に取られている間に、ラビィが呆れたように言った。


「じゃあ、僕の実力を知ってもらうという意味を込めて、全て伝えますね?」


 その後、伝えられたステータスを聞いて、あまりと言えばあまりの数値に疑う以上にそれがいかに凄いのかをいまいち理解できず、イーステリアとマリナは困惑した。アルヴァの口から各ステータスの最大値が語られると少し実感がわいたようだが、それでも今までのことを思えば、驚きは少なかった。


「あれ? 僕のステータス、それほどでもない?」


 驚かせようと言った手前、ノーレスに伝えた時よりも薄い反応にアルヴァは不安になった。


「いえ…… ただ、実感しにくいというか……」


「雲の上すぎて想像もできないというか……」


 二人はどう言葉にすればいいのか迷いながら答えた。


「具体的にお伝えすると、グリーンドラゴンを先ほど聞いた魔力操作を行えば腕力で軽々と制圧できるぐらいですね」


「あの災害と言われたグリーンドラゴンを!?」


 比較対象を聞いて実感できたのか、あり得ないものを見るような目でアルヴァを見た。


(グリーンドラゴン? そんな魔物いたっけ?)


 アルヴァは聞いたことのない魔物の名前に内心首を傾げる。前世で魔物を統括していただけに魔物に詳しいと自負していたアルヴァは自分の知らない魔物に驚いていた。


(しかもドラゴンだって? みんなの様子を見る限り良くある個体みたいだ。よくいるドラゴンって何だろう?)


 ドラゴンの総数は少ない。その上、生まれてくる確率はかなり低い。そうでなければこの世界はドラゴンの天下になっていただろう。アルヴァが知っている最低レベルのドラゴンでも七百ほどあるのだから。


「まぁ、僕のステータスの話はそれぐらいにして、魔力操作の話を始めよう」


 これ以上脱線しては永遠に終わらないような気がしたアルヴァは本題に戻す。


「そうでした! それで、魔力操作とはどのように行うのですか?」


 イーステリアは努めて気持ちを切り替えたのか、言葉がぎこちなかったが、アルヴァは気にせずに答える。


「魔力操作は初めに魔力操作ができるものからきっかけを与えられないと」


「きっかけですか?」


「誰かが外から魔力を動かしてあげて、その感覚を覚えることから始めるんです。そうやって魔力操作は代々受け継がれていく技術です」


 アルヴァの記憶でもいつ始まったのかは定かではない。ただ、先天的に魔力操作ができる人間はいるため、そこから始まったのではないかと推測していた。


「さて、時間も時間ですから早速始めましょう。ラビィ」


『やっぱり俺もやるのか?』


「魔力操作、出来るよね?」


『まぁ、時間だけはあったからな』


 魔物であるラビィは魔力操作を無意識に行なっていた。しかし、それでは完璧とはいえず、さらなる練習が必要だったのだ。


「それじゃあラビィはイリアとマリナをよろしく。僕はノーレスさんをやるから」


『俺がノーレスじゃないのか?』


「ノーレスさんは長年魔法を現代風に使いすぎて固まってきてるから、ラビィじゃ難しいと思うよ?」


『……わかった』


 ラビィは少し悩んだ末に了承し、アルヴァの頭の上から飛び降りた。そして、二人に近づいていく。


『そういう理由で俺が担当だ。悪いな』


「いえいえそんな! よろしくお願いします。ラビィ様」


「よろしくお願いいたします」


 二人は丁寧に頭を下げ、ラビィは二人にこれから行うことを説明していく。それを見届けたアルヴァは問題ないと判断し、不思議そうにラビィを見るノーレスに声をかけた。


「それじゃあ、こちらも始めましょう」


 ノーレスは何かを聞きたそうにしていたが、それを無視してアルヴァは話を進めた。


「とりあえず先程説明した通り、僕がノーレスさんの魔力を動かします。どちらの手でもいいので前に出してください」


 ノーレスは「わかりました」と答えると、右手の平を上に向け、差し出した。アルヴァはその掌の上に左手を重ねた。


「今からノーレスさんの魔力を動かします。最初はその動きを感じてください。それに慣れてきたら自分でもその流れに沿って動かすようにしてみてください」


 そう言うと、アルヴァはノーレスの魔力を動かすために、自身の魔力を送り込む。


(あれ? 思ったよりも動かしやすい? あぁ、そういえばスイッチなしでも魔法具使えていたし、そこまで今の魔法具文化に染まってないのかな?)


 魔法具はスイッチを押せば使える魔法具は便利な反面、魔力を一切動かすことなく、魔法具が必要量を勝手に使用してしまう。そのせいで自分の意思で魔力を動かす機会が減っていくのだ。


「どうですか?」


「魔力が動いているのは感じますが、まだ動かすのは難しそうです」


「まぁ、二人もしばらくかかると思いますので、ゆっくりでいいですよ」


 ノーレスに合わせる気のないアルヴァはそう伝える。元々そのつもりだったのか、ノーレスは驚くことなく頷いた。


「負けるわけには参りませんね」


 ノーレスはそう言うと、集中するために目を閉じた。


(まぁ、この調子ならノーレスさんが最初に出来るようになりそうだけど、それは黙っておこうかな)


 アルヴァの心の内など知る由もなく、ノーレスは二人に負けないよう感覚を研ぎ澄ませていく。その日の訓練はただ静かな時間が過ぎていくのだった。

訓練とは本来地味なものだ

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