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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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アルヴァは赴くようです

「この中には魔法系のスキルがなく、魔法を使えない人もいるだろう。しかし、魔法に対処するためにはその特徴や性質を知る必要がある。魔法具もあるしな。だから自分には関係ないとは思わず、しっかりと学べ」


 教壇に立つ講師――――サムエルはそう前置きをして黒板にスキル名を書き込んでいく。そんなの関係ないのにと思いながらも、アルヴァは常識を知るために授業を聞く。


「魔法系のスキルは様々だ。ここに書いたのもほんの一部だな。ただ、中にはスキルとして存在するのに、魔法が分からないもの。伝説になっているものがある」


 そう言ってサムエルは【回復魔法】【時空魔法】【重力魔法】と書き込んでいく。


「この三つは俗に使えないスキルとされている。回復魔法は神に仕える聖職者でなければほとんど効果はないし、時空魔法や重力魔法に至っては魔法を使える人自体がいるのかさえ分からない始末だ」


 サムエルは『まぁ、研究し甲斐はあるけどな』と付け加える。


「他にも伝説にある、名前しか分からない魔法もある。死者をも蘇らせる【死者蘇生(リザレクション)】やどんな場所へも一瞬で行ける【隧道(トンネル)】などは眉唾だと思うが、【天使の涙(エンジェル・ドリップ)】や【隕石メテオ】などは再現可能だろうというのが最近の見解だ」


 その後もサムエルの魔法の講義は続いていくが、アルヴァにとって真新しいものはない。ただ聞くたびに失われた魔法の多さに辟易とするだけだ。あんまりな内容の授業にアルヴァは真剣に聞く気がなくなり、ぼんやりと黒板を眺め、意識は別のところに向けた。


(呼んだ~?)


 反応を示したのはレイだった。アルヴァは呼んだわけではないが、ラビィと話すわけにもいかないので、ありがたくレイに応じる。


(暇だからありがたいよ。話に付き合ってくれる?)


(おっけーおっけー! むしろあたしの方が暇だからばっちこーい!)


 相変わらずのレイの軽さに苦笑しながら、今はそれがありがたかった。


(レイは昨日の男、覚えてる?)


(それってラビィちゃんのこと投げ捨てた人~?)


 その言葉を聞いた瞬間、その時の怒りを思い出したが、何とか【威圧】を発動させずに済んだ。


(そんなにイラっとしてたのに、良く昨日も我慢できたね? あたし今度こそあいつ死んだ!って思ったのに)


(ラビィが止めなかったら【威圧】は使ってたかもね。でも、冷静になって考え直したんだ)


(なにを?)


(僕が手を出すまでもないんじゃないかって。まぁ、そのためには今日の二人の訓練は出来なくなるけど)


 二人とはイーステリアとマリナのことだが、レイには言わなくても伝わっていた。


(いいんじゃない? 二人に約束したわけじゃないでしょ?)


(そうだけど、教えるって言ったからそこはちゃんとするべきかなって)


(まじめ~ そういうところあたしつまらな~い)


(別にレイを楽しませようとしてるわけじゃないからね)


(確かに!)


 レイの楽しそうな反応にアルヴァは苦笑するしかない。


(そうだ! お詫びに二人に本人にしか使えない特別な魔法創ってあげたら?)


 レイはいいことを思いついたとばかりに嬉しそうにそう提案した。


(本人にしか使えない魔法を創る?)


 その意外な提案にアルヴァはいまいち意味が分からず、首を傾げた。


(もしかして、あたしの能力忘れてない?)


(流石に忘れてないけど、本人にしか使えないとかそんなこと可能なの?)


(魔法具に可能で、あたしに不可能なことなどないのです!)


 アルヴァはレイが胸を張って自慢している姿を幻視した。


(そもそも【魔法創造(好きに作っちゃえ)】だよ? すべては創り手の創造次第!って感じしない?)


 そう言われればそうだとアルヴァは納得する。根拠は何もないのだが、今までのレイの無茶苦茶っぷりからそもそもできないと決めつけていた自分がおかしいのだと考え直したのだ。


(じゃあ、なにか創ろうかな)


(待ってました~!)


(ただ、授業中だから演出はなしね)


(えぇ~!!)


 表情は無表情に、頭の中では騒がしく二人(一人とひとスキル?)は特別な魔法を考えて授業の時間中の暇を潰していった。





 その日の授業をすべて終え、アルヴァはこの後の予定のためにすぐに荷物をまとめ始めた。


「アルヴァ様、この後のご予定はございますか?」


 そのイーステリアの言葉に、何も聞いていないのだと察したアルヴァは今後の予定について話す。


「イリスの兄に会う予定があるんだけど、聞いてない?」


「そうなんですか? わたくしは何も。でも、都合が良かったかもしれませんね」


 そう言ってイーステリアは帰ろうとしているマリナに声をかけた。


「都合がいい?」


「わたくしのよく使う訓練場があるのです。お話もそれほどかかるものではないですよね?」


 マリナは困ったように「それってわたしが入っても大丈夫な場所でしょうか?」と心配していたが、イーステリアは「わたくしが許可するので大丈夫です」と答えていた。


(そんなに長く相談する気もなかったし、【隧道(トンネル)】で移動する許可も貰ってるから移動時間の心配もない。それに、どこでやるのか悩みどころだったからちょうどいいかな)


「じゃあ、時間があればそうしよう」


 アルヴァは悩んだ末、そう答えた。もしも話し合いがこじれた時は訓練どころではなくなるため、確約できなかったのだ。


「ありがとうございます」


 イーステリアは嬉しそうにほほ笑む。そんないつも通りの反応にマリナは苦笑していた。


「じゃあ、時間が惜しいし、さっそく向かおう」


 ルナには事前に伝えていたアルヴァはすぐに移動を始める。イーステリアとマリナはその後ろに従った。


「あの、どちらに向かわれているのですか?」


 アルヴァの後を歩いていたマリナだが、だんだん門から離れ、人気のないところに移動していることに不安を覚えたのか、そう声をかけた。


「とりあえず誰の目にもつかない場所かな」


「え?」


 その一言にマリナは不安そうな表情になる。しかし、イーステリアの手前アルヴァを疑うようなことを言えず、ちらちらとイーステリアの様子をうかがうにとどまっていた。


『アルヴァ、ちゃんと説明しろ。マリナが不安がってるぞ』


 見かねたラビィがアルヴァの頭をバシバシ叩きながらそう言う。中々の威力なのか、その音にイーステリアとマリナがびくっとなった。


「説明してなかったか。ごめんなさい」


 そう言ってアルヴァは歩みをとめた。


「実は見られたら困る魔法を使うから、人がいない場所を探してたんだ」


 アルヴァはそう説明すると、すぐに【隧道(トンネル)】を発動させた。イーステリアとマリナはいきなり目の前に現れた光景に言葉を失う。そんな反応を気にせず、アルヴァはその空間に空いた穴をくぐる。


「二人とも、早く入ってきて」


 二人は困惑しながらも促されるままに歩き出し、その空間の穴を抜ける。二人が通り過ぎたのを確認すると、アルヴァは魔法を解除した。


「ここはまさか……」


 イーステリアは見覚えがあったのか、部屋の装飾を見ながら呟くように言う。


「お待ちしておりました」


 その声にイーステリアとマリナは驚いたように声の主を見る。


「お待たせしました、ノーレスさん」


 そこにいたのはいつも通りの執事の格好をしたノーレスだった。


「ノーレス!? じゃあここは本当に!?」


 イーステリアは学園から王城に一瞬で移動してきたことを理解したのか、驚愕の表情でアルヴァを見た。マリナはいまだ何が起こったのかわからないのか、きょとんとした表情のまま、イーステリアを見ていた。


「時空魔法【隧道(トンネル)】ですか。初めてじっくりと観察しましたが、恐ろしい魔法ですね」


「まぁ、習得は少し難しいからね。ところでノーレスさんの主人には会えるの?」


「はい、既にお待ちです。お呼びしてきますので少々お待ちください」


 ノーレスはそう言って頭を下げると、部屋を出ていった。


「アルヴァ様、今の魔法は【隧道(トンネル)】なのですか!?」


 イーステリアは興奮しているのか、珍しく声を大きく、アルヴァに詰め寄った。その言葉を聞いて事態を把握したマリナは「【隧道(トンネル)】!? まさかここは王城!?」と驚いていたが、その疑問に二人は反応しなかった。


「何事ですか!」


 イーステリアの声に部屋の外から騎士が乱暴に扉を開け、入ってくる。


「! 何者だ! 姫様から離れろ!」


 そして騎士はアルヴァの頭の上に乗っているラビィを認めると、表情を険しくして腰の剣を抜いた。


「ち……違います! この方は―――!」


 イーステリアは自分の状態に気づき、慌てたようにアルヴァから少し距離をあける。


「姫様とご友人は早くこちらへ! 早く!」


 騎士はイーステリアの声を遮り、険しい表情のまま、アルヴァに剣を向け続ける。マリナも現状がどういうものなのか気付いたのか、困惑したように騎士とアルヴァを交互に見た。


「ですから―――!」


「どこで今日の秘密の会合を知ったのかは知らないが、見つかった以上、逃げ場はないぞ!」


 アルヴァは騎士の態度にため息をつきながらイーステリアから更に距離をあけた。


「動くな!」


「はいはい」


 アルヴァは面倒くさそうに両手をあげる。その態度が気に食わなかったのか、騎士の怒気は高まっていく。


「ふざけるな!」


 騎士は剣を振り上げ、アルヴァとの距離を一気に詰める。


「きゃあ!」


 イーステリアは騎士に驚き、慌てたのか足がもつれて倒れてしまう。そこからの出来事は目撃したマリナさえも信じられなかった。


「なっ!」


 振り下ろされた騎士の剣はアルヴァの右手のひらによって受け止められた。そして次の瞬間にはアルヴァの突き出された左手に魔法を発現させ、騎士を吹き飛ばす。


「不審者の自覚はあるけど、守るべき者を蔑ろにするのは騎士としてどうかと思うよ」


 アルヴァは蔑むような視線を騎士に向けて言うが、騎士は気絶しているか、ピクリとも動かない。


「何事だ!」


 騒ぎを聞きつけたのか、他の騎士が駆けつけてきて、部屋の中に入る。そしてアルヴァを、正確にはアルヴァの頭の上のラビィを認めたがしかし、今度は素早く観察するように視線を巡らせていた。


「これはなんの騒ぎでしょう?」


 緊急性はないと判断したのか、騎士は落ち着いた様子でイーステリアに声をかけた。イーステリアは安心したのか、あったことをマリナと共にその騎士に伝えていく。


「なるほど」


 騎士は二人の会話を聞き終えると、納得したように頷いた。騎士としては頭の上のホーンラビットよりも何故イーステリアが敬称をつけて呼ぶのかが気になったが、その疑問が解消されることはなかった。


「くっ…… 何が……」


 アルヴァに吹き飛ばされた騎士はそこで意識を取り戻したのか、のろのろと立ち上がった。しかしアルヴァを見てすぐに思い出したのか、剣を抜こうと腰に手を伸ばす。しかしそこに剣はなく、床に転がっていることに気づくと、すぐに拾い上げようと体を動かした。


「動くな!」


 しかし、その動きは後から駆けつけてきた騎士によって遮られる。


「貴様、どういうつもりだ!」


「え……?」


 自身が咎められるとは露程も考えていなかったのか、呆けた表情のまま固まった。


「まだ理解できないのか! お前はイーステリア様の客人に刃を向けたんだぞ!」


 しかし、その言葉で事態を理解したのか、急速に顔色を失っていく。


「そ……そんな! 俺はただ姫様を守ろうと!」


「守るだと?」


 その言葉を聞いた瞬間、顔を怒りに浮かべた。


「ふざけるな! イーステリア様の静止も聞かず、剣を振り上げ、あまつさえイーステリア様に怪我を負わすなど言語道断だ!」


 身に覚えのないことなのか、騎士は困惑した表情を浮かべる。イーステリアは確かに倒れたが、切り傷はない。ただあざができるかもしれない、それぐらいだ。しかし、騎士が姫に傷を負わせた。その事実が問題なのだ。


「待ってください! 俺はただ魔物を連れた不審者を!」


「その方が客人なのだ! イーステリア様の言葉を遮らなければお前にも理解できたはずだ!」


 倒れていた騎士は鋭くアルヴァを睨みつける。しかしすぐに目の前の騎士に視線を向けた。


「しかし、この王城へ魔物を入れることはいかに客人とはいえ問題のはずです!」


 その答えを聞き、駆けつけてきた騎士は露骨にため息をついた。


「ではお前は、そこの御令嬢が魔物を連れていても、斬りつけたということだな?」


「そ……それは……」


 今度こそ言葉を失った騎士は無言で下を向いて何も言わなくなった。


「何かあったのかい?」


 そこにゆっくりと歩いてくる男性がいた。後ろにはノーレスが控えている。その姿を認めた駆けつけた騎士は跪いた。


「はっ! それが―――」


 駆けつけてきた騎士はすぐに詳細を語る。倒れていた騎士は何かを言いたそうにしていたが、勝手な発言は不敬になるため、何も言うことが出来なかった。


「なるほど。それで、対処は任せていいのかな?」


「はっ! 問題ありません」


「では、出ていってくれるか? 今から大切な話があるから」


「はっ! 失礼いたします」


 駆けつけてきた騎士はほぼ引きずるように倒れていた騎士を連れて部屋からいなくなった。


「騒がせて申し訳ない」


「大丈夫です」


「そちらのお嬢様も問題ないか?」


「は……はい!」


「ならよかった。とりあえずイーステリアはここに。そしてアルヴァとお嬢様はそちらに座ってくれ」


 男性はそう指示を出し、自身も椅子に座った。


「じゃあ改めてまして。僕はラディリアス・アノウン。イーステリアの兄であり、この国の王太子だ」


 男性―――ラディリアスはそう言って微笑んだ。

時間がかなりあき、申し訳ありません

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